電気・電子

《次世代の半導体製造法?》ナノインプリント技術とは

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半導体製造方法

「産業のコメ」と呼ばれる半導体。
かつて日本は世界の半導体市場を支配していましたが、今その力を失っています。
日本はこの状況を打開できるのでしょうか?打開に有効な技術が準備できているのでしょうか?

1.日本の半導体産業の競争力低下

図1は世界の半導体市場の1988年と2019年の比較です。
日本の市場占有率は約50%から約10%にまで大きく低下してしまいました。この間に日本の半導体売り上げ自体は約220億ドルから約430億ドルにまで増加していますが、国際競争力が低下したことになります。
将来的にはほぼ0%になるのではないかとも懸念されている状況です。
経済産業省はこの状況を「凋落」と表現しています。

世界の半導体市場の変化
【図1 世界の半導体市場の変化1)

 

2.世界最先端の半導体(最小線幅)

日本の凋落の間に半導体の高性能化は進みました。
半導体の性能の指標として回路の最小線幅がよく使用されます。
それだけで半導体の性能が決まる訳ではありませんが、最小線幅は直感的に分かりやすい指標です。

1990年頃は最小線幅を1μm以下、即ちnm(ナノメーター)のオーダーにするための技術開発にしのぎを削っていましたが、2000年代初頭には100nmの壁が破られました。その後も更なる微細化が続いています。

さて、現在最先端の半導体の最小線幅は何nmでしょうか?
どの国の企業がその半導体を製造しているのでしょうか?

答えは 5nm です。
台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)と韓国のサムスンの2社が製造しています。この2社のみです。

図2はTSMC製半導体の最小線幅の推移を示したものです。
またTSMCは今年中に最小線幅3nm品の量産を開始すると報じられています。

TSMC製半導体の最小線幅の推移
【図2 TSMC製半導体の最小線幅の推移2)

この最先端の微細加工技術を支えているのが、波長13.5nmのEUV(極端紫外線)を用いる露光装置です3)
半導体の微細加工には、半導体表面の感光性樹脂に紫外線露光装置を用いて回路パターンを転写する工程が必須であり、最小線幅が5nmレベルでは使用する紫外線の波長も極端紫外線が必要になります。
なお、このEUV露光装置を製造できるのはオランダのASML社のみという状況です。

 

3.日本の半導体戦略[ビヨンド2nm、実装3Dパッケージ]

経済産業省は、日本がこの状況を打開して世界の半導体市場で再浮上するための半導体戦略を、2021年6月に発表しています。その中で、戦略的な開発項目として以下の2点を掲げています1)

  • ビヨンド2nm:最小線幅2nm未満の微細加工技術の開発
  • 実装3Dパッケージ:半導体の3次元化実用化技術の開発

日本は半導体製造において台湾や韓国に後れをとっても、半導体の製造装置産業や素材産業においては強みを維持しているので、この強みを上記①②の開発に有効活用するとの方針も掲げています。

 

4.ナノインプリント技術とは?

上記①の技術が開発可能なのかどうかが気になるところですが、その候補として有力視されているのがナノインプリント技術です。

「ナノインプリント」とは、凹凸のパターンを持つテンプレート(版)を基板上の液状ポリマーに押し付けてパターンを転写するものです。簡単に言うとハンコを押すイメージでnmオーダーのパターンを形成する技術であり、1995年にミネソタ大学のチュー教授により提唱されました4)
日本では、次世代の半導体微細加工法として位置付けて大日本印刷キオクシアキヤノンが共同開発中であり、世界をリードしています。

図3-1および図3-2は、従来型の微細加工法(現在最先端の最小線幅5nmの微細加工も従来型です)とナノインプリント法とを、大日本印刷の発表に基づいて比較したものです5)

従来型の微細加工法
【図3-1 従来型の微細加工法 ※引用5)
ナノインプリント法
【図3-2 ナノインプリント法 ※引用5)

 

ナノインプリント技術のメリット

ナノインプリント法では、従来型の微細加工で必要な薬液による現像工程が不要であることが分かります。
ナノインプリントではこれらプロセスの簡略化により、低コストかつ低消費電力での製造が可能となります。
従来型の微細加工では、微細化が進むほど消費電力が増加する傾向にあり、EUVを用いた最小線幅5nmのウェハ1枚の製造に一般的な家庭の約4ヵ月分の電力を消費するとも言われています。
ナノインプリント法には、最小線幅を微細化するポテンシャルに加えて、消費エネルギーをEUV使用時の約1/10まで下げる効果も期待されています。

 

5.日本の半導体、再浮上に向けて

ナノインプリントには、現時点では、パターン欠陥等の解決すべき問題がまだ残されているとされます6)
課題が克服されて ①ビヨンド2nm が達成され、また ②実装3Dパッケージ も完成して、日本の半導体が早期に再浮上することを願うものです。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


 

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