3分でわかる技術の超キホン いま話題の「PCR検査」とは?基本原理・種類・特徴など早わかり解説

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PCR

新型コロナウイルスが世界中に大流行してしまい、亡くなった方も多く、大変残念なことになっています。

この新型コロナウイルスの検査方法として、「PCR検査」というものが用いられていることは連日のニュースでも報じられているところではありますが、今回は、PCR検査について取り上げてみることにします。
PCR検査に用いられている方法は、「PCR法」といわれています。

PCR法とは?

PCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction PCR)といい、DNAを増幅するための原理またはそれを用いた手法のことをいいます。「核酸増幅法」ともいわれます。

特定の DNA 断片だけを選択的に、また、極めて微量な DNA から増幅でき、さらに、増幅に要する時間が 2 時間程度と短時間で行えるという特徴を持っています。
PCR法により、短時間でウイルス感染の有無を調べるできるようになっています。

なお、新型コロナウイルスは、DNAを持たないRNAウイルスですので、RT-PCR法という方法を用いてDNAを作成したのち、PCR法で増幅を行います。

 

PCR法の基本原理は?

PCR法は大きく次の3つの段階より成り立っています。

(1)DNAの一本鎖への解離(熱変性Denature)

検体を93~95℃の条件に置くことによって、検体中のDNA(鋳型DNA)2本鎖を1本鎖へ解離(熱変性)させます。通常は、94℃30秒で充分とされています。

(2)プライマーのアニーリング(Annealing)

検査対象(例えばコロナウイルス)のDNAの断片(プライマー)を加え、約55~65℃(プライマーのTm値付近)まで冷却することにより、プライマーを標的DNAの隣接領域に結合させます。
このプライマーは、検査対象(ウイルス)のDNAに特有の断片を用います。
※Tm(melting temperature)値とは、2本鎖DNAの50%が解離して1本鎖になる温度です。

(3)DNA鎖の伸長(Extension)

DNA 鎖を合成する酵素であるDNAポリメラーゼの最適温度域の72℃まで温度を上げ、1本鎖DNAをプライマーを起点にして、伸長複製する連鎖的複製酵素反応によって複製DNA(2本鎖)を作成します。通常伸長反応は1分程度です。

さらに、(1)~(3)のサイクルを繰り返すことにより、DNAは1サイクル毎に2倍に増幅します。
PCR法では、この操作を25~40サイクル繰り返します。
20サイクル後には理論的に100万倍、30サイクルで10億倍にまで、目的のウイルスだけが持つDNAを増幅させることができます。

このようにして得られたPCR増幅産物を、アガロース電気泳動で分画し、染色、UV照射・写真撮影を行い、目視で確認します。
なお、プライマーの設計は自由に行うことができますので、PCR法を用いることで、微量のDNAから特定のDNA領域のみを、迅速、かつ、簡便に増幅させることができます。

ちなみに、PCR法は、1988年に耐熱性のDNAポリメラーゼが導入されたことで実用化されました。この耐熱性のDNAポリメラーゼは、イエローストーン国立公園の火山性熱泉に住む微生物から単離されたものです。

 

PCRに必要な主なものは?

① プライマー

鋳型DNAに特異的な18~30塩基ほどの相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドです。
すなわち、ウイルス等病原体に特有のDNA断片です。
増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーの2か所を一対として設定します。
プライマーを含むこの間が増幅されることになります。

② 試薬キット

プライマーと検体(鋳型DNA)以外に、検査に必要なものとしては、酵素:DNAポリメラーゼと基質(4種の塩基:dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5-9.5)を保持するバッファーが必要です。
これらのPCR検査に必要な試薬(プライマーと鋳型DNAを除く)は、すべて装備された試薬キットが市販されています。

③ サーマルサイクラー

PCRでは、変性温度、プライマーとのアニール温度、伸長反応温度の保持と3段階の温度が必要で、これらを1サイクルとした温度の上昇・下降を素早く移行する必要があり、その装置をサーマルサイクラーといいます。
DNAポリメラーゼの酵素特性を活かすためには機器の温度作動は急速さが求められるのです。

④ クリーンベンチ簡易型

試薬の調製、混合時における増幅産物のキャリーオーバーによる汚染防止策としてクリーンベンチは必須ですが、卓上型の簡易なクリーンベンチで充分とされています。

なお、コロナウイルス(2019-nCO)の病原体検出マニュアルが、国立感染症研究所より公表されています。
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV20200319.pdf

 

PCR法の長所と短所

PCR法の長所(メリット)としては、

  • 簡便かつ短時間で特定のDNA配列を増幅させることができる。
  • 病原体が死滅していてもDNAが残っていれば増幅できる。
  • 一度に多量のサンプルをPCRに用いることができる。
  • ごく少量の標的DNAでPCRを行うことができる。
  • 実験の再現性が高い。
  • 病原体が異なっていても、検査の基本は同じである。

などが挙げられます。
 

一方、PCR法の短所(デメリット)としては、

  • 実際の増幅の途中で、反応阻害物の生成などにより効率が低下するため、増幅には限界がある。
  • 臓器、組織などの生体材料を用いる場合は、前処理によって検出率が異なり、結果が陰性であっても病原体の存在を否定できない。また、血液・糞便の場合は阻害物質の影響を受けることがある。
  • プライマーが絶対的に必要であり、一般的には1対のプライマーで挟まれた領域のDNA以外を増幅させることはできないことになる。すなわち、プライマーを設計するためのDNA配列が既知であることが大前提となる。
  • PCRでは初期DNA量に関して定量性がない。初期DNA量を定量したい場合は、リアルタイムPCRによる定量PCRで定量することができる。
  • コンタミしたDNAに1対のプライマーが結合できる領域があると、そのDNAまで増幅してしまうことがあること。

などが挙げられますが、PCRの結果だけで病原体を同定することは不可能で、技術的限界から陰性の証明はできないことに留意すべきとされています。

 

PCR法の種類はどんなものがある?

