ボタン・スイッチなど操作部/可動部の防水設計を徹底解説!

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キースイッチ構造 押す/動く部位の防水設計

本コラムの要旨

  • 操作部(押す・滑る・回す部位)は「動く」がゆえに防水設計の最大の弱点であり、静的シール(ガスケット)と動的シール(パッキン)を区別し、動くところは「シールしすぎない」設計が正解です。
  • 根本解を求めるなら、可動部そのものをなくす静電容量式タッチへの置換が最も強力ですが、水滴誤動作・手袋操作不可・触覚喪失という副作用があり、用途で選ぶべきです。
  • 設計判断はDX推進とフロントローディングの思想で上流に前倒しし、材料劣化(圧縮永久ひずみ・オゾン・加水分解)と繰り返し動作の疲労を寿命設計に織り込むことが、市場での浸水クレームを未然に防ぐ鍵です。

1.はじめに:なぜ操作部が防水の「弱点」になるのか?

防水設計の出発点は、筐体の合わせ面やカバーといった「動かない部分」をパッキンやシール材でどう塞ぐかにあります。動かない箇所は、一度きちんと塞げば性能が安定します。本コラムのテーマは、その逆の「動く部分」です。

人が指で押すボタン、スライドさせるスイッチ、回すノブといった「操作部」は、使うたびに部品が動き、変形し、擦れます。ここが防水設計の最大の弱点になります。
なぜなら、防水(水の侵入を防ぐこと)とは本来「隙間をなくすこと」であるのに対し、操作とは「部品を動かすこと」、つまり「隙間や動きを許すこと」だからです。この二つは根本的に相反します。実際、防水スマートフォンの浸水経路をたどると、多くが電源ボタン・音量ボタンの隙間、充電ポート、SIMトレイのキャップといった「動く/開く」箇所に行きつきます。

本コラムは、営業・調達・企画・品質保証といった非エンジニアの方にも、操作部の防水がなぜ難しく、どこにコストと注意を払うべきかを理解いただくことを目的としています。
近年はDX推進の流れの中で、CAE(コンピュータによる設計シミュレーション)やデジタルツインを使い、設計の初期段階で不具合を摘み取るフロントローディング」(開発の前工程に負荷と検討を前倒しする考え方)が重視されています。操作部の防水は、まさにこのフロントローディングが効く領域です。後工程で「水が入った」と判明してからの手戻りは、図面修正・部品再製作・組立見直しと膨大なコストを生むためです。

 

静的シールと動的シールの対比 ― 「防水」と「操作」は相反する
【図1 静的シールと動的シールの対比 ― 「防水」と「操作」は相反する】

 

2.操作部の分類(タクソノミー)と防水アプローチの全体像

操作部を防水の観点から分類すると、動きの種類によって難易度と対策が変わります(表1)。

 

【表1 操作部の分類と防水アプローチの全体像】

分類 動きの種類 代表例 防水の考え方 相対難易度
プッシュボタン 押す(微小往復) ラバードーム、メタルドーム、防水キャップ付きタクトスイッチ ゴムの伸縮変形で「膜」を保つ(動的だが摺動しない)
スライドスイッチ 滑る(直線摺動) スライドスイッチ、スライドボリューム 摺動シールが必要/難しい
ロータリー 回す(回転摺動) ボリューム、ロータリーエンコーダ、回転ノブ 回転軸シール(Oリング・リップシール)
タッチセンサ 動かない(可動部レス) 静電容量式タッチ 表面を平滑な一枚板にでき、防水が根本的に容易 低※
開閉部 開け閉め(繰り返し着脱) 防水コネクタキャップ、USB/充電ポート蓋 パッキン圧縮+繰り返し耐久 中〜高

※ タッチセンサは防水面の難易度は低いが、操作性の別課題あり(第6章)。

パッキンとガスケット ― シール技術の基本区分

ここで最重要の概念が、静的シールと動的シールの違いです。
シール(密封部品)という総称の下に、使う場所によって明確に区別された二つの呼び名があります。

  • ガスケット(gasket)=静的シール:
    静止部分用の密封部品。動かない面と面の間(配管のフランジ面、筐体の合わせ面、カバーの固定部など)を塞ぎます。一度適正に圧縮すれば密封状態が安定し、擦れないため摩耗しません。
  • パッキン(packing)=動的シール:
    運動部分用の密封部品。往復・回転・摺動(しゅうどう=擦れながら動くこと)など、動く部品との間を塞ぎます。使うたびに擦れ・変形が生じるため、摩耗と寿命を前提に設計します。

この区分はJIS B 0116:2020(パッキン及びガスケット用語)に規定されており、パッキンは「回転運動、往復運動などの運動部に用いるシールの総称。運動用シール又は動的シールともいう」、ガスケットは「フランジ継手などの静止部分(ドアのような開閉部を含む。)に用いるシールの総称。固定用シール又は静的シールともいう」と定義されています。部品カタログや図面でも、「〜ガスケット」とあれば固定用、「〜パッキン」とあれば運動用、と名前が用途を表すのが原則です。

