3分でわかる技術の超キホン 有機ELの発光原理と発光材料

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有機EL

有機エレクトロルミネッセンス(organic electro-luminescence, OEL)は発光を伴う物理現象で、これを利用する素子は有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode, OLED)と言われます。その素子の発光層は有機化合物からなります。
高輝度薄型ディスプレイの激しい開発競争の中、高発光・高効率な発光材料の開発が盛んに行われています。
このコラムで有機ELに関する発光原理と材料の基礎知識を概説します。

1.有機ELの発光原理

まず、有機ELの発光原理を説明します。

陰極と陽極に電圧をかけることにより電子と正孔を注入します。注入された電子と正孔がそれぞれの電子輸送層、正孔輸送層を通過して、発光層で結合します。この結合によってエネルギーが放出されます。
そのエネルギーによって、発光層の発光材料が励起されます。この励起状態から再び基底状態に戻る際に発光します。

励起一重項からそのまま基底状態に戻る発光が「蛍光」であり、一重項状態から三重項状態を経由して基底状態に戻る際の発光を「燐光」と呼びます。

発光素子の発光原理
[図1.発光素子の発光原理]

 

2.有機EL素子の基本構造

EL素子の基本構造には陰極、陽極、正孔と電子の輸送層及び発光層があります。
陰極にはアルミニウムや銀/マグネシウム合金、カルシウム等の金属薄膜を、陽極には酸化インジウムスズと呼ばれる透明な金属薄膜を使います。
発生した光は反射面で反射され、透明電極と基板(ガラス板やプラスチック板など)を透過します。

有機EL素子の構造
[図2.有機EL素子の構造]

 

3.有機EL発光材料の開発

有機ELの発光材料は、その発光原理から蛍光材料燐光材料に分けられます。

(1)蛍光材料

有機ELの研究は蛍光材料から始まりました。
アントラセンやペリレンなどの色素を含む高分子薄膜に高い交流電圧を印加すると、発光します。
材料の精製、デバイスの製造、寿命などの面でメリットを有しますが、高いエネルギーが必要です。

蛍光材料は、更に低分子材料高分子材料に分けられ、デバイスの作成においてそれぞれの特徴を持ちます。

低分子材料は、主に真空蒸着を使用して、有機材料の薄膜化、積層化が可能なメリットを生かしてデバイスを作成しています。製造技術の複雑化がデメリットです。

高分子材料は、印刷技術を利用して、大量、安価、大型の有機ELデバイスを容易に生産できます。
デメリットは層間の材料同士が溶解しやすいことです。そのため単層あるいは少数の層の素子構造しかできません。多機能には分子設計の工夫が必要されます。
 

(2)燐光材料

最初の燐光性EL材料は、図3に示した白金錯体の研究から始まりました。
燐光は高発光、高効率の発光材料として期待されており、様々な発光性有機金属錯体が開発されています。
例えば、図4に示しているキノリノラト錯体(Al)と、それが実際に使われる2層EL素子の構造です。

オクタエチルポルフィリナト白金錯体と
[図3.オクタエチルポルフィリナト白金錯体]

 

キノリノラト錯体の構造と実際に使われる2層EL素子の構造
[図4.キノリノラト錯体の構造と実際に使われる2層EL素子の構造]

 

燐光材料は発光効率などの面でメリットがありますが、励起種の環境に大きく依存しており、消光も発生しやすく、寿命と精製においてデメリットがあります。しかし、この特徴を利用して、酸素センサーなどのセンシング材料として使える可能性があります。

また、強い発光を示すため、発光性集積型金属錯体の研究も近年注目されています。
1つの分子又は錯体ユニット中に複数の金属イオンを含む多核錯体を「金属クラスター錯体」あるいは「集積型金属錯体」などと呼ばれます。
最近では、合成法の進歩により、発光性に優れた混合金属多核錯体の合成も報告されており、その更なる展開が期待できます。

光物性と発光機構の解明などの基礎的な研究についても、これから進んでいくと思われます。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)
 

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