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パラジウム炭素(Pd-C)触媒は、有機合成反応に多く使用されている触媒のひとつです。
乾くと発火しやすいなど取り扱いに注意を要するものの、均一系触媒に比べて安価で、パラジウムのリサイクル方法が確立されているなどから工業的にも多く用いられています。
今回は、Pd-C触媒反応に関連する化学反応や医薬品をご紹介いたします。
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「Pd-C触媒」は、活性炭を担体として、その表面にPd触媒を担持させたものです。
Pd触媒の担体としては活性炭の他、アルミナ、シリカ等々がありますが、活性炭は非常に大きな表面積を有し、Pdを高分散させることから、反応場として極めて優れているとされています。
Pdの担持状態も触媒活性に大きな影響を与えるとされており、例えば、水素添加反応では、一般的にPdを高分散させたuniform型が高活性を示すとされています。
その他、eggshell型、thickshe11型があり、さらに物性により細分化されています。
また、Pd/C-エチレンジアミン複合体触媒[Pd/C(en)]などの機能性パラジウム触媒が開発され、選択的還元反応の報告もされています。
さらに、Pd/Cは、鈴木-宮浦カップリングをはじめとする数種類のカップリング反応を触媒することが報告されています。
[※関連コラム:鈴木-宮浦カップリング反応の解説はこちら]
Pd-C触媒反応は、活性炭にパラジウムを担持させた触媒を用いた還元反応で、オレフィンからアルカンへの水素化、ニトロ化合物から一級アミンへの還元、ベンジル基の脱保護、アルデヒド・ケトンからのアルコール合成などが挙げられます。
反応機構としては、水素分子がPd/Cの表面に付加し、二重結合からの求核付加反応が進行します。
反応は固体上で進行するため、水素は化合物の同じ側、すなわちsyn付加が起こります。
Pd-C触媒を用いた反応で医薬品に関連する報告をいくつかご紹介いたします。
ニューキノロン系の抗菌剤で、皮膚感染症、呼吸器感染症、泌尿器感染症などの感染症治療に使用される薬です。細菌のDNA複製を阻害することにより、殺菌作用を示します。
レボフロキサシン製法工程中、ニトロベンゼンの還元にPd-C触媒反応が用いられており、最終的にピリドベンゾキサジン骨格を構築しています。
選択的 α1受容体刺激薬で、化合物としては、フェニレフリンアドレナリンより OH 基が1個少ない化合物となっており、アドレナリンに似た作用を示すとされいます。
ケトンの還元にPd-C触媒反応が用いられていますが、同時にベンジル基も脱離しています。
部分作動薬活性を有する非選択的β遮断薬で、血圧、心拍数などを抑える薬です。本態性高血圧症や狭心症等に用いられています。
Pd-Cによる脱水素反応により4-ヒドロキシインドールを合成しています。
Pd-C触媒は、脱保護にも用いられており、特許や文献に見受けられます。
J-PlatPatを用いて、Pd-C還元反応について簡易的な検索をしてみました。(調査日:2021.11.4)
パラジウム触媒に関するFIとしては、B01J23/44[(B01J: 化学的または物理的方法,例.触媒またはコロイド化学;それらの関連装置[2])グループB01J21/00に分類されない,金属または金属酸化物または水酸化物からなる触媒 ・貴金属に関するもの[2] ・・白金族金属に関するもの[2] ・・・パラジウム[2]]がありますので、これを用いて検索してみます。
これらの中には、「カンプトテシン誘導体およびその調製方法並びに用途」「エゼチミブの製造方法」「カプロラクタム製造のための触媒的脱アミノ化」「α-トコフエロ-ルの製造方法」などの特許がヒットしました。
JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」を用いて、Pd-C還元反応について簡単に検索してみました。(調査日:2021.11.4)
ざっと内容を見たところ、「Pd触媒反応を鍵とする神経栄養因子様物質ジアジフェニンの形式合成」などの文献が見受けられました。
以上、今回は「Pd-C触媒反応」についてご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)