紛らわしいのがOリングです。Oリングは断面形状(O形)に由来する名前であり、装着する場所によってガスケット(固定用)にもパッキン(運動用)にもなります。ただし運動用として使うと擦れて摩耗するため、寿命の考え方が根本的に変わります(第5章で詳述)。本コラムで扱う操作部の防水は、まさに「パッキンの世界」の話です。

 

操作部タクソノミー・マップ ― 動きの種類と防水難易度
【図2 操作部タクソノミー・マップ ― 動きの種類と防水難易度】

 

3.プッシュボタン構造 ―「押す」動作の防水

 

(1)ラバードーム:伸縮変形でシールする賢い構造

押しボタンの防水で最も基本的かつ優れているのが、シリコーンゴムのラバードーム(ドーム状のゴム部品)です。ラバードームは、キートップとゴムが一体成形され、ドーム部分が伸縮変形することで指の力を接点に伝えます。重要なのは、ゴムの膜そのものが連続して途切れないため、水の侵入経路ができない点です。これは、擦れる(摺動する)ことなく、膜が「たわむ」だけで動きを吸収する構造であり、ダイアフラム(膜で圧力や動きを伝えつつ、流体を仕切る構造)的な考え方です。

つまりラバードームは、動的シールでありながら摺動を伴わないため、摩耗の問題が小さく、防水と操作を両立できる優等生です。ゴムキートップ一体成形品は、防水性・防塵性・耐候性・耐久性に優れたシリコーンゴム成形品として広く使われています。

課題はクリック感です。ゴムドーム単独では柔らかい感触になりがちで、明快なクリック感が出しにくい。そこで、ゴムの反発でシールと押下を担いつつ、内部にメタルドームを組み合わせて「カチッ」としたクリック感を両立させる構造(ラバー+メタルドーム)が使われます。

 

(2)メタルドーム:クリック感を生む反転ばね

メタルドーム(皿ばね状の金属接点)は、ステンレス薄板をドーム状に成形したもので、押すとある荷重で反転し「カチッ」というクリック感と通電を同時に生みます。操作感の指標として「クリック率」があり、荷重の最大値をFmax、反転後の最小値をFminとしたとき、クリック率=(Fmax−Fmin)/Fmax×100(%)で表されます。スナップドーム(メタルドーム)メーカーの技術解説では、良質なメタルドームのクリック率は概ね40〜60%、プレミアム設計では70%以上に達するとされています。クリック率を上げるほど切れの良い操作感になりますが、復帰性が落ち、寿命が短くなるトレードオフがあります。

メタルドーム自体は防水しません。防水は、その上に被せる表面シート(オーバーレイ)やラバー、あるいは筐体側のシール構造が担います。メタルドームは薄い金属の精密成形品で、鋭利なものや過大な力で叩くと永久変形し、クリック感が失われ最悪ONのまま復帰しなくなります。防水キャップやゴムカバーは、この保護の役割も兼ねます。

 

(3)防水キャップ付きタクトスイッチ/メンブレンスイッチ

基板実装のタクトスイッチ(タクティールスイッチ)は、内部にメタルドームを持つ小型スイッチです。標準品は接点がむき出しに近く防水性がないため、防水用途では以下のアプローチを取ります。

  • (a) 内部をラバーシートで覆う
    内部構造をラバー製シール材やシートで保護し、水・埃の侵入を防ぐ(屋外機器、キッチン・バス用品で一般的)。
  • (b) メンブレンスイッチ化
    スイッチ部を表面シートで密閉した積層構造にすると、接点が外気にさらされず、防塵性・防水性に優れる。
  • (c) 防水キャップ/ブッシングを被せる
    押ボタンスイッチ用防水キャップで、操作部の上から水の侵入を防ぐ。

 

押しボタン3方式の断面比較 ― 水の侵入経路がどこで止まるか
【図3 押しボタン3方式の断面比較 ― 水の侵入経路がどこで止まるか】

 

4.スライドスイッチ・スライド構造 ―「滑る」摺動部の難しさ

スライドスイッチは、つまみが直線的に「滑る(摺動する)」構造です。これは防水的に最も難しい部類に入ります。理由は、摺動する部品は面同士が擦れながら往復するため、シールも一緒に擦れて摩耗するからです。静的シールなら一度密着すれば安定しますが、摺動部ではシールが常に擦られ続けます。
摺動部の防水で直面するトレードオフは、後述の回転軸シールと共通で、次の三つ巴です。

  1. シール性を高める(強く密着させる) → 摺動抵抗が増し、操作が重くなる/摩耗が早まる。
  2. 摺動抵抗を下げる(軽く当てる) → 操作は軽いがシール性が落ち、水が入りやすい。
  3. 潤滑(グリス)を介在させる → 摺動抵抗とシール性を両立できるが、グリスは経時で劣化・流出する。

このため、スライド構造そのものを防水するより、スライド部を防水された膜(ブーツ、ゴムカバー、ダイアフラム)の内側に隠す設計が現実的です。膜の外から指で押し滑らせ、膜自体は伸縮でスライドに追従させる考え方です。あるいは、そもそもスライド操作をやめ、複数ボタンや静電容量スライダーに置き換える設計代替も有効です。

 

