【医薬品製剤入門】糖衣錠の基礎知識

Pocket

糖衣錠の基礎知識

「糖衣錠」とは、錠剤の周りを糖で覆った錠剤をいいます。
苦みが強い薬やにおいのある薬に用いられることが多く、飲みやすくした剤形となっています。

今回は、糖衣錠の基礎知識についてまとめてみました。

１．糖衣錠とは
２．糖衣錠の特徴（メリット／デメリット）
３．糖衣錠の製造方法
４．糖衣錠に用いる添加物
５．糖衣錠の試験法
６．糖衣錠の医薬品
７．糖衣錠に関する特許・文献の調査
- （1）糖衣錠に関する特許検索
- （2）糖衣錠に関する文献検索

１．糖衣錠とは

日本薬局方では、「経口投与する製剤のうち・・錠剤などでは，・・糖類又は糖アルコール類，高分子化合物など適切なコーティング剤で剤皮を施すことができる．」とされています。

一般的に、糖衣錠は、フィルムコーティング錠の上から精製白糖等の糖類の被膜が施された錠剤をいいます。糖類の被膜の後に行われる艶出し工程によって、光沢のあるきれいな錠剤となります。

２．糖衣錠の特徴（メリット／デメリット）

糖衣錠は、下記のような長所がある製剤です。

苦みや臭いをマスキングできる（※マスキング効果はフィルムコーティングより高いとされています）
水分、光等による分解を抑制する
飲みやすくすることができる　　等々

ただし、糖衣錠には次のような欠点もあります。

高温多湿での保管に向かない
錠剤への水分の侵入が起きやすく、薬物の安定性劣化が生じやすい
製造工程が長く、他の錠剤に比べてコストが高くなる
糖衣の層が厚いものが多く、錠剤が大型化する　　　等々

３．糖衣錠の製造方法

糖衣錠の製法としては、日本薬局方に下記の記載があります。

「1.1. 錠剤
　(2) (ⅵ) 糖衣錠は，通例，素錠に糖類又は糖アルコールを含むコーティング剤で剤皮を施して製する．」

一般的には、糖衣コーティングパンや通気式コーティング装置を用いて、白糖等の糖や糖アルコールを錠剤にコーティングします。

４．糖衣錠に用いる添加物

糖衣錠に用いられる添加剤としては、糖類又は糖アルコールを含むコーティング剤が用いられますが、糖類としては精製白糖が主に用いられます。また、糖アルコールとしては、エリスリトールやマルチトール等が用いられるとされています。

なお、添付文書情報で検索したところ、現在医薬品の中で精製白糖または白糖を用いているものは223製品、エリスリトールは2製品となっていました。

５．糖衣錠の試験法

日本薬局方では、糖衣錠は錠剤に含まれるとして、下記試験法に適合することが定められています。

① 製剤均一性試験法

製剤均一性試験法は、個々の製剤間での有効成分量の均一性の程度を示すための試験法です。
有効成分の含量が、表示量の一定範囲内にあることを確認し、均一性を保証します。

製剤含量の均一性は、含量均一性試験又は質量偏差試験のいずれかの方法で試験されることになっています。
第十七改正日本薬局方6.02に詳細な試験法が記載されています。

② 溶出試験法

溶出試験法は、経口製剤について溶出試験規格に適合しているかどうかを判定するために、また、著しい生物学的非同等を防ぐことを目的としている試験です。
腸溶性製剤、即放性製剤、徐放性製剤などによって試験方法、判定法が定められています。
第十七改正日本薬局方6.10に詳細な試験法が記載されています。

③ 崩壊試験法

崩壊試験法は、糖衣錠が試験液中で定められた条件で規定時間内に崩壊するかどうか否かを確認するための試験法です。
製造工程のバラツキが小さいことを確認するための品質管理が主目的としています。
第十七改正日本薬局方6.09に詳細な試験法が記載されています。

６．糖衣錠の医薬品

添付文書情報で、糖衣錠を調べてみると、以下のようになりました。

種類：糖衣錠
医薬品数^(*)：227件
主な医薬品：「アリナミンＦ糖衣錠」「アゼラスチン塩酸塩錠」「アロチノロール塩酸塩錠」「イブプロフェン錠」「エペリゾン塩酸塩錠」「ジピリダモール錠」「ジフェニドール塩酸塩錠」「センノシド錠」「トコフェロール酢酸エステル錠」「ニカルジピン塩酸塩錠」「ファモチジン錠」等々多数

^(*)医薬品数はジェネリック医薬品なども含みます。