3分でわかる UV硬化技術の基礎知識と樹脂のポイント

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UV硬化

「UV硬化」とは、UV(紫外=Ultra Violet)光を照射することで塗膜を硬化させる塗料技術です。
UV光は太陽光にも含まれ、波長域によっては皮膚や眼への影響、発がん性などが指摘される光成分でもあります。本来であれば慎重な取り扱いが求められるUV光が、なぜ塗料分野において硬化エネルギーとして選択されているのでしょうか?
本記事では、その技術的背景と特性について解説します。

1.UV硬化技術の概要

図1はUV硬化のイメージを示したものです。
UV硬化は、塗布した塗膜にUV(紫外)光を照射し、そのエネルギーによって塗膜中の反応を進行させ、短時間で硬化させる技術です。

 

UV硬化のイメージ図
【図1 UV硬化のイメージ図】

 

(1)UV硬化のメリット・デメリット

通常の塗料では基材上に塗布した後、加熱や乾燥工程を経て塗膜を硬化させます。
これに対してUV硬化では、加熱の代わりにUV光を照射することで塗膜を硬化させます。
加熱ではなくUVを使用するのは表1に記載した利点があるからです。

 

【表1 UV硬化の利点と弱点】

利点 弱点
①硬化速度が速い ①厚膜が不得手
②低温で硬化可能 ②影部分の硬化が困難
③エネルギー消費を低減できる ③酸素や水分による阻害
④生産性が高い
⑤溶媒の減量が可能
⑥硬化物の硬度が高い

UV硬化の最大の特長は、熱硬化と比較して硬化速度が速く、しかも低温で硬化が可能である点です。このため、加熱に要するエネルギーを削減できると同時に、工程時間の短縮による生産性向上が期待できます。
熱硬化型塗料では、樹脂の粘度調整のために多量の溶媒を使用する場合が多いですが、UV硬化では反応性のある低分子成分が溶媒の機能も果たすので、溶剤使用量の削減が可能になります。この点は作業環境の改善にもつながります。
さらに、UV硬化では架橋密度の高い硬化構造を形成しやすく、硬度の高い塗膜が得られる点も特徴として挙げられます。

一方で、UV硬化には弱点もあります。
塗膜が厚いとUV光が深部まで届きませんので、厚膜は不得手です。また、基材に光が当たらない影の部分がある場合には、均一な硬化が困難になる場合があります。さらに、酸素や水分が硬化を阻害することもあります。
このような弱点はあるものの、条件を適切に設計すれば多くの用途で問題なく制御可能であり、総合的には熱硬化に比べて優位性を持つ分野で広く利用されています。

 

(2)UV硬化塗料の構成と種類

UV硬化塗料は、主として樹脂成分と開始剤とで構成されます。
開始剤(光開始剤)は、UV光を吸収して活性な成分に変化し、樹脂の反応を開始させる成分です。換言すると、UV光は開始剤を活性化するために照射されています。

UV用塗料には表2に示したアクリル系とエポキシ系の2タイプがあります。大部分はこの両者であり、他の系で工業的に広く実用化されている例は極めて限定的です。この点は、UV硬化技術を理解するうえで重要なポイントです。

 

【表2 UV硬化塗料】
UV硬化塗料

 

アクリル系は末端にアクリル基を有する樹脂を使用し、ラジカル重合の機構で硬化します。
これに対してエポキシ系では末端にエポキシ基を有する樹脂を使用し、カチオン重合の機構で硬化します。

※関連記事:UV硬化型塗料の基礎知識|硬化反応機構/材料/メリットなど《塗料/コーティング技術入門》

 

2.何故アクリル系とエポキシ系なのか

塗料の硬化とは、化学的には高分子を形成する重合反応と捉えることができます。
表3は高分子重合反応を分類し、各々の特徴を整理したものです。

この表を見ると、高分子重合反応には多様な反応機構が存在するにもかかわらず、UV硬化塗料として工業的に広く用いられているのは、事実上アクリル系とエポキシ系に限られていることに疑問を持たれるかもしれません。本章では、その理由について解説します。

 

(1)アクリル系とエポキシ系のみが使用される理由

両者は他の重合系との競争で勝ち残ったと言えます。その理由として以下の点が挙げられます。
 

  1. 実用的な重合速度で、かつ低温硬化が可能な系としては、両者が主流である。
  2. アクリル系には酸素阻害(酸素でラジカル反応が停止する)、エポキシ系には水分阻害という問題があるが、工程設計により制御可能な範囲にある。
  3. 両者は物性のバランスが良い。
  4. アクリル系のα-ヒドロキシアセトフェノン等の開始剤、エポキシ系のトリアリルスルホニウム塩等の開始剤は高い光反応効率を有し、かつ比較的安価な光開始剤が利用可能である。

 

【表3 高分子重合の分類】
高分子重合の分類

 

(2)UV硬化での他重合系の問題点

一方で、UV硬化への適用が検討されてきた他の重合系には、以下のような課題があります。

  1. ビニルエチルエーテル:
    ラジカル重合もカチオン重合も可能ですが、重合速度が遅い、酸素や水分に非常に弱い等の欠点があります。
  2. オキセタン系:
    重合開始が遅いことに加え、モノマーが高価です。
  3. スチレン:
    ラジカル重合可能ですが、アクリル系よりも重合速度が遅いという弱点があります。

 

3.新UV光源(LED-UV)の導入

UV硬化分野における技術的進展の一つとして、新UV光源の導入が挙げられます。
これまでUV光源は水銀灯が主流でした。水銀灯は長年にわたりUV硬化分野で使用されてきた実績のある光源であり、UV硬化技術の発展に大きく貢献してきましたが、UV光と同時に相当量の熱も発生することが課題とされています。
これを解決する手段としてLED-UV装置発光ダイオードUV装置)が開発されました。LED-UVでは開始剤に必要な波長のUV光のみを照射することが可能です。また熱の発生も僅かです。UV硬化の利点を高めることが出来る光源です。このためLED-UV装置の導入が産業界で進行中です。

 

おわりに

UV硬化技術は、材料設計と光源技術の最適な組み合わせによって成立する高度なプロセス技術です。
アクリル系・エポキシ系という成熟した材料体系に、LED-UVという新たな光源が加わったことで、適用範囲は着実に拡大しています。
今後は、さらなる低エネルギー化や適用基材の多様化を通じて、UV硬化技術の重要性は一層高まっていくと考えられます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 市村国宏, UV硬化の基礎と実践, 米田出版 (2010)
  • 2) 角田正弘, LED-UV硬化技術と硬化材料の現状と展望, シーエムシー出版 (2016)

 

 

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