摺動シールの摩耗メカニズム ― 摩耗は「前提」として寿命設計する
【図4 摺動シールの摩耗メカニズム ― 摩耗は「前提」として寿命設計する】

 

5.ロータリー構造 ―「回す」回転軸まわりのシール

ボリューム、ロータリーエンコーダ、回転ノブは、軸が「回転摺動」します。
回転軸の防水は機械要素技術として体系化されており、主に次の考え方があります。

 

(1)Oリングによる回転軸シール(運動用Oリング)

回転軸にOリングを装着し、軸とハウジングの隙間を塞ぐ最も一般的な方法です。ここで重要なのが、Oリングの運動用(動的)と固定用(静的)の使い分けです。

日本産業規格 JIS B 2401(Oリング)では、Oリングを用途で分類しています。運動用Oリング(Pシリーズ)は往復・回転などの運動部に使用し、固定用Oリング(Gシリーズ)は静止部の固定シール専用(運動用には使わない)です。ほかに真空フランジ用(Vシリーズ)、およびISO 3601-1に対応するISO一般工業用Oリング(シリーズF)があります(表2)。
なお、N・S・CSといった記号は用途ではなく品質等級(外観品質の区分)を表すもので、用途系列とは別の概念です。混同しないよう注意してください。

規格上、Pシリーズは運動用・固定用の両方に使えますが、Gシリーズは固定用のみで運動用には使いません(JIS B 2401-2:2012 の注記に「P3〜P400は運動用及び固定用に用いるが、G25〜G300は固定用にだけ使用し、運動用には使用しない」と明記)。ハウジング(Oリングを収める溝)の形状・寸法はJIS B 2401-2に規定されています。

溝設計では、Oリングをどれだけ潰すか(つぶし代)の設定が肝で、つぶし代を大きくすればシール性は上がるが摺動抵抗と摩耗、圧縮永久ひずみが増えるという関係にあります。運動用では装着性と摺動抵抗を考え、つぶし代を控えめにするのが定石です。

なお、具体的なつぶし代の数値や溝寸法の作り込みは、用途・材料・要求等級によって最適値が変わる設計ノウハウ領域です。本コラムでは定性的な考え方に留めます。

 

【表2 Oリング系列の使い分け早見表(JIS B 2401)】
Oリング系列の使い分け早見表(JIS B 2401)

 

(2)リップシール/オイルシール的な考え方

より確実に回転軸を封止するには、リップシール(オイルシール)の考え方が有効です。
オイルシールは、金属環・ばね・ゴムのリップで構成され、細く尖ったリップ先端を軸に軽く当てて封止します。ここでの設計思想が示唆に富んでいます。

シールメーカーの技術解説によれば、リップを強く押し付けて完全に密封しようとすると、摺動面(リップ先端と軸の間)の摩耗が激しくなり寿命を極端に縮めます。逆に隙間を空ければ漏れます。そのため、リップは「軽いタッチ」に留め、摺動面に油やグリスの薄い液膜を介在させて潤滑状態で使うのが原則です。この液膜がシール(漏れ止め)と潤滑(摩耗低減)を同時に担います。これは「完全に塞ぐ」のではなく「上手に漏らさない」という、動的シール特有の設計哲学です。
グランドパッキン的な発想(軸の周囲を柔らかい詰め物で締め付けて封止する)も回転軸シールの一系統ですが、電子機器の小型操作部では、Oリングやリップシールが現実的です。

 

(3)回転軸シールの副作用:起動トルク

回転軸に防水シールを設けると、シールの摩擦により回転の起動トルク(回し始めに必要な力)が高くなります。ロータリエンコーダの技術資料にも、防水シール付きの軸は起動トルクが高くなる旨が明記されています。
つまり、防水と「軽く滑らかな操作感」はここでもトレードオフです。防水ノブが「少し重い」のは、多くの場合この副作用です。

 

回転軸シールの3方式 ― ノブ・ボリュームの軸まわりをどう封じるか
【図5 回転軸シールの3方式 ― ノブ・ボリュームの軸まわりをどう封じるか】

 

6.タッチセンサ・静電容量式操作 ―可動部をなくす根本解

(1)発想の転換:動かなければ漏れない

ここまでの議論の裏返しが、「そもそも可動部をなくす」という設計代替案です。
静電容量式タッチ(人体が近づくと生じる静電容量の変化を検知する方式)は、物理的に動く部品がありません。操作面を平滑な一枚のガラスや樹脂パネルにでき、その裏に電極を配置します。動く部品がない=隙間がない=水の侵入経路が原理的にないため、防水を根本から解決できます。同時に、摺動摩耗もクリック感の劣化もなく、機械的信頼性が高いのも利点です。

 

(2)デメリット:静電容量式ならではの副作用

一方で、可動部レス化には固有の副作用があり、用途を選びます。

  • 水滴による誤動作
    水も人体と同様に電気を通すため、パネル表面に付いた水滴を「指のタッチ」と誤認しやすい。キッチン・バス・洗浄工程など水場で顕著です。対策として、水と指を判別するコントローラIC/ソフトウェアのアルゴリズム、水滴検知アラームなどが用いられます。
  • 手袋操作の問題
    投影型静電容量方式は、絶縁性の手袋を介すると静電容量の変化を検知しにくく、反応しないことがあります。近年は手袋対応品(高感度品)もありますが、環境ノイズに弱くなる面もあります。
  • 触覚フィードバックの喪失
    物理ボタンの「押した」というクリック感がなく、ブラインド操作(画面を見ずに手探りで操作)ができません。誤操作や操作確認のしづらさにつながるため、ハプティクス(振動による疑似触覚)や音で補うことが多いです。

