3分でわかる技術の超キホン 水処理は一体何をしている?
「水処理」という言葉は、まず水道水のことを思い出す方が多いかもしれません。
実は水道水以外にも、工業用水など様々な水処理が存在します。
水を使用目的にあわせた水質にするための、または、周辺環境に影響を与えないよう排出するための、様々な水処理があります。
1.水道水の水処理
私たちが日常的に使用している水道水は、川や地下水などの自然界を循環している水を浄水場で浄化して各家庭に送られています。しかし、産業の発展とともに、水質の悪化も目立つようになりました。安心な飲用水を提供するため、浄水場では高度な水処理技術が必要になってきています。
きれいな水に対しては、浄水場で塩素による消毒のみ、あるいは、ゆっくりした砂ろ過と消毒の組み合わせで処理が済みます。
しかし、汚染された水の場合は、薬品処理を行う凝集反応槽において、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウム(PAC)といった凝集剤を投入し、5µm以下の微粒子や1µm以下のコロイド物質を水酸化アルミニウムで凝集させ(水中に存在する粒子はマイナスに、水酸化アルミニウムはプラスに荷電しているため、両者が混合されると荷電中和が起き、凝集フロックと呼ばれる塊が形成される)、砂ろ過処理した後、塩素で消毒するという組み合わせが多くなります。
どのような処理法を採用するかは、原水の懸濁物質の濃度により決められます(図1)。
【図1 浄水場で水処理の流れ】
2.工場用純水を製造するための水処理
純水を使う工場では、微細なものでも混入したまま工場の製造工程に使用されると、様々なトラブルの原因となってしまいます。
そこで、普通のろ過では除けない細かい濁質を除去するための「膜」が開発されています。
圧力差を駆動力とする分離膜に関しては、別コラム「分離膜(濾過膜)の種類と用途」で解説しています。
分離膜はその孔の大きさによって、精密ろ過(MF)、限外ろ過(UF)、逆浸透(RO)とナノろ過(NF)膜の4つの種類に分けられます。
膜ろ過をかける前に、サイズの大きいものを除く必要があり、そのプロセスは「前処理」と呼ばれます。
3.水処理における「前処理」
通常、前処理で「ろ過」といえば、砂ろ過、あるいは砂とアンスラサイトを使った二層ろ過のことを指します。
「アンスラサイト質」とは、最も炭化の進んだ石炭のことと言います。揮発性物質や不純物が少ないため、細かく粉砕して粒径を揃えると、ろ過材として使用できます。
この前処理は、水道水をつくる浄水場の処理と同様のいくつかのシステムを組み合わせて行われます。凝集、沈殿、浮上、ろ過などの分離操作が行われます。
また加圧浮上装置では、水に圧力を加えて空気を溶解させた後、大気圧に開放し、減圧します。これにより大量の微細気泡粒子やコロイド物質を付着させ、懸濁物質を浮上し分離させることで、分離水のろ過処理が行われます(図2)。
【図2 前処理の流れと種類】
4.膜の分離対象と分離方法
分離法の特性と分離対象物を、表1に示します。
精密ろ過法(MF)は、懸濁物質や細菌、超微粒子など、おおむね0.1~10μmの物質の通過を阻止し、限外ろ過法(UF)では、たんぱく質や酸素、細菌類やウイルスなど1~100nm程度の物質の通過を阻止します。
さらに逆浸透法(RO)では、無機塩や糖類、アミノ酸やBOD、COD成分といった低分子やイオンなどを含む溶液を分離濃縮することができます。
実際の水処理においては、こうした各種の膜を目的に応じて効率的に組み合わせて使用します。
【表1 膜の分離対象と分離方法】
ということで今回は、「水処理」の基礎知識をご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)