英文特許明細書で英語を学ぶことが有効
英語を学んで論理力を鍛える
学習科目によって文章の書き方は違います。
理科実験のレポートは「見たまま、ありのまま」をに書くことで、情感が入り込む余地はありません。
社会科のレポートは、与えられたテーマに対して、筋道を立てて分析し、自分の考えを述べていきます。
国語の作文は、時として情感ある文章で読み手を引き込む文才が求められるでしょう。
小・中・高の段階で、こうした書き方の違いを意識した教育を適切にすることで、目的に応じた文章を書けるようになるかもしれません。
外国語の勉強は、日本語の特性を理解するには有効と考えられます。
日本語は文化色の強い「情感」の表現には向いていますが、「論理的表現」にはあまり向いていないとも言われます。外国語の中でも特に英語は「論理的表現」に適した構造をもっているので、論理力を鍛えるには英語を学ぶのが手っ取り早いです。
いま学生の論理力の無さが問題になっています。
たとえば、理工系大学で使われている英語の教科書に「米国特許明細書(*)」を使ってみる、といアイデアはどうでしょうか?「米国特許明細書」は極めて論理的に構成(展開)されており、その文章も明快に記述されていることが多いため、論理力も向上するはずです。
さらに、最新技術情報の宝庫である「米国特許明細書」を読むのに抵抗感が無くなります。筋の良い研究開発テーマを見つけるためにも、世界の最新技術を日常的に学ぶ姿勢はとても重要です。
また、英文の構造に慣れてくれば、「英語に転換しやすい日本語」を日頃から意識するようになります。
阿吽の呼吸を期待した「曖昧日本語」でなく、英語へ翻訳しやすい「平明日本語」で書けば、機械翻訳ソフトの支援も得られます。
この繰り返しで、いつの間にか英語力が向上します。
いま、英語が苦手であっても悲観することはありません。
日本人としてのアイデンティティを失わない
世界に向けて「物・事・考え」を伝えようとするなら、論理的に筋道つけて説明しないと、理解を得ることはできません。
誤解されると困るのですが、論理性と「人間としての正しさ」は必ずしもイコールではありません。
論理的にものごとを考え、表現する根元の所に「人間としての正しい心」がなければ、論理的に怪しげなシステムを考え出し、論理的にとんでもない戦略を立案し、論理的に嘘をつく行いが横行することになります。論理的思考と表現能力を身につけることは、人間としての質が向上することを意味するものではありません。
しかし、世界の中でそれなりの役割を果たすためには、「面倒だけれど」論理性を身につける必要があるということは理解しておく必要があります。その中で、日本人としての「アイデンティティ」を失わないようにして欲しいです。
グローバルな環境で英語で戦う戦士たちが深い経験を積み、かつ、日本人であることを忘れないことで、我々の日本的な生き方や価値観を英語で表現していく場面が増えていくと期待しています。
日本人としての「アイデンティティ」は見失ってはならない、まず正しい日本語を身につけよう、そして英語の力を高めよう、と相反するようなことを要求することになりますが、それは日本人として克服しなければならい課題だと思います。
自らの課題を認識できない技術者は会社内での存在価値は低くなる
この連載は、研究開発部門へ新しく配属された技術者の皆さん、理工系の学生さんが知的財産に関心が持てるように工夫したつもりです。
知的財産の基礎知識に関する書籍は多く出版されており、ネットからでも勉強できる環境にあります。
この連載は、「知的財産を生産しているのは自分であり、その保護と活用も自分の仕事である」という認識を改めてもって頂くのが狙いでした。特に研究開発部門へ新しく配属された技術者の皆さんにとって、これから知的財産と向き合っていくにあたっての「考え方」で、何かヒントになることがあれば嬉しいです。
自分の研究成果を特許として出願するには特許出願に関する基本知識は必須です。 一方、ノウハウ技術として秘匿する守秘技術の管理と運用知識も必須となります。また、他者との共同研究における規定(ルール)も知っておかねばなりません。
研究開発部門のリーダーは、部下の特許出願の指導や、発明技術の評価、他社の特許に対する技術見解のアドバイス等の機会が多数あります。知的財産に関わる仕事を、確実に推進していく責任があります。
知的財産は、生産したその人の実力を証明する履歴書です。
知財は技術者のためにある! (知財部門のためにあるのではない!)
このことを、しっかりと「アタマ」に入れておけば、知的財産がもっと身近になるはずです。
会社を元気にするのは、技術者の「知財力」です!
いくら素晴らしい新技術を生み出しても、会社の利益に繋がる価値のある特許にするか否かは、技術者が持つ知的財産の知識と意識で決まります!
(日本アイアール 知的財産活用研究所 N・Y)
※知財教育については、日本アイアール・知的財産研修センターのサイトもご参照ください