つまり静電容量式は「防水という一点では最強だが、操作性の別課題を抱える」選択肢です。
手袋着用が前提の産業現場や、確実な触覚確認が必要な機器では、あえて物理ボタン+動的シールを選ぶ判断が正解になることもあります。

 

可動部あり/なしの比較 ― 静電容量タッチは防水の根本解、ただし別課題を伴う
【図6 可動部あり/なしの比較 ― 静電容量タッチは防水の根本解、ただし別課題を伴う】

 

7.開閉部 ―コネクタキャップ・充電ポート蓋の防水

USB/充電ポートの蓋、防水コネクタキャップ、パッキン付きカバーは、ユーザーが繰り返し開け閉めする箇所です。ここで最初に押さえるべき分岐点は、「ポート(コネクタ)自体が防水仕様かどうか」です。これによって防水構造をどこに持たせるかが根本的に変わります。

 

(1)分岐点:ポート自体が防水仕様かどうか

(A) 防水仕様のポートを使う場合

コネクタ部品そのものが防水性能を持つため、防水構造は「ポートと筐体の間」に設けます。ポートを筐体に取り付ける部分をパッキンやガスケットでシールすれば、筐体内部への浸水経路は塞がれます。この場合、キャップは必須ではなく、防塵や端子の保護・意匠のために任意で設けるものになります。最大の利点は、キャップが開いたままでも筐体内部が守られること、つまり防水性能をユーザーの操作に依存しない点です。部品コストは上がりますが、市場での浸水クレームを構造的に減らせます。

 

(B) 非防水のポートを使う場合

コネクタ単体では水の侵入を防げないため、防水はキャップが担うしかありません。キャップ内側のパッキンを筐体の開口部に押し付け、圧縮させることでシールします。汎用コネクタが使えるためコストは抑えられますが、決定的な弱点があります。閉め忘れや半閉じの状態では、防水性能はゼロになります。

 

(2)上記(B)方式の本質的課題:防水をユーザーに委ねることになる

上記(B)方式を採用するということは、防水性能の最後の一手をユーザーの操作に委ねるということです。どれだけ精密にパッキンと溝を設計しても、ユーザーがキャップを閉め忘れれば、あるいは「閉めたつもり」で半閉じのままなら、設計値は一切実現しません。

したがって(B)方式では、「きちんと閉まっている状態がユーザーにわかるようにすること」が、パッキンの材料選定や圧縮量設計と同じ重みを持つ設計要素になります。これは意匠やユーザビリティの話に見えて、実質的には防水設計そのものです。具体的には次の三つの手段を組み合わせます。

  1. 触覚で伝える ― クリック感・節度感
    スナップフィット(引っ掛かりによる嵌合)などで、閉まりきった瞬間に「カチッ」という節度感を指に返します。押しボタンのクリック感と同じ発想で、操作の完了を触覚で確定させる考え方です。設計上重要なのは、中途半端な位置で安定して止まってしまわない形状にすることです。半閉じで座りが良い形状は、ユーザーに「閉まった」と誤認させるため危険です。
  2. 視覚で伝える ― 合いマーク・段差・色分け
    閉状態と開状態を目で判別できるようにします。合いマーク(位置合わせの印)、閉じたときに面一(つらいち)になる段差設計、キャップ裏面や隙間に見える色の切り替えなどが有効です。逆に、半閉じでも外観上ほとんど差がわからない設計は、不具合を誘発します。「浮いていたら見てわかる」形状を意図的に作り込みます。
  3. 機構で保証する ― ロック機構
    レバー、ねじ込み、ラッチなどのロック機構を設け、必要なパッキン圧縮量を機構側で担保します。ユーザーの押し込む力の強弱に左右されず、規定の圧縮量を安定して得られるのが利点です。一方で、操作が煩雑になれば「面倒だから閉めない」という別の運用リスクを生むため、操作性とのバランスをとる必要があります。屋外・産業用途ではロック機構を積極的に採用し、日常的に頻繁に抜き差しする民生機器では触覚と視覚での伝達を重視する、といった使い分けが現実的です。

 

(3)繰り返し開閉に伴う劣化と異物

  • 繰り返し開閉の疲労
    開閉のたびにパッキンが圧縮・復元を繰り返し、ヒンジ部やパッキンが疲労します。頻繁に開閉する用途では、接着で貼っただけの額縁パッキンは推奨されず、成形品や切削品が奨められます。
  • 異物の噛み込み
    シール面に髪の毛やゴミが一本でも挟まれば、そこが浸水経路になります。異物が付着しにくい形状、清掃しやすい形状にすることも設計要素です。
  • 経時劣化
    パッキンは消耗品です。劣化の進み方は材質・温度・応力・使用環境に強く依存するため一律の年数では語れませんが、数年単位で反発力(密封力)が低下していくことを前提に、交換前提の設計とするか、あるいは(A)方式で構造的に依存度を下げるかを企画段階で判断すべきです。

