スラリーの挙動と制御およびリチウムイオン電池電極スラリー化技術と評価方法
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電気自動車へのシフトが進行する中で、今後の二次電池の主役とされるリチウムイオン電池(Lithium Ion Battery = LIB)市場が図1に示すように急拡大しています1)。この傾向は今後も続くと予想されています。
【図1 LIBの市場規模(世界)の推移】
LIBでは、後述のように、Li, Co, Ni等の金属が使用されています。LIBの需要急増に伴って、これら金属の需要も2040年には2020年⽐でLiが約13倍、Coと Niは約6倍に増加すると⾒込まれています。この増大する需要を満たすためには、これら金属のリサイクルも必要になります。
リサイクルに向けた技術開発はどこまで進んでいるのでしょうか?
目次
まずLIB の基本をおさらいします。
LIBはエネルギー密度が約150Wh/kgと、鉛蓄電池の約50Wh/kgよりもはるかに高いのが特長です2)。
LIBの構造を図2に示します1)。
リチウムイオンLi+が充電および放電時に電極間を移動します。
【図2 LIBの構造 ※引用1) 】
LIB用金属のリサイクルには図3のプロセスが想定されています3)。
使用済みのLIBを無害化処理して、まず電池粉(ブラックマス)を得ます。
これをa) 湿式製錬(図3上段)又はb) 乾式製錬+湿式製錬(図3下段)することにより、正極用金属のLi, Co, Niを回収するというプロセスです。
経済的に成り立つためには、高品質の金属を高収率かつ低コストで回収することが課題となります。
【図3 LIB用金属のリサイクルに想定されるプロセス ※引用3) 】
ベルギーのUmicore社は、使⽤済みLIBのリサイクルにより、含有する⾦属を正極材に加⼯して最終的に新しい電池材料にするなど、独⾃技術をもとに閉鎖型リサイクルモデルを確⽴して推進中であるとされています1)。
中国のBRUNP社は、電池製造・消費・リサイクルの循環を有機的に統合することにより⾼い総合収率を実現し、2027年完成を⽬途に⼤規模な⼯場建設を計画中とされています。
ただし、両社とも、採用された具体的なプロセス、および品質・収率・コストは明らかにされていません。
正極用材料であるニッケル酸リチウム(LiNiO2)メーカーとして世界最大手の住友金属鉱山株式会社も、使⽤済みLIB からの金属リサイクルの検討を進めています4)。
同社は、NiとCoのリサイクルに関してパイロットプラントによる検証を完了したと2021年9月に発表しています。更に2022年1月にはスラグから高純度Liを回収する技術を関東電化工業株式会社と共同で開発し、ベンチスケールで確認したと発表しました。
(※循環系のイメージについては、住友金属鉱山株式会社のプレスリリースをご参照ください)
Liについても22年度中にパイロットプラントを設置する計画だとしています。この高純度Liは正極および電解液の両者の原料として想定されています。
経済産業省は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたグリーンイノベーション基金事業の一環で、LIB用金属のリサイクル技術の開発を支援すると表明しています3)。
競争力のあるコストで、蓄電池材料として再利用可能な品質でLi70%、Ni95%、Co95%を回収する技術の確立を目標に掲げ、上限1,510億円を国費負担するとしています。
海外も含めて、コスト・品質・収率をすべて満足するリサイクル技術はまだ確立されていないとみられます。
この分野への新規参入の報道が現在も続いている状況です。今後さらに開発競争が激化すると予想されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)
《引用文献・参考文献》