薬機法の広告規制基準とは?2021年改正のポイントを含め解説
薬機法は、人や動物の健康に関わる医薬品等について幅広く定義している法律です。
今回は、薬機法の中でも、特に違反が指摘されやすい広告規制基準についてご紹介します。
2021年8月に改正されたポイントを含めて、ぜひ確認してみてください。
目次
1.薬機法とは
薬機法は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
2014年以前は「薬事法」と呼ばれていました。
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
薬機法では、上記5つをまとめて「医薬品等」と表記されています。
薬機法の目的と対象
薬機法は、品質や有効性、安全性の確保と保健衛生の向上を目的に制定されています。
また、人や動物の健康に直接的に関わる医薬品等が薬機法の対象です。
なお、医薬品等に含まれない製品でも、医薬品等と誤認されるとみなされる広告表現を用いた場合、薬機法の対象となります。
2.薬機法における「広告」とは?
「広告」の定義は、厚生労働省より下記の通り規定されています。
- 顧客を誘引する(購買意欲を昂進させる)意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
- 上記1~3をすべて満たすこと
医薬品をはじめ、人や動物の健康に直接的に関わる製品の、品質向上や安全性を保つために制定された法律と考えるとよいでしょう。
広告とみなされるもの
規制の対象となる広告方法には、テレビCMや製品のパンフレットなど、広く認知された広告方法以外にも、様々な方法があります。
医薬品等の適正広告基準については、薬正発の局長通知で示されています。
《広告の例》
- 製品の包装やチラシ、パンフレットなど
- マスメディアによる製品の広告
- 新聞や書籍、学術論文などの抜粋
- 製品ユーザーの体験談
- キャッチセールスや相談会など
販売員や営業担当者が口頭で行う説明も広告としてみなされます。
また、具体的な商品名が示されていなくとも、特定商品に結びつくとみなされる場合、広告規制の対象となります。
気がつかぬうちに、広告規制基準に違反していることがないよう、十分に注意しましょう。
3.薬機法広告規制基準
広告規制基準は、薬機法の第66条から第68条で規定されています。
第66条(誇大広告等)
第66条では、主に、誇大広告に関する禁止の規定が定められています。
医薬品等の名称や製造方法、効能・効果・性能に関する、虚偽または誇大な表現の禁止が規定されています。
さらに、医薬品等の効能・効果・性能を医師や歯科医師等が保証していると誤認させる表現も禁止されています。
第66条の対象が、広告主に限らず「何人も」と規定されている点に注意しましょう。
第67条(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第67条では、医師または歯科医師の指導下で使用されるべき、特定疾病用の医薬品または再生医療等製品に関する広告規制を設けています。
厚生労働省令で指定された、医薬品または再生医療等製品に関する広告は、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法が制限されます。
第68条(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第68条は、承認前の医薬品等の名称や製造方法、効能・効果・性能の広告を禁止する規定が定められています。
医薬品等に含まれない製品を、医薬品等と誤認させるような広告表現を用いた場合、承認前の医薬品等として、薬機法第68条違反となる可能性があります。
4.薬機法違反となる広告例
薬機法の広告規制は、度々違反が指摘されています。
思わぬ表現が薬機法違反とならぬよう、基準をしっかりと確認しましょう。
「薬事法ドットコム」から抜粋してご紹介します。
- 第3類医薬品:キャッチコピーとして「美しさを追求するエイジングケア医薬品」
- 一般化粧品:肌のくすみをとる
- 一般化粧品:幹細胞コスメ
- 雑貨(ハーブの香りがする枕):ハーブの香りでリラックス効果が得られます
医薬品を化粧品のような効果の「強調」は、消費者に安易に使用させる可能性があり、違法表現です。
ただし、強調に当たらない文中等で用いることは可能です。
同じ表現であっても、表示の仕方で違法となる場合があるため注意しましょう。
