【技術者のための法律講座】製造物責任法(PL法)の重要ポイント
目次
製造物責任法(PL法)とは
製造業技術者である皆さんは、製造物責任法(以下、PL法)という法律が存在することを多分どこかで一度は耳にされて、概要はご存知ではないでしょうか?
おさらいになるかもしれませんが、この法律の目的・趣旨を見てみましょう。
PL法は、欠陥製品による被害から消費者を保護する目的で定められた法律で、欠陥ある製造物を製造し、流通させた製造業者等に無過失責任を負わせる「製造物責任」を規定しています。
すなわち、製造業者の過失の有無に関わらず、製品の欠陥さえ証明できれば、製造業者に賠償責任を負わせることができるという制度です。アメリカでは1960年代に法制化されていましたが、日本では1995年7月1日に施行されました。
PL法制定以前、欠陥製品によって消費者が被害を被った際に損害賠償責任を問えなかったのでしょうか?
いいえ、そのようなことはありません。 従来から民法709条以下に定められた不法行為責任により責任を追及することはできました。これを「過失責任の原則」といいます。
民法の不法行為法(民法709条)における一般原則によれば、要件の一つとして加害者に故意・過失があったことを被害者側が証明しなければ、過失責任は問えません。
しかし、被害者である消費者は、メーカーの工場内を覗くわけにもゆかず、専門技術的なことについて素人であるため、一般に加害者への責任追及は、なかなか困難と言わざるを得ません。
そこで、このような困難さを避けるためにメーカーに無過失責任を負わせるために制定されたのがPL法です。
PL法と民法の関係
PL法は製造物の欠陥に起因する損害賠償請求に関して、民法の不法行為責任の要件を一部修正した民法の特別法(民法の範疇に属し、対象が限定されるものに適用される法律)に位置付けられます。
つまり、民法の不法行為責任の責任要件を「過失」から「欠陥」に一部修正したものです。しかし、以下に示す損害賠償の他の要件は変更していません。
- 因果関係:民法416条の相当因果関係の考えが類推適用されます。
- 過失相殺:被害者に過失があれば過失相殺されることがあります。
- 共同不法行為責任:複数の責任主体が存在する場合には、相互に連帯債務を負います。
- 慰謝料:精神的損害に対しては慰謝料が発生します。
- 金銭賠償:損害賠償の方法は金銭賠償が原則。
金銭賠償:損害賠償の方法は金銭賠償が原則
PL法が存在することで、消費者が賠償を受けられ易くなるだけではなく、以下の効果があります。
- 製造者は賠償責任を負わないように、常に欠陥のない製品を製造・販売するよう努める。
- 製造者は消費者に対し、製品の安全性に関する情報を開示するようになるため、消費者による事故が減少する。
PL法の構成
PL法はわずか6条からなる法律で、内容も複雑なものではありませんので、ぜひ一読することをお勧めします。
ここでは、各条文の構成のみご紹介します。
(目的)第一条
(定義)第二条
(製造物責任)第三条
(免責事由)第四条
(期間の制限)第五条
(民法の適用)第六条
※PL法の条文についてはこちらからご確認いただけます。(外部サイトへ)
PL法の内容
PL法第3条には
「製造業者等は、製造物に欠陥がありその欠陥が原因で消費者の生命、身体または財産に損害を与えた場合には、消費者に対して損害を賠償する責任がある。」ことが規定されています。
以下、この「製造物責任」の適用要件について、「賠償責任者」(誰が)、「製造物の種類」(何を)、「欠陥の判断基準」(どのような場合に) について説明します。
賠償責任者
PL法2条3項には「製造業者等」について、その類型が規定されています。
①製造業者および加工業者
完成品の欠陥が、部品や原材料の欠陥によるものである場合、部品等の製造業者および完成品の製造業者のいずれも賠償責任を負う点に注意が必要です。
②輸入業者
消費者が直接海外の製造業者に損害賠償を請求することは困難なため、輸入業者が賠償責任を負います。
③製造物に製造業者として氏名や商標等の表示をした者や製造業者であると誤認させる表示をした者
実際に製造に関わっていなくても、製品に表示されている名称と製品は何らかの関係があると消費者は考えます。
④実質的に製造業者と認められる氏名等を表示した者
例えば、日本のある医薬品メーカーが海外の医薬品メーカーの代理業者となり、「発売元」として名称を表示している場合がこれに該当します。
製造物の種類
PL法2条1項には、「製造物とは、製造または加工された動産である。」ことが規定されています。
そのため、土地等の不動産や未加工の農林畜水産物はPL法の「製造物」には該当しません。
以下具体例をいくつか見てみましょう。
不動産であっても「製造物」に該当する場合
建物に設置されたエレベーター、浄化槽、門扉、アルミサッシ等や、公園に設置された固定式遊具は製造物に該当します。
廃棄物
産業廃棄物は製造物には該当せず、一般廃棄物は製造物に該当します。
加工農林畜水産物
自然産物である未加工の農林畜水産物は製造物に該当しません。加工をした農林畜水産物は製造物に該当します。
無体物
電気やコンピュータープログラムは製造物に該当しませんが、コンピュータープログラムが組み込まれた装置は製造物に該当します。
欠陥の判断基準
PL法2条2項では
「欠陥とは、製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」と規定されています。
欠陥は
- 製造物の特性
- 通常予見される使用形態
- 製造物が引き渡された時期
- その他の事情
を考慮して判断されます。
時効
被害者が損害および賠償責任者を知ったときから、責任の追及を行わない場合は、製造物責任は時効によって消滅します。製造物を引き渡したときから10年を経過したときも同様です
企業がすべきPL対策の基本
企業は自社の製品に対する責任を全うし、消費者が安全に製品を使用するためにはどうすればよいのでしょうか?
少なくとも以下のことを心掛ける必要があります。
- 製造者や輸入事業者はISOや国の基準に従い製造や輸入を行う。また販売業者は安全性を厳格に検査検証して市場に供給する。
- 消費者に正しい商品の情報を伝える。
- 商品が正しく消費し終わるまで、責任を全うする。
- 万一、事故が起こった際、被害者救済と事故情報の開示を行なう。
以上、PL法について簡単にご紹介しましたが、詳しく知りたい方は消費者庁の以下のサイトをご覧ください。
※製造物責任(PL)法の逐条解説 | 消費者庁
また、製品の種類別に以下のようなPLセンターが設置されていますので、皆さんの目的に応じてお問い合わせください。
- 家電製品PLセンター
- 自動車製造物責任相談センター
- ガス石油機器PLセンター
- 医薬品PLセンター
- 化学製品PL相談センター
- 住宅部品PL室
- 消費生活用製品PLセンター
- 玩具PLセンター
(日本アイアール株式会社 A・A)