《第五次産業革命?》スマートセルインダストリーを解説

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スマートセル

OECD(経済協力開発機構)によって、バイオテクノロジーと経済活動を一体化させた「バイオエコノミー」という概念が提唱され、農業・健康・工業分野で2030年までに世界のバイオ市場規模は約1.6兆ドルと予測されています。

スマートセルとは?

近年のバイオテクノロジー分野では、

  • 次世代シーケンサの開発によるゲノム解析の短時間化とコスト低減
  • IT/AI技術の進化によるゲノム情報の分析やゲノム設計
  • ゲノム編集技術による狙った生物機能の発現

の3分野の技術革新がおこり、バイオ技術とデジタル技術分野の融合により2016年に経済産業省によるNEDOの潜在的な生物機能を引き出すスマートセルプロジェクトがはじまりました。

高度に機能がデザインされ機能の発現が制御化された生物細胞”を「スマートセル」とし、スマートセルを用いて機能性物質を生産させ利用する次世代のモノづくり産業群として「スマートセルインダストリー」が注目されています。
微生物や植物などを用いてエネルギー分野での新たな代替エネルギーの開発や、化学合成では生産が難しい化合物の生産への取り組み、食料問題に対する取り組みなどがスマートセルインダストリーとして進められています。

微生物を用いた有用物質の生産については、アミノ酸、アルコール、有機酸など、古くから知られている技術です。有用物質を生産する天然微生物の単離や、変異導入による高生産能を持つ微生物株のスクリーニング、遺伝子の導入・欠失など遺伝子組換えによる高生産能を持つ微生物を作製などが行われてきましたが、スマートセルプロジェクトでは、最新バイオ技術やAI・IT技術を加えた“DBTLサイクル”【Design(設計)→Build(構築)→Test(評価)→Learn(学習)→】を用いて新たな物質生産プロセスを構築し、高機能・省エネルギー・低コストな生産技術を目指しています。

DBTLサイクル

以下、各サイクルについての研究開発例をご紹介します。
 

“Design”/”Learn”の例

代謝設計ツールの開発

酵素反応データベースをもとに、酵素反応パターンをコンピューターに学習させ、新規の人工的な代謝反応の予測・設計を行うツールが開発されています。
 

ゲノム情報からの代謝反応自動作成システム

次世代シークエンサーによるゲノム情報の収集と代謝データベースをもとに、目的物質を生産させたい微生物のゲノム情報をもとに細胞内の代謝経路を構築します。
 

スマートセル設計支援知識ベース

データベース/文献情報/実験データからの文献・データ解釈AIによる「スマートセル設計支援知識ベース」の作成による、設計改良アイデアの提示システムなどが挙げられます。
 

“Build”の例

長鎖DNA合成技術(OBGA法)

枯草菌のプラスミド形質転換を利用した多重DNA断片集積法で、DNA断片を3~4塩基の突出末端を持つように設計し、タンデムリピート状にライゲーションし枯草菌コンピテントセルに与えて集積プラスミドを作製する方法です。
50kbを超える長鎖DNA合成、50断片を超えるDNA断片の連結、変異が入らないという特徴があり、従来数か月かかる作業を短期間に低コストにて実施可能です。
 

ゲノム編集技術

ゲノム編集技術に関してはCRISPR/Cas9をはじめとして欧米の知財の存在により、国内産業の活性化のために国産ゲノム編集技術の開発が必須となっているため、以下のような研究が行われています。

  • in silico解析による新規ゲノム編集ツール候補の探索
  • 新規ゲノム編集技術PODiR (Party overlapped Direct Repeat)システムの開発
  • RNA編集を可能とするRNA結合型PPR(pentatricopeptide repeat)の開発

 

“Test”の例

代謝物抽出トータルシステム

細胞培養の条件制御、サンプリング、代謝物抽出などの前処理工程を自動化したメタボローム解析システムの開発などがあります。
 

高精度メタボローム解析システム

代謝物の解析数を186種類に拡大した一斉分析システムがあります。
 

ハイスループット評価システム

代謝物を超臨界流体抽出/超臨界流体クロマトグラフィーシステム(SFE-SFC-MS)で直接分析するシステムの開発により、液体培養を経ない短時間での効率的なスクリーニングが可能です。
 

データ解析システム開発

メタボローム解析において得られたクロマトグラムにおいて、スペクトルから分子に対応する波形を読み取るピークピッキングを支援し、解析結果を代謝マップ上に投影する情報解析システムの構築が挙げられます。
 

第五次産業革命に向けて

DBTLシステムの各段階での研究開発の一例について紹介しましたが、各段階における研究開発が進み、連携し実用化・産業化が期待されます。
IoT、AI、ビッグデータによる第四次産業革命に続き、遺伝子改変生物とIT・AI技術を組み合わせたスマートセルインダストリーでの第五次産業革命による社会問題の解決が今後も注目されます。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・Y)
 


※参考URL


 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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