3分でわかる技術の超キホン ワイヤレス給電の種類/方式と仕組みを解説

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ワイヤレス給電の基礎知識を解説

1.ワイヤレス給電とは?

ワイヤレス給電は、最近、私たちの身近になってきました。

現在、我々が多く使用しているのは、電源ケーブルをコンセントに繋いで電力を送る有線給電方式です。
この方式はケーブルの引き回し、電源プラグの抜き差しが必要です。また、ケーブルの長さによって設置場所が制限されたり、ごちゃごちゃとした配線で美観を損ねたりするというデメリットもあります。

これらの課題を解決する新しい給電方式として、最近注目を集めているのが「ワイヤレス給電」です。
「ワイヤレス給電」とは、電源ケーブルの接続や金属電極の接触を行わずに電力を伝送する技術のことです。例えば、スマートフォンの充電器等に使用されています。

今回は、ワイヤレス給電の基礎知識についてみていきましょう。

 

2.ワイヤレス給電の特長(メリット)

ワイヤレス給電の特長としては、以下のものが挙げられます。

 

(1)非金属であれば通過して給電可能

ワイヤレス給電には送電部と受電部があり、非金属(水、油、ガラス、樹脂、木材など)であれば、間に挟むことができます。
そのため、壁越しに給電を行う、水中へガラス越しに給電を行う、といったことが実現できます。
例えば、放射性物質や有毒ガスがあり人が立ち入れないようなエリアにも給電する、といったことも実現できるのです。

 

(2)金属接点が不要

ワイヤレス給電には金属的な接点がありません。
そのため水が掛かっても、ショートすることも製品を壊してしまうこともありません。
身近なところでは、洗面所で使われる電動歯ブラシや電動シェーバーでは古くからワイヤレス給電技術が採用されています。

コネクタのような物理的な接点は、繰り返し使用する等、着脱回数が多いほど劣化し、破損しやすく、金属粉が発生することもあります。金属接点のないワイヤレス給電は、金属粉の発生を抑えることができるため、設備の品質向上や安全対策としても採用できます。

ワイヤレス給電であれば、接点が劣化することもないので半永久的に使用することが可能です。そのため、工場などで稼働するロボットなどに採用することで破損によるメンテナンスコストや作業ロスを改善できます。

 

(3)設置が簡単

給電エリア内であれば、受電部が回転や移動していても、ワイヤレス給電を継続させる事が可能です。
電源ケーブルが不要になるので、機器の設置も簡単になります。ケーブルに引っ掛けて機器が損傷することもなくなり、安全性や耐環境性などで優れています。

 

3.ワイヤレス給電の種類・方式とその仕組み

ワイヤレス給電の種類としては、主に以下のものがあります。

 

(1)電磁誘導方式

図1は、電磁誘導方式を説明する図です。
2つのコイルを接近させて一方のコイルに電流を流すと、コイルを貫くように発生する磁束を媒介にして、もう一方のコイルにも起電力が生まれるという現象(電磁誘導)を活用し、ケーブルにつながなくても給電できる仕組みとなっています。

電磁誘導方式
【図1 電磁誘導方式】

数cm程度の近距離での電力伝送に適しているので、金属電極の接触がなくても、決まった距離では電気を送ることが可能です。
回路構成が簡単で、小型かつ低コストで実現できます。また高効率であるのも特長です。
その一方で、伝送距離が短く、位置ずれの影響をうけやすいのがデメリットです。
 

(2)磁界共鳴方式

送電側と受電側の共振器を磁界共鳴させて、電力を伝送する方式です。

図2は、磁界共鳴方式を説明する図です。

磁界共鳴方式
【図2 磁界共鳴方式】

磁界共鳴方式のワイヤレス給電は、送電側と受電側にコンデンサを挿入してLC共振回路を形成し、送電側と受電側の共振周波数を一致させて電力伝送する方式です。

コイルの対向距離を大きくとることができ、また、コイルどうしの中心が多少位置ずれしても電力伝送できるのがメリットです。このため、複数台のモバイル機器を同時充電する充電パッドなども可能にします。

近年、距離の長い電送が必要な際に用いられており、EV(電気自動車)の充電用途としても開発が進められています。

 

(3)電界結合方式

送電側と受電側にそれぞれ電極を対面させ、キャパシタを形成、高い周波数で電気を流すと相手側電極にも電気が流れる現象(高調波電流)で伝送する方式です。

図3は、電界結合方式を説明する図です。送電側と受電側の間にコンデンサを形成しています。

電界結合方式
【図3 電界結合方式】

電磁誘導方式と同程度の短い送電距離ですが、位置ずれの影響をうけにくく、給電部の発熱が少ないことが特長です。
また、電磁誘導方式のような大きな磁束を作る必要はないので、重い磁性材料を使う必要がなく、比較的軽量でワイヤレス給電が可能になると期待されています。

 

(4)電波受信方式

送電側で電流を電磁波に変換受電側でアンテナから電磁波を受信し、整流回路で直流電流に変換する、電磁界を利用して電力を送電する方式です。

図4は、電波受信方式を説明する図です。
電波をアンテナで捉えて共振回路で受信し、高周波信号を整流回路で直流にして負荷側へ出力します。

電波受信方式
【図4 電波受信方式】

電波受信方式は、伝送距離は数メートルと長いのに対し、効率が悪いのがデメリットです。
 

以上、今回はワイヤレス給電の方式と仕組み(給電の原理)について簡単にご紹介しました。
現在、最も使用されているのは、電動歯ブラシやスマートフォンの充電器として使用されている電磁誘導方式です。機能も、正確な位置決めが不要なものや複数の機器を充電できるもの等、改善されてきています。
ワイヤレス給電は、様々な方式が研究されており、今後も増えていくでしょう。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)

 

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