なお、JIS B 0116:2020のガスケットの定義には「ドアのような開閉部を含む」と明記されており、閉じている状態の開閉部シールはガスケット(静的シール)として扱われます。ただし本章で見たとおり、繰り返し開閉による疲労という動的な劣化要因を併せ持つ点が、純粋な固定部シールとの違いです。

 

開閉部の防水 ― ポート自体の防水仕様で構造が変わる
【図7 開閉部の防水 ― ポート自体の防水仕様で構造が変わる】

 

8.材料と劣化 ―動く部位の寿命を決めるもの

操作部の防水は「新品時に水が入らない」だけでは不十分で、数年後も入らないことが求められます。
動的シールの寿命を左右する劣化要因を整理します。

 

(1)圧縮永久ひずみ(へたり)

ゴムを長時間圧縮したままにすると、力を除いても元に戻りきらず変形が残ります。これが圧縮永久ひずみです。Oリングやパッキンはゴムの反発力(元に戻ろうとする力)でシールしているため、圧縮永久ひずみが進むと反発力が失われ、シール性が低下します。
これはシール劣化の最重要指標であり、測定方法はJIS K 6262(加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの常温、高温及び低温における圧縮永久ひずみの求め方)に規定されています。高温・長期間ほど進行が速くなります。

 

(2)オゾン・紫外線による劣化(耐候性)

屋外機器では、オゾンと紫外線がゴムを劣化させます。「オゾンクラック」は、ゴムが引張応力を受けている状態でオゾンにさらされると、応力方向と直角に表面亀裂が生じる現象です。

天然ゴム(NR)やSBRなど主鎖に二重結合を持つジエン系ゴムは特に弱く、短時間で亀裂に至ります。
一方、EPDM、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、シリコーンゴムは主鎖構造から耐オゾン・耐候性に優れます。

伸ばした(変形させた)状態のシールほどオゾン劣化を受けやすい点は、操作部ゴムで留意すべきです。

 

(3)加水分解

水や水蒸気でゴムの主鎖が切れる劣化が加水分解です。
特にポリエステル系ウレタンゴム(AU)は加水分解に弱く、白濁・べたつき・硬度低下・圧縮永久ひずみ増大を起こします。
防水部品でありながら水で劣化するという皮肉があるため、水掛かり部位の材料選定では耐加水分解性を確認すべきです。高温・高湿・蒸気環境(風呂、洗浄)で加速します。

 

(4)摺動摩耗とグリスの経時劣化

摺動・回転部では、シールリップやOリングが擦れて摩耗します。
潤滑グリスは摩耗を抑える生命線ですが、経時で酸化・流出・乾燥し、切れると摩耗が急加速します。
水道の蛇口パッキンの「グリス切れ」による不具合と同じ原理です。

 

【表3 ゴム劣化の4要因と材料・規格の整理】

劣化要因 主に効く環境 弱い材料 強い材料 関連規格
圧縮永久ひずみ 長期圧縮・高温 (材料により差) 低へたり配合品 JIS K 6262
オゾン・紫外線 屋外 NR、SBR(ジエン系) EPDM、CR、IIR、シリコーン
加水分解 高温高湿・蒸気 ポリエステル系ウレタン(AU) シリコーン等
摺動摩耗 摺動・回転部 潤滑切れ時全般 自己潤滑材+適正グリス

 

ゴム劣化の4要因マップ ― 動く部位の寿命を決める「時間軸の敵」
【図8 ゴム劣化の4要因マップ ― 動く部位の寿命を決める「時間軸の敵」】

 

9.試験・評価 ―IP等級と操作部の関係

(1)IPコードの基礎(JIS C 60529 / IEC 60529)

防塵・防水性能はIPコード(IEC 60529、およびその整合規格である日本産業規格)で表されます。
「IP」に続く1桁目が防塵(0〜6)2桁目が防水(0〜8、特殊で9)です。(※IPコードの基礎知識はこちら
操作部・スイッチ・コネクタなどの小型部品にも適用されます。主な防水等級と試験の概要を表4に示します。

規格の版に注意が必要です。第2特性数字9(IPX9)はIEC 60529の2013年改正(Amendment 2)で追加された比較的新しい等級で、従来の日本産業規格 JIS C 0920:2003(IEC 60529:2001に対応)には含まれていませんでした。日本でIPX9を規定するのは、2026年1月20日に発行された JIS C 60529:2026 です。同規格の発行によりJIS C 0920:2003は廃止・置換されています。社内規格や仕様書がJIS C 0920を引用したままになっている場合は、引用規格の更新が必要です。

 

