- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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今回のコラムでは「リフローはんだの欠陥(はんだ付け不良)」について、種類別に原因と対策を説明します。
はんだ付けは、母材よりも低い融点を持った金属の溶加材(はんだ)を溶融状態(液相)にさせ、母材を溶かさない状態(固相)で、母材とはんだの結合部に“合金層(金属間化合物)”を形成し接合する方法で、合金層を形成する技術です。
また、はんだ付けは、毛細管現象で部材間に浸入したり、表面を広がる濡れを応用した結合技術でもあります。
母材の表面には、はんだ付けの濡れ性を阻害する酸化皮膜などが存在するので、予めフラックスでこれらを除去する必要があります。
車載電子機器は3万点以上の電子部品からなり、熱や振動、外気の湿気など、さまざまな悪条件で使用されます。
はんだ付け不良が一か所でも発生すれば、重大事故につながるため、はんだ付け部の品質確保は重要なポイントになります。
今回のコラムでは、車載用、携帯電話などによく使用されている「リフローはんだ」(表面実装)[※図2、3]についての欠陥と検査法について説明します。
はんだ付けの欠陥は表面欠陥、内部欠陥、機能欠陥に大別され、それぞれの欠陥事例と検査方法について説明します。
はんだ付けの欠陥は多くの種類がありますが、今回は図1に示す欠陥に絞って解説します。
表面実装は高密度・ファインピッチ化が進み、表面状態の不具合がその接続性に大きく影響してしまいます。
また検査基準を会社として設定し、良否判定をする必要があります。
図4に示す良否判定基準は、社団法人日本溶接協会(マイクロソルダリング要員評価委員会)の品質判定基準です。(※1)
印刷工程で、はんだ塗布量が過剰になると、リフローはんだ付け時のはんだ量が過多となり、はんだの収縮応力によって機械的・熱的ストレスを受けやすく破損、クラック(割れ)の原因となります。
フィレット形状(はんだ付け後の形状)の基準は図4の通りです。
はんだ塗布量を調整します。
印刷工程で、はんだ塗布厚が過少になると、端子、チップ部品の固着力が不足し、接続不良及び脱落の原因となり、回路の信頼性に影響を及ぼす場合もあります。(フィレット形状の基準は図4)
はんだ塗布量を調整します。
マウント工程で、はんだ付けされる実装部品のマウント位置がズレるのが主原因です。
一方、多少の位置ズレがあっても、はんだが溶融して固化するまでの間に、自然に位置決めされる動きを「セルフアライメント効果」と呼んでいます。これは、はんだの表面張力によるものです。
しかし、大幅な部品マウントの位置ズレは、セルフアライメント効果で修正不可能になり、位置ズレになります。
マウント位置を適切に修正します。
原因①の対策は印刷位置の修正、原因②は部品マウント時の押し付け力減少が必要です。
原因③の対策は「はんだペースト量」の調整です。
内部欠陥は、目視検査などで検出できない内部の欠陥です。
しかし、重大な不具合につながる可能性もあり注意が必要です。(※2、※3)
ボイドとは、はんだ内部に気泡ができてしまい、はんだ接合強度の低下となってしまうものです。
このボイドは、自動車などの熱、振動サイクル環境下で内部クラック(割れ)に成長し、導通不良につながるケースがあります。
原因①の対策として、合金層の界面にZnの拡散反応により、カーケンダルボイドの形成が抑制したという研究報告があります。
原因②の対策については、リフロー炉の昇温速度のコントロールなどがあります。
はんだ付けの欠陥が機能欠陥につながるものです。
おもな不良は、ブリッジ(ショート)、チップ立ち(オープン)などです。
QFPを中心に、よく見られる欠陥で、隣の端子に溶解した“はんだ”が接触して、本来は電気的に接続してはいけない部分が、はんだ付けにより接続してしまう欠陥です。(図5参照)
原因①の対策は、リフロー炉での温度調整見直しです。
原因②の対策は、部品のマウント位置修正、クリームはんだ印刷位置の修正です。
水平に実装されるべき部品が垂直、または傾斜してはんだ付けされ、一方の電極だけで基板(ランド)とつながって立ち上がってしまう欠陥で、チップ部品に見られる欠陥です。
原因①の対策は、以下が考えられます。
また、原因②の対策は、リフロー炉で窒素ガスを流入させ、酸素濃度を下げることより、酸化皮膜の形成を防止する方法があります。
原因①の対策は、QFPの端子に反りがあるものをマウントする前に選別し、正常品のみマウントする必要があります。
原因②の対策は、リフロー炉で窒素ガスを流入させ、酸素濃度を下げることより、酸化皮膜の形成を防止する方法があります。
基本的な表面欠陥の検査ですが、最近、表面実装は高密度・ファインピッチ化が進み、目視では検査漏れが発生する可能性もあります。
部品欠落やフィレットのサイズ、形状や部品の歪みを測定し、品質基準寸法に基づき自動判定するものです。
最新の実装基板の外観検査装置では、「3次元(3D)計測」も実現されています。
内部欠陥の確認のため、定期的にはんだ付け部分を切断し、断面観察する必要があります。
非破壊検査で内部欠陥を観察する方法もあります。
非破壊検査のうち「放射線透過試験」は、欠陥の部位に起因して起こる放射線の透過量の差異を、X線検出フィルムに感光させることによって検査する方法です。
また、「超音波探傷試験」は、パルス状の超音波を試験体に送信し、欠陥で反射する波を受信して、この振幅値を評価する方法です。
機能欠陥は重大不具合になので、生産ラインでは、以下の試験を全数検査して品質保証する必要があります。
基板が機能的に設計通り動作するかの確認のため、基板を製品に組み込んだような模擬の負荷・模擬入出力を与え、動作の確認を行います。性能チェッカーという検査機器を使います。
基板の上の配線導体パターンが設計と同じように製作されているかを試験するものです。
この方法は、導通チェッカーという検査機器を使います。
ボイドなどの微細な内部欠陥が、自動車用電子部品で発生すると、走行距離により熱、振動の影響で大きなクラック(割れ)に成長する可能性があります。
定期的に生産サンプルを抜き取り、温度サイクル試験を使用して以下の手順で品質確認を実施します。
以上により、初期状態と終了状態での比較により市場での品質が想定できます。
更に、温度サイクルのみでなく、「温度」「湿度」「振動」の3条件でのサイクル試験ができる複合環境試験を使用した品質確認が、市場を想定した理想的な試験方法です。
(アイアール技術者教育研究所 T・I)
<参考文献>