高分子重合の種類(分類)と付加重合の概要|押さえておくべき前提知識を整理!

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高分子重合の基礎知識

高分子は現代の私たちの生活を支えている重要な材料です。
高分子はどんな原料からどんな方法で生産されているのでしょうか。

高分子の合成技術である高分子重合(通常、重合と略称)の基礎を学びましょう。

1.高分子重合の種類(おおまかな分類)

高分子は、高分子がそれを構成する単位が多数連結した構造を有するため、「高分子鎖」と呼ばれることがあります。高分子鎖の構成単位を「単量体」(モノマー)と呼び、高分子は「ポリマー」と呼ばれます。

「高分子重合」とは、換言すれば、モノマーからポリマーを合成する技術です。

重合にも多様な形式があり、表1に示したように、付加重合縮合重合開環重合に大別されています。

 

【表1 高分子重合の分類】
高分子重合の分類

 

(1)付加重合

付加重合の代表例は、エチレンからのポリエチレンの製造です。

付加重合のモノマーはエチレンのように二重結合を有しています。「二重結合」というのは、隣接するモノマーと結合する手をモノマー内部に有している状態とみることが出来ます。

ポリエチレン以外にポリスチレンやポリ塩化ビニルも付加重合で得ることが出来ます。

 

(2)縮合重合

縮合重合の代表は、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からのナイロン66の製造です。

縮合重合の特徴は2種類の異なるモノマーが反応する点です。異なるモノマーが各々2つの手を外向けに有しており、異なるモノマー間での縮合反応により結合を形成します。

縮合」とは、反応で失われる分子があることを意味しています。
ナイロン66の例では水が失われます。即ち、脱水縮合しながら結合を形成します。

ナイロン66以外にポリカーボネートやPETも縮合重合で製造されます。

[※関連記事:縮合重合とは?重合の代表例や特徴など要点解説 はこちら]

 

(3)開環重合

開環重合の代表は、ε-カプロラクタムからのナイロン6の製造です。

開環重合のモノマーはε-カプロラクタムのように環状構造を有しています。この環を切断(開環)しながら隣接するモノマーと結合を形成します。

ナイロン6以外にポリエチレンオキシドも開環重合で製造されます。

[※関連記事:開環重合とは?反応機構や特徴などをわかりやすく解説 はこちら]

 

2.付加重合の基礎知識

付加重合はラジカル重合カチオン重合アニオン重合の3形式に区分されます。
これらの3形式の間には付加重合としての共通点と、それぞれが有する特徴とがあります。

 

付加重合に共通する4つの素反応

ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の3形式は、表2に示す4つの素反応で構成される点で共通しています。

 

【表2 ラジカル重合/カチオン重合/アニオン重合に共通の素反応】
ラジカル重合/カチオン重合/アニオン重合に共通の素反応

まず、1)開始反応です。開始剤A*がモノマーと反応する段階です。
付加重合はモノマーだけでは通常は重合しません。重合のきっかけを起こす開始剤をモノマーに加えることが必要になります。開始反応とは開始剤がモノマーに付加する段階と言えます。
開始反応の結果、開始剤A*が付加した反対側に活性点C*が生成します。
活性点」とは、未反応のモノマーに付加して高分子鎖を伸ばしていく能力を持つ位置のことです。

 
次に、2)成長反応です。活性点C*にモノマーが次々に結合していくことにより、ポリマーが形成される段階です。
ところで、この成長反応は未反応のモノマーが存在する限り無限に継続するでしょうか?無限の長さをもったポリマーが出来るのでしょうか?もちろん現実にはそうはなりません。
3)停止反応か4)連鎖移動によって成長反応が止まって、有限の長さのポリマーとなります。

 
3)停止反応では、停止剤Zが活性点C*と反応することにより活性点が消失します。
これにより成長が止まります。

 
4)連鎖移動では、連鎖移動剤T1-T2が活性点C*と反応することにより活性点C*が消失すると同時に新たな活性点T2*が生成します。
成長は止まりますが、T2*が開始剤A*と同様に重合の新たな起点として機能します。
 
 

ラジカル重合/カチオン重合/アニオン重合の違いと特徴

ラジカル重合・カチオン重合・アニオン重合の3形式の違いは何でしょうか。
表3は、各重合の特徴を比較してまとめたものです。

 

【表3 付加重合の特徴比較(ラジカル重合/カチオン重合/アニオン重合)】
付加重合の各形式の特徴(活性点、成長速度定数、活性中心の濃度、反応時間)

 

まず、活性点C*の化学的な状態が異なります
ラジカル重合では活性点はC・、即ちフリーラジカル(遊離基)です。活性点C*はカチオン重合ではC⊕、即ちプラスイオン、アニオン重合ではC⊖、即ちマイナスイオンです。

重合の実用上の指標となる反応速度定数kp活性中心の濃度反応時間に関して、3形式に対して表3の値が目安として報告されています1)
これらは厳密な数値ではなく、3形式の特徴をイメージするための概略の数値とご理解下さい。

 

モノマーの種類と付加重合の形式

付加重合に上記3形式があるということは、二重結合を有する付加重合可能なモノマーはすべて3形式のいずれでも重合可能ということではありません。
スチレンは3形式のいずれでも可能ですが、塩化ビニルはラジカル重合のみ可能で、イソブテンはカチオン重合のみ可能です。メタクリル酸メチルのようにラジカル重合もアニオン重合も可能だが、カチオン重合は起きないというモノマーも存在します。
では、あるモノマーがどの形式で重合可能なのかを知るためにはどうしたら良いでしょうか?

この点については既に検討されており、モノマーの共鳴安定化の程度を表すQ値と極性を表すe値を用いて判定できることが知られています。
図1は横軸logQと縦軸eの平面において、3形式がどの領域で可能かを表したものです2)

 

モノマーと重合形式
【図1 モノマーと重合形式2)

 

ということで今回は、高分子重合の種類(分類)と付加重合の基礎知識を解説しました。

次回の連載では、ラジカル重合の概要をご説明します。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) Krzysztof Matyjaszewski, Cationic Polymerizations, Taylor & Francis (1996)
  • 2) 下記を参考に作成
    ・中浜精一ら, エッセンシャル高分子科学, 講談社(1988)
    ・遠藤剛ら, 高分子の合成(上), 講談社(2010)

 

 

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