【表4 主なIPX防水等級と試験条件の概要】

等級 保護内容 試験条件の概要
IPX4 あらゆる方向の飛まつ 全方向から放水
IPX5 噴流 内径6.3mmノズル、12.5 L/分±5%、距離2.5〜3m、表面積1m²あたり1分・最低3分
IPX6 暴噴流 内径12.5mmノズル、100 L/分±5%、距離2.5〜3m、表面積1m²あたり1分・最低3分
IPX7 一時的水没 水深1m・30分の浸漬
IPX8 継続的水没 製造者・使用者間の協定条件(機種ごとに異なる)
IPX9/IPX9K 高温高圧洗浄 水温80±5℃の熱水、約8〜10MPa、流量約14〜16 L/分、4方向(0°/30°/60°/90°)から各30秒。ISO 20653(旧DIN 40050-9)ではIPX9Kと呼称

注意すべきは等級の非線形性です。
IEC 60529の原則として、IPX7(静的な水没)の合格は、IPX6(動的な噴流)の合格を保証しません。これらは異なる使用シナリオを試験しているため、両方に適合させる場合は「IPX5/IPX7」のように併記して示します。想定する使われ方(水没か、噴流か、洗浄か)に応じて等級を選ぶことが必要です。この原則はIEC 60529の箇条6に規定されています。

また、試験に用いるのは真水であり、海水・洗剤・薬品は対象外である点も、操作部の材料劣化を考えるうえで重要です。
なお、水温はIPX1〜IPX6で「供試品との温度差5K以内」と規定される一方、IPX9は80±5℃の熱水を用います。「防水等級を取得している=あらゆる液体・温度に耐える」ではありません。
(※防水試験の方法についての詳しい解説はこちら

 

(2)試験時に操作部を「動かす」のか ― 補助文字 M/S

「防水試験のとき、スイッチやノブを操作しながら試験するのか?」という実務的な疑問には、規格上の明確な枠組みがあります。
IEC 60529では、必須の2桁数字に加えて任意の補助文字(H・M・S・W)が規定されており、このうちMとSが可動部の状態を区別します。

  • M: 機器の可動部が運転・動作中の状態で、水の浸入試験を行ったことを示す。
  • S: 可動部が停止中の状態で試験を行ったことを示す。

一方で、IPX5〜IPX8の水試験本文には、「操作部を必ず通常使用状態で操作せよ」という一律の義務規定は明示されていません。つまり、可動部を動かして試験するか否かは、原則として個別の製品規格や製造者・使用者間の取り決めに委ね(箇条11.2)、動作中に試験したことを明示したい場合に補助文字M(箇条8)を付す、という建て付けです。補助文字M・Sのいずれも付さない場合は、原則として動作中・停止中の両条件で要求を満たすことが求められます。

設計上の示唆は明快です。実使用で操作しながら水がかかる機器(屋外の操作パネル、水場のスイッチ等)は、「操作しながら濡れる」ワーストケースを想定し、可動部作動状態(M相当)での評価を自主的に行うべきです。停止状態でしか防水を確認していない製品を、操作中に水がかかる用途に使うのは危険です。

 

【表5 IP試験×操作部評価マトリクス(設計レビュー用フォーマット例)】

目標等級 静止状態(S相当)での評価 作動状態(M相当)での評価
IPX4(飛まつ) □ 実施済/□ 未実施 □ 実施済/□ 未実施/□ 不要
IPX5・6(噴流) □ 実施済/□ 未実施 □ 実施済/□ 未実施/□ 不要
IPX7・8(水没) □ 実施済/□ 未実施 □ 実施済/□ 未実施/□ 不要
IPX9(高温高圧) □ 実施済/□ 未実施 □ 実施済/□ 未実施/□ 不要

使い方:自社製品の想定使用シーン(操作しながら濡れるか)を先に定義し、「不要」の判断根拠を設計レビューで残すこと。

 

(3)開閉サイクル・操作耐久試験

操作部は防水試験だけでなく、繰り返し動作の耐久試験が不可欠です。スイッチの機械的耐久性(保証動作回数)はメーカー公表値で確認でき、標準品で概ね10万回、長寿命グレードで100万〜数百万回というレンジが一般的です。開閉部の蓋・キャップも、想定使用回数に対する開閉サイクル試験を行い、試験後に防水性能(IP等級)を再確認することが重要です。「新品で防水」ではなく「規定回数動かした後も防水」を確認する、という視点がフロントローディングの要諦です。

 

10.不具合事例と対策 ―浸水経路になりやすい箇所

現場で繰り返される浸水・不具合のパターンを、操作部の観点で整理します(一般的傾向であり、原因は個別に切り分けが必要です)。

  • (1) ボタン周囲の隙間からの浸水:押しボタンとパネルの隙間が経年でシール劣化。
    → ラバードーム一体成形や防水キャップで隙間そのものをなくす。
  • (2) 摺動・回転部のシール摩耗:スライド・ノブのシールが擦れて摩耗し、繰り返し動作で漏れ始める。
    → 適正な潤滑、低摩耗材、摺動抵抗とシール性のバランス設計。
  • (3) キャップ/蓋の閉め忘れ・異物噛み込み:髪の毛やゴミの噛み込み、半閉じ。
    → 開けにくすぎず閉め忘れに気づく設計、隔壁による内部保護の二重化。
  • (4) メタルドームの変形:硬いもので過大な力で押され、クリック感喪失・常時ON。
    → 押し子(プランジャ)で中央を押す構造、表面シートによる保護。
  • (5) ゴムのへたり・オゾンクラック・加水分解:数年でシール反発力低下や亀裂。
    → 耐候性材料(EPDM、シリコーン等)選定、圧縮永久ひずみの小さい配合。
  • (6) 温水・海水・薬品による劣化:真水前提の防水が、風呂・海・洗剤で加速劣化。
    → 使用液体の想定を仕様に明記、耐薬品材料選定、隔壁と排水経路の設計。
  • (7) 温度変化による結露:内外温度差で内部結露。
    → 防水透過膜(通気で内外圧を均一化しつつ水を防ぐ)の採用。

