《実験順序》乱塊法と分割法をわかりやすく解説

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直交配列表と実験の順序

今回は、実験を実施する際の順序について、「乱塊法」と「分割法」の概要を説明します。

 

1.乱塊法

乱塊法」とは、実験全体を無作為化せず、フィッシャーの局所管理の原則に基づいてブロック因子を導入し、ブロック内で比較したい水準のすべての組み合わせを無作為化して実施する方法です。

 

ブロック因子

ブロック因子」とは、その水準自身は特性値に影響を与える可能性があっても、他の因子とは交互作用を持たないと考えられる因子で、もともとは農業試験場の畑の区画(ブロック)の環境の差によって生じる作物の育ち方への誤差を排除する考え方でした。
原料ロット、実験日、作業者など、実験の目的上、最適水準を求めることに意味がないけれど誤差を生じうるとわかっているものを設定します。要点は以下の通りです。

  • 実験日、作業者などが異なる場合に、これらによる系統誤差をブロック因子として取り除いて実験精度を高める
  • 実験全体をいくつかのブロックに分け、ブロックの中で実験順序をランダムに決めて行う
  • 要因効果とあわせて、ブロックの違いによる効果もわかる

 

乱塊法の適用例

乱塊法を、この連載コラムで何回か登場している鰹節のだしを取るときの最適条件を見つける実験に適用してみましょう。
鰹節の実験では、表1左側のように温度3水準、時間2水準の6つの組み合わせで2回繰り返し実験をしたいところですが、味覚試験の評価者の疲れなど生理変化により、1日にできる実験回数に限界があります。

そこで、乱塊法を用いて実験日をブロック因子として組み込み、右側のように1日ごとに6つの組み合わせすべてをランダムな順序にして実験をします。

 

【表1 鰹節のだしを取るときの最適条件を見つける実験】
鰹節のだしを取るときの最適条件を見つける実験

 

もし実験日ごとにすべての組み合わせを入れないと、水準による違いと、実験日による違いの区別がつきません。乱塊法では、実験日ごとにすべての組み合わせが入っているので、要因効果が調べられるとともに、実験日による系統誤差を排除できます。実験日ごとに違いがある場合は系統誤差として検出もできます。
その他にも、複数の評価者で評価を行う場合、評価者もブロック因子とすることができます

 

2.分割法

実験順序を無作為化すると、実験のたびに因子の水準を変更しなくてはいけません。
また、この連載コラムの第3回( 実験の原則「無作為化」と「繰り返し」 )で、繰り返しのある実験では、「実験のたびに水準の設定を行い、実験を1回行うごとに初期状態に戻してから実験を行うことが原則」と説明しました。

しかし実際の実験を考えた時にどうでしょうか。例えば・・

  • サンプル製造用の加熱装置の温度の変更は時間がかかりすぎるので、同じ温度の実験はなるべく一緒に行いたい。
  • 1つの原材料から化学反応で中間体を作製して、その後に添加剤の種類や加熱時間などの条件を設定して、最終反応物を作りたい。

時間や労力がかかりすぎたり、中には水準の変更が難しい因子もあるので、分割法は水準変更が難しい因子を1次因子として水準を固定し、2次因子の水準を変更することで、無作為化に伴う実験の負担を軽減する際に用いられます。

 

分割法の適用例

例えば、表2のようなサンプルを製造加工・評価する際に、実験日を因子として考え、サンプル製造用の加熱装置の温度を1次因子、加熱時間を2次因子とします。

1日目の実験において、温度の水準の順序を80℃→100℃→120℃で無作為化し、80℃の実験の中で、20分→40分の順序を無作為化、同様に120℃・100℃の実験の中で時間水準を無作為化します。
2日目の実験においても同様に無作為化します。
分割法により、1日あたりの加熱温度の設定は3回で済みます。

 

【表2 サンプルを製造加工・評価する実験】
サンプルを製造加工・評価する実験

 

なお、乱塊法や分割法は、完全ランダムでデータを取るわけではありません。
実験全体をランダム化した実験データとは異なる解析をする必要があります。

 
次回は、実験データの分析から結果検証までのポイントを解説します。

 
(日本アイアール株式会社 H・N)

 

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