PCR法にはいくつかの種類があります。通常のPCR法(Conventional PCR)以外の代表的なものを挙げます。
 

① リアルタイムPCR(Real-time PCR)

この方法は、ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) による増幅を経時的(リアルタイム)に測定することで、増幅率に基づいて鋳型となるDNAの定量を行なうものです。
蛍光色素を用いて行われることが特徴で、その方法もいくつかに分けられます。
従来のPCRよりも感度の高い、かつ、迅速なものとされています。
 

② RT-PCR 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)

通常、PCR法はDNAを対象にしますが、RNA しか持っていないウイルスなどの場合は、RNA を逆転写によって cDNA に変換し、その cDNA に対して PCR法を行う方法です。
コロナウイルス、レトロウイルスなどの検出に用いられます。
 

③ マルチプレックスPCR(Multiplex PCR)

遺伝子の中から欠失や重複を検出するのに用いられる方法です。
複数のプライマーとDNAポリメラーゼで増幅させることで、一度に複数のゲノム領域を増幅対象とすることができます。

PCR法は、DNAポリメラーゼの改良や試薬の性能向上、および機器やプラスチック容器の進歩にともない、年々進化してきています。

 

PCR検査と抗体検査との違いは?

抗体検査が過去に感染したことがあるか(抗体ができているか否か)を調べるのに対して、PCR検査は、現在ウイルスが体内に存在しているかを調べるものです。

また、抗体検査は血液を検体とするのに対して、PCR検査は痰、血液、糞便、気道分泌物、体液などでも検査すること可能です。さらに、抗体検査よりもPCR検査のほうが精度が良いとされています。ただし、抗体検査が短時間(10~20分程度)であるのに対して、PCR検査は少なくとも2時間程度を要します。

 

幅広い分野に応用されているPCR法

PCR法は、分子生物学、基礎医学、遺伝学、育種学、薬学の他に、臨床診断、犯罪捜査、考古学などの幅広い分野で応用されています。

検査薬 感染症等の病原体(細菌、ウイルス)遺伝を特定して、感染の有無を確認する感度の高い有用な手段となっています。例えば、クラミジア、淋菌、結核菌などの感染症が挙げられます。2003年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)も検査対象になっています。(インフルエンザはPCR法ではなく、イムノクロマト法(免疫測定法)が用いられています。)
なお、新型コロナウイルス感染症の診断のためのPCR検査は、2020年3月より保険適用となっています。
遺伝子検査法 生活習慣病になる前の遺伝子リスクを調べることができます。
遺伝子組み換え ある生物から取り出した遺伝子を別の生物の遺伝子に組み込む際に、PCRの技術が使われることがあります。
DNA鑑定 犯罪捜査の犯人の特定、親子関係の判定にも用いられています。

 

PCRを発明したのは誰?

PCRの原理を発明したのは、アメリの下のバイオ企業「シータス社」(Cetus)の研究員だったカリー・マリスで、彼は後にベンチャー企業としては初のノーベル化学賞を受賞しています。

ただ、マリスはPCRに関する最初の概念の論文をNature誌に投稿するも拒絶されてしまい、この論文は陽日の目を見ることはありませんでしたが、後日協力者によって実験で実証したことで、Science誌に発表されました。

 

PCRに関する特許はどうなっているのか?

PCRの特許は、1985年3月に最初の特許がUS特許庁に出願されました。
USの特許番号は、US4683202で、対応する日本特許は、特公平4-67957として成立、さらに分割してキットの特許もありましたが、いずれも期間満了になっています。

出願はシータス社が行ったのですが、後にロシュ社(Roche)がシータス社からウイルス診断用として、PCRに関する特許全てを買い取っています。

 

PCR法に関する特許検索

特許データベース”j-PlatPat”で、PCR法について日本特許の検索を行ってみました。
(※2020年5月時点における検索結果です。)
 

特許請求の範囲を対象とするキーワード検索をしてみると

  • [PCR法/CL+PCR検査/CL]  ⇒1193件

がヒットし、RT-PCR法や病原性微生物の核酸検出方法などの特許が検出されました。
 

また、特許分類コードとしては、
FI は、ポリメラーゼ連鎖反応[PCR]として、”C12Q1/686″が、
またFタームは、試薬としての酵素、DNA、RNAポリメラーゼとして、テーマコード”4B063QR08″があります。

  • [C12Q1/686/FI]  ⇒3,312件
  • [4B063QR08/FT]  ⇒14,097件

いずれも3,000件を超えるボリュームでヒットしますので、調査の目的によって、さらにキーワード等で限定して検索する必要があります。
ご興味のある方は、ぜひご自身で検索してみてください。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


バイオ関連技術の特許調査・文献調査は日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


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