 

11.設計チェックポイント

企画・設計の上流で確認すべき項目を、非エンジニアでも使えるチェックリストにまとめます。

【フロントローディング用チェックリスト】

□ その操作部は本当に「動く」必要があるか。静電容量式(可動部レス)に置換できないか検討したか。
□ 動く部位は「摺動する(滑る・回る)」のか「伸縮する(たわむ)」のか。摺動なら摩耗対策、伸縮なら膜構造(ダイアフラム)を優先したか。
□ 静的シール(ガスケット)と動的シール(パッキン)を混同せず、動的部にはOリングなら運動用(JIS B 2401 Pシリーズ)を選んでいるか。
□ シール性・操作力(摺動抵抗)・寿命(摩耗)のトレードオフを定量的に検討したか。
□ 潤滑グリスの種類と経時劣化・流出を寿命設計に織り込んだか。
□ ゴム材料は使用環境(屋外=オゾン・紫外線、水場=加水分解、高温)に適合しているか。圧縮永久ひずみ(JIS K 6262)を確認したか。
□ 目標IP等級と、その等級が「静止(S)/作動(M)」どちらで必要かを明確にしたか。操作しながら濡れる用途を想定したか。
□ 開閉部は想定回数の開閉サイクル試験後にもIP等級を維持するか。
□ 「濡れてもよいエリア」と「内部」を隔壁・防水透過膜で分離したか。
□ 具体的な溝寸法・つぶし代・締め代などの数値ノウハウは、社内基準・当社実績値に基づき検証したか。

 

【表6 操作部防水方式の選定早見表 ― 防水性×操作感×寿命×コスト】
操作部防水方式の選定早見表 ― 防水性×操作感×寿命×コスト

 

12.まとめ

操作部の防水設計は、「防水(塞ぐ)」と「操作(動かす)」という相反する要求の両立問題です。要点は次の3つに集約されます。

  • (1) 静的シール(ガスケット)と動的シール(パッキン)を区別する。動くところは「完全に塞ぐ」のではなく、潤滑膜を介して「上手に漏らさない」。摺動シールは摩耗する前提で寿命設計する。
  • (2) 押す・滑る・回すで最適解が違う。押すはラバードームの膜構造、滑る・回すはOリング/リップシールと潤滑、そして可能なら可動部レス(静電容量式)で根本解決する。ただしタッチは水滴誤動作・手袋不可・触覚喪失という副作用を伴う。
  • (3) 劣化と繰り返しを織り込む。圧縮永久ひずみ・オゾン・加水分解・摺動摩耗という時間軸の敵を、材料選定と試験(IP等級+開閉サイクル)で先回りして潰す。これこそがDX推進時代のフロントローディングである。

 

神上コーポレーション株式会社は、筐体・シール材から操作部の動的シールまで、防水設計を上流から支援します。具体的な溝設計・つぶし代・材料選定の数値基準など、本コラムで定性的に留めた部分の詳細については、神上コーポレーションまでお問い合わせください。

 

用語ミニ辞典

用語

意味

摺動(しゅうどう) 部品同士が接触しながら擦れて動くこと。スライドや回転に伴う。摺動部はシールも擦れて摩耗する
ガスケット/パッキン 密封部品(シール)の用途別の呼び名。静止部分用がガスケット、運動部分用がパッキン(JIS B 0116 パッキン及びガスケット用語)。名前が用途を表す
静的シール/動的シール 動かない箇所を塞ぐのが静的シール(=ガスケット)、動く箇所を塞ぐのが動的シール(=パッキン)
ダイアフラム 膜。動きや圧力を伝えつつ内外を仕切る薄い膜構造。ラバードームは膜の伸縮で防水と押下を両立する
圧縮永久ひずみ ゴムを長く圧縮すると元に戻らず残る変形。シールの反発力=密封力が失われる主因。測定はJIS K 6262
Oリング 断面が円形のリング状シール。装着場所により固定用(ガスケット)にも運動用(パッキン)にもなる。運動用(P)・固定用(G)等の区分がある(JIS B 2401)
リップシール(オイルシール) 尖ったリップを軸に軽く当て、潤滑膜で封止する回転軸用の動的シール
つぶし代/締め代 Oリングやパッキンをどれだけ潰して密着させるかの量。大きいほどシール性は上がるが摩耗・へたり・抵抗が増える
メタルドーム 皿ばね状の金属接点。押すと反転しクリック感と通電を生む。クリック率で操作感を表す
ラバードーム ドーム状のシリコーンゴム部品。膜の伸縮で押下し、連続膜ゆえ防水に優れる
静電容量式 人体の接近で生じる静電容量変化を検知する方式。可動部がなく防水に有利だが水滴誤動作・手袋操作困難の弱点
IP等級(IPコード) 防塵・防水の保護等級(IEC 60529/JIS C 60529:2026。旧JIS C 0920:2003は廃止)。1桁目が防塵、2桁目が防水。補助文字M(作動中試験)/S(停止中試験)で可動部状態を表す
IPX9/IPX9K 高温高圧洗浄に対する保護。80±5℃の熱水を高圧で噴射。IEC 60529ではIPX9、ISO 20653(旧DIN 40050-9)ではIPX9Kと呼ぶ
防水透過膜(通気膜) 水は通さず空気・水蒸気は通す膜。内外の圧力・湿度を逃がしつつ浸水を防ぐ
フロントローディング 開発の上流工程に検討を前倒しし、後工程の手戻りを防ぐ設計思想