「肌のくすみをとる」という表現は、「肌のくすみを改善する」ことになるため、化粧品の効能の範囲を超えています。
この場合は「くすみのケア」と表現するとよいでしょう。
「幹細胞コスメ」という表現は、化粧品等の適正広告ガイドラインで認められていません。
この場合は「幹細胞化粧品」と表現しましょう。
同じ意味であっても言葉の選び方で広告規制違反となる場合があるため、注意が必要です。
香りの効果として「リラックス」と表現すると、身体に薬理的な影響を及ぼすと取れるため違反です。
この場合、「ハーブの香りがリラックスタイムを演出します」であれば違法にはなりません。
薬機法の広告規制基準は細かく基準が規定されており、一見すると違いが分からないような言葉の差異で、広告規制に違反する場合があります。
また、効果・効能表現は、細かく規定されており、承認された表現以外の表現を用いることは違法です。
5.健康食品は効果・効能広告がNG
健康食品は一般食品として扱われるため、効果・効能をうたった広告表現を用いることはできません。
健康食品で効果・効能をうたう広告表現は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金を課せられる可能性があるため、注意しましょう。
機能性を表示できる保健機能食品
健康食品の効果・効能をうたう広告表現として、保健機能食品制度を活用する方法があります。
- 特定保健用食品
- 栄養機能食品
- 機能性表示食品
保健機能食品は上記の3つに分類されます。
健康食品を取り扱う場合、保健機能食品制度を活用するとよいでしょう。
※保健機能食品については、当連載の「食品表示に関する法規制の概要」で詳しく解説しています。
6.広告規制違反の罰則
広告規制違反の罰則は、第75条(課徴金制度)、第85条(措置命令)で規定されています。
なお、課徴金制度は、売上高重視の傾向を受け、2021年8月の薬機法改正で新たに追加された項目です。
課徴金
課徴金制度は、2021年8月の改正時に新たに追加された罰則制度です。
第66条1項の違反者に対し課徴金を命じる規定が新設されました。
第66条第1項の規定に違反していた場合、課徴金として、違反していた期間の売上額の4.5%に納付命令が出されます。
なお、課徴金額が225万円未満の場合は、課徴金納付命令は出されません。
措置命令
第85条では、第66条第1項、第3項、また第68条の規定に違反した場合、2年以下の懲役、もしくは200万円以下の罰金、またこれを併科するものと定められています。
過去には、過剰な広告表現で、広告主だけでなく、広告代理店の社長や社員が逮捕されたケースもあります。
7.薬機法に違反しないために
広告に携わる人が多数いる場合、社内で共有するガイドラインを作成するとよいでしょう。ガイドラインにそって広告作成することで、経験の浅い担当者でも、安心して広告を作成することができます。
最新情報を収集する
薬機法は、数年ごとに改定が行われている法律です。
「前回は大丈夫だった」内容が、改定されたことで違反となるケースも十分に考えられます。
必ず、最新情報を確認しましょう。
日本アイアールでは、薬機法に関するセミナーも多数開催しています。
独学での情報収集に不安のある方は、ぜひ受講を検討してみてください。
プロへ依頼する
薬機法に精通している担当者がいない場合、プロへ依頼すると安心でしょう。
別途費用はかかりますが、小口から依頼できる専門業者も多くあります。
薬機法の広告規制基準は細かく規定されているため、専門の担当者を設けることが難しい場合は、プロへ依頼するとよいでしょう。
(アイアール技術者教育研究所 S・N)
≪引用文献、参考文献≫
- 1)厚生労働省「薬事法における医薬品等の広告の該当性について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/koukokukisei/dl/index_d.pdf - 2)薬生発0929 第4号「医薬品等適正広告基準の改正について」
https://www.pref.miyagi.jp/documents/28036/tekiseikokokukizyunn.pdf - 3)消費者庁「『機能性表示食品』って何?」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/150810_1.pdf - 4)薬事法ドットコム「薬機法の広告規制とは?違反表現や罰則について解説」
https://www.yakujihou.com/knowledge/kisei/