【基礎】造粒・打錠・コーティング製造技術とスケールアップ/打錠障害・品質異変の防止・対策
【会場受講】 2024/12/5(木) 10:30~16:30 , 【Live配信受講】 2024/12/5(木) 10:30~16:30 , 【アーカイブ配信受講】 2024/12/19(木) まで受付(配信期間:12/19~1/3)
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医薬品を製造するには、原薬や添加物等が用いられますが、そのまま打錠等の製剤化が行われることはほとんどなく、製造工程をスムーズに進めるためにも、また、薬の吸収向上のためにも、通常は、粒子径を細かくします。
今回は、医薬品製剤化技術のうち、「粉砕」の工程についてまとめてみました。
目次
粉砕とは、圧縮、衝撃、せん断、摩擦等の機械的な力を主に複合的に加えて、粒子を破砕することです。
原薬や添加物等を粉砕機を用いて、より小さい粒子径の粒子を得ることを目的とする作業です。
粉砕は、主に下記のような目的のために行われる工程です。
粉砕は上記のような目的のために行われますが、粉砕により下記のようなメリットがあります。
すなわち、医薬品は粒子径が小さくなり、比表面積が増大することにより、
ただし、下記のようなデメリットもあります。
製薬・製剤に求められる粉砕物の粒径は、概ね下記の範囲といえます。
一般的には、粒子径が小さくなれば、上記の粉砕のメリットがより向上することになります。
「粒度分布」とは、ある粒子径の範囲に存在する粒子量の割合を示したものをいいます。
粒度分布の表し方としては、粉体の粒子径の範囲を分割し、それぞれの粒子径区間に存在する粒子量を%で表示する「頻度分布」とm特定の粒子径以下(以上)の粒子量が全体の何%であるかを表わした「積算分布」等があります。粒子量の基準(次元)としては、体積、面積等がありますが、一般的には、体積基準を用いることが多いようです。
粒径や粒度分布は、粉体の流動性・圧縮性等々に大きく影響しますので、個々の医薬品に最適な粉砕に用いる機械や条件が選択されます。
粉砕は、粉体に機械的な力を加えて粒子径を小さくする操作といえます。
機械的な力には、衝撃、衝突、圧縮、切断、せん断、摩擦等があり、それぞれが単独または複合的に働いて粉体を粉砕します。
ハンマーミル、アトマイザー、ボールミル、スタンプミル、ジェット粉砕機など
ウィレー粉砕機、コーヒーミルなど
回転型ボールミル、振動式ボールミル、振動ミル、コロイドミルなど
一般的に、硬質の粉砕物に対しては、衝撃・衝突・圧縮タイプが向いているとされ、軟質、繊維質、弱熱質のものに対しては、切断・せん断・摩擦タイプが用いられる傾向があるようです。
粉砕には、乾燥状態で行う方法と、水などの液体を用いる方法があります。
粉体を空気中や非活性ガス中で粉砕する方式です。
破砕から微粒子化まで幅広い範囲で処理ができますが、3μm以下になりにくいことや凝集、回収の難しさ等の課題があります。
水等の液体中で粉体を粉砕する方式です。
湿式粉砕は、乾式粉砕では到達が難しいサブミクロンまでの粉砕(超微粉砕)が可能ですが、汚染が乾式よりも多い、乾式に比べコストが高いなどのデメリットもあります。
粉砕に用いられる機械(粉砕機)としては、下記のようなものが用いられます。
ハンマーを高速で回転させて、医薬品原料や添加物等の粉体を衝撃により粉砕します。
数μm~数百μmの粒子(微粉砕)にすることができます。
単回式や連続式があり、また、生薬などには、ハンマーをナイフに換えたものやスタンプを落下させる形式の粉砕機も用いられます。
円筒状のミルが回転することにより、内部のボールが粉体を衝撃・摩擦により粉砕します。
ボールミルも微粉砕に適しており、実験室レベルのポットミルから巨大ミルまで多くの種類があります。
また、粉砕容器を密閉したり、必要に応じて真空にしたり、不活性ガスで置換すること等ができるます。
2種以上の粉体の粉砕と混合を同時に行なうことができる特長があります。
圧縮空気などを噴出させ、ジェット噴流で粉体を粉砕します。
粉体は粉体同士または材壁との衝突によって粉砕され、微粉砕よりさらに細かい粒径(超微粉砕)にまでになります。
また、粉砕時の温度上昇がなく(ジュール・トムソン効果)、熱に不安定な医薬品(例えば、抗生物質や酵素等)にも使用できるというメリットもあります。
湿式粉砕の一種で、固体粒子を液体に懸濁させて、高速回転するローターと円盤の間に流し込み、液体に剪断力を加えて固体を微粉化します。
1μm以下のコロイドに近いものが得られるとされています。
粉砕機および粉体の物性によっては、 1種類の粉砕様式で粉砕しうるとは限らず、2種類以上の様式を組み合わせて粉砕することがあります。
J-Platpatを用いての特許を調査してみました。(調査日:2021.10.27)
※A61k9/00:特別な物理的形態によって特徴づけられた医薬品の製剤
粉砕のFタームとしては、4C076GG03[医薬品製剤 ・固形製剤の製法 ・・粉末化法 ・・・粉砕]があります。
その上位概念としては、
これらの調査結果の中には、「粉砕物の製造方法及び錠剤の製造方法」「ジェット粉砕法」「微粉砕化有機化合物粒子の製造方法」「非球状の粉砕媒体を使用する媒体ミル粉砕」など、多数の特許文献が検出されました。
JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」で簡単な文献検索を行ってみました。(調査日:2021.10.27)
「医薬品と粉砕技術」「流動層ジェットミルを用いた医薬品原薬の回分粉砕機構に関する考察」「調剤における固体医薬品の湿式(仲介)粉砕」「医薬品と結晶セルロース混合粉砕物の物理化学的安定性」などの文献が見られました。
ということで、今回は医薬品製剤技術のうち、粉砕工程の基礎知識をご紹介しました。
特許公報や文献の内容についてご興味がある方は、ぜひ実際に検索・確認してみてください。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)