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 防水と操作性、どちらを優先すべきですか?
A. 用途次第です。操作頻度が低く確実な防水が最優先なら可動部レス(静電容量式や膜構造)を、頻繁で確実な操作感が要るなら物理ボタン+動的シールを選びます。多くの失敗は「両方を欲張って中途半端」になることです。優先順位を企画段階で決めるのがフロントローディングの要諦です。

 
Q2. パッキンとガスケットはどう違うのですか?
A. どちらも密封部品(シール)ですが、静止部分に使うものがガスケット、運動部分に使うものがパッキンです(JIS B 0116)。名前が用途を表すため、動く箇所に「〜ガスケット」を流用するのは原則誤りです。Oリングは形状の名前であり、装着場所によってどちらの役割にもなります。

 
Q3. 静電容量タッチにすれば防水は完璧ですか?
A. 防水面では非常に有利ですが、水滴を指と誤認する誤動作、手袋での操作困難、クリック感(触覚)の喪失という別課題が生じます。水場や手袋前提の現場では、水弁別アルゴリズムやハプティクスでの補完、あるいは物理ボタンの併用を検討します。

 
Q4. 防水スマホなのに水没故障するのはなぜですか?
A. IP等級は新品・常温真水での性能です。経年でパッキンが劣化し、落下でフレームが歪み、充電ポートの摩耗やキャップの閉め忘れ・異物噛み込みで浸水します。海水・温水・洗剤は試験対象外で劣化を早めます。「防水は永続しない」が正しい理解です。

 
Q5. 防水試験のとき、ボタンは押しながら試験するのですか?
A. IEC 60529(整合規格 JIS C 60529:2026)の水試験本文には一律の義務規定はありませんが、可動部を動作中に試験したことは補助文字「M」、停止中は「S」で示せます。操作しながら濡れる用途では、作動状態(M相当)での評価を自主的に行うべきです。

 
Q6. グリスは塗れば塗るほど良いのですか?
A. いいえ。適量のグリスは摺動抵抗低減・シール性・摩耗低減に有効ですが、過多は漏れ出しや埃の付着を招き、経時で酸化・流出します。グリスの選定と量、経時劣化を寿命設計に織り込む必要があります。

 
Q7. 屋外で使うノブのゴムはどんな材料が良いですか?
A. オゾン・紫外線に強いEPDMやシリコーンゴムが有利です。天然ゴムやSBRなどジエン系は屋外でオゾンクラックを起こしやすく不向きです。水掛かりが多い場合、ポリエステル系ウレタン(AU)は加水分解に弱いため、材料選定に注意が必要です。

 
Q8. 開閉するキャップの寿命はどれくらいですか?
A. 材質・温度・応力・使用環境に強く依存するため、一律の年数では語れません。ただし数年単位で反発力(密封力)が低下していくのは避けられないため、想定開閉回数の耐久試験後にIP等級を再確認し、消耗品として交換前提にするか、ポート自体を防水仕様にして依存度を下げるのが安全です。

 

[PR]関連情報・お問い合わせ

本コラムは、神上コーポレーション株式会社(KOHGAMI Corporation Inc.)の電子機器防水設計に関する知見をもとに、設計職・非設計職の双方に向けて整理した実務解説です。
防水設計に関するご相談・設計の受託は、神上コーポレーションのHPからお気軽にお問い合わせください。

  • 防水構造設計の受託・コーディネート
  • 防水設計ナレッジの社内構築支援
  • 防水以外:放熱設計、3Dデータ運用、DX導入支援 ほか

※本コラムは一般的な解説を目的としたものであり、個別製品の防水性能を保証するものではありません。実設計にあたっては、材料メーカー・金型メーカー・評価機関と連携のうえ、個別仕様に合わせた妥当性の検証をお願いいたします。

© KOHGAMI Corporation Inc.
 

鈴木 崇司 講師 《この記事の執筆者》

 鈴木崇司 講師
 神上コーポレーション株式会社 代表取締役

 長年の経験から培われた「構造×材料」の複合知見、技術コンサルティング能力、
 DX推進による効率化を強みとし、防水設計・開発を強力に支援。
 防水に関するあらゆる課題に対し、最適なソリューションを提供。
 (※神上コーポレーションのWEBサイトはこちら)

 

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