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2024/12/3(火)9:30~16:30
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筋の良いコンセプトを創り出す(発想する)には、創造力を発揮する必要があります。
では、「創造力」とはどんなものかを、考えてみましょう。
まず「研究」というものは、概ね以下のように考えられます。
(1) 初期情報(先行研究・事例・製品など)に、実験・観察・思考を繰り返しながら
(2) 新たな情報を付加したり、足りない情報を補っていく
というプロセスのこと。
また、オリジナリティーの高い創造的研究や新製品の開発の鍵を握るのは(3)発想の転換です。
まとめると、研究活動における「創造力」とは、
(1)初期情報 をもとに→(2)新たな情報を→(3)発想の転換をして創り出す力
といえるかもしれません。
筋のよいコンセプトを生み出す鍵は、「初期情報」と「発想の転換」にあります。
「発想の転換」の中身は、情報の「構造化・再構造化」のことです。
「初期情報」とは、当然ながら自身が既に持っている情報を指すわけではありません。
この世に既に存在するすべての情報を指します。
ここで区別しておきたいのは、「課題(テーマ)を解決する力」と「課題を生み出す力」に占める情報の役割です。
東京大学大学院総合文科研究科・植田先生のグループは、「発想の転換」を支えるメカニズムとして以下の要素を挙げており、考え方の整理にあたって参考とさせて頂きました。
このコラムでは、(C)の確率的学習を「予期せぬ発見への注目」として考えてみたいと思います。
日常、我々は情報を入手します。そして、それが頭の中だけで無意識のうちに行われるか、あるいは紙などの補助的手段を併用して行われます(意識して行われるかは別として)。
入手された情報は、何らかの分類と整理が必ず行われているはずなのです。
分類や整理の方法は別に述べますが、ここでは情報の分類・整理をどういう「見方」で行うかが、(A)の「視点」であると考えてよいでしょう。「視点」とは、我々が言う「物の見方」です。
つまり「視点の転換」とは、「物の見方を変える」ということです。
これは、一旦分類・整理されている情報を、別の分類で整理し直すことに相当するものと考えられます。
「視点」が「物の見かた」であれば、視点の転換」とは「物の見かたを変える」ということです。
これは、一旦分類・整理されている情報を、別の分類で整理しなおすことに相当するものと考えられます。
(A)視点の転換を「構造化・再構造化」とを対比してみたものが表1です。
視点の転換 | (表の)構造化・最構造化 |
複数の異なった視点で見る | 複数の異なった分類欄を設ける |
新しい視点で見る 古い視点を捨てる(単純化) |
新しい分類欄を設ける 古い分類欄を削除する |
角度を変えて見る | 表の構造を変える |
【表1 視点の転換と構造化・最構造化】
視点を転換するということは、幾つかの異なった視点でものを視ることと考えて差支えないでしょう。
そして「視点の転換」を、表で分類(構造化・再構造化)する側から見ると、新しい分類欄を設けることは、新しい視点で視ることです。また、表の構造を変えることは、角度を変えて見るという「視点の転換」です。
つまり、情報を表で分類することによって、「視点の転換」を行うことが出来ることがわかります。
勿論、優れた視点の転換が行われているかどうかは、出来上がった表の構造と、そこに設けられている分類欄によって決まります。
では、残る(B)「類推」と(C)「予期せぬ発見への注目」は、どうでしょうか?
情報が表に構造化されていると、情報を構成している要素が欠けていれば(分類欄が空欄)それが欠けていることに容易に気がつきます。そして、その空欄を、その欄が空欄でない情報から(B)類推 して(仮に)埋めることができます。
(C)予期せぬ発見への注目の 「予期せぬ」 とは、これまでの視点(分類)では分類できないことを意味するといえるでしょう。「発見」 とは、新しい重要な情報です。情報を表で分類していれば、これらを見落とすことも防げるはずです。
「類推」とは、(表の)空欄を他の情報から補って、仮に満たすこと
「予期せぬ発見への注目」とは、
「発想の転換」とは、情報を独自の視点で、(表で)分類・再分類、構造化、最構造化すること
目に見える具体的な表でなくても、頭の中に無限の表があると考えればよいのです。
「創造活動」とは、その表を使って、入手できた情報をもとに情報を「構造化・再構造化」しつつコンセプトを生み出す活動であるとも考えられます。
そして、その時点でのその人がコンセプトを生み出す力、すなわちその人のその時点での創造力を決定付けるのは、その人がその時点でもつ情報とその蓄積構造に他なりません。
(日本アイアール 知的財産活用研究所 N・Y)
※この連載コラムは、1997年4月に実施した、久里谷美雄先生(故人)による若手技術者向け研修のテキストを基に作成しています。
※参考文献: