静電気測定器の種類と選び方|表面電位・電荷量・抵抗・除電性能は何で測る?

製造現場では、静電気によってさまざまなトラブルが発生します。
電子部品では静電気放電(ESD)による故障や性能劣化、フィルムや樹脂製品では異物やほこりの付着、製造ラインでは搬送不良や吸着などが問題になることがあります。こうした静電気トラブルへの対策を行うには、まず「どこに、どの程度の静電気が発生しているのか」「静電気がどのような状態にあるのか」を把握することが重要です。
ただし、「静電気を測る」といっても、測定する対象は一つではありません。
対象物の表面電位を測る場合もあれば、周囲の電界強度、対象物が持つ電荷量、材料の電気抵抗、あるいはイオナイザの除電性能を評価する場合もあります。静電気に関する測定では、目的によって使用する測定器が異なります。IEC 61340シリーズでも、静電気に関するさまざまな測定方法や評価方法が規定されています。
本記事では、代表的な静電気測定器の種類と、それぞれが「何を測るための機器なのか」を整理し、用途に応じた測定器の選び方を解説します。
1.静電気測定器は「何を測りたいか」で選ぶ
(1)静電気測定では複数の物理量を扱う
静電気測定器を選ぶ際に、最も重要なのは「何を測りたいのか」を明確にすることです。
「静電気を測る」といっても、実際には表面電位、電界強度、電荷量、電気抵抗、イオナイザの性能、材料の帯電減衰特性など、評価する対象はさまざまです。
代表的な測定対象と使用する測定器を整理すると、次のようになります。
- 対象物の表面電位 ⇒ 表面電位計
- 特定位置の電界強度 ⇒ 電界強度計
- 対象物が持つ電荷量 ⇒ クーロンメータ/エレクトロメータ
- 材料や設備の電気抵抗 ⇒ 表面抵抗測定器・高抵抗計
- イオナイザの除電性能 ⇒ チャージドプレートモニタ
- 材料の帯電減衰特性 ⇒ 帯電減衰測定器
たとえば、樹脂フィルムの帯電状態を確認したい場合と、ESDマットが電荷を適切に逃がせるか確認したい場合では、使用する測定器は異なります。
また、イオナイザによって実際のワークの帯電が低下したことを確認する測定と、イオナイザそのものの性能を評価する測定も区別する必要があります。
このように、静電気測定器は名称だけで選ぶのではなく、測定したい物理量や評価したい性能から選定することが基本です。
(2)表面電位計と電界強度計
製造現場で広く使用されている静電気測定器が、表面電位計と電界強度計です。
表面電位計は、帯電した対象物の表面電位をV(ボルト)やkV(キロボルト)として評価するために使用します。フィルム、樹脂製品、電子部品など、帯電している対象物の状態を確認したい場合に適しています。
一方、電界強度計は、センサーが置かれた位置における電界強度を測定する装置です。設備周辺や搬送ラインなどで、電界の状態やその変化を確認する用途に利用されます。
表面電位計と電界強度計は似た用途で使用されることがありますが、測定している物理量や表示値の求め方は同じではありません。
[※関連記事:静電気計測の基本がわかる!表面電位計・電界強度計の原理と使い分け]
本記事では、それ以外の静電気測定器も含め、測定目的から機器を選ぶ方法を中心に説明します。
2.電荷量を測る:クーロンメータ/エレクトロメータ
静電気の評価では、対象物の表面電位だけではなく、対象物から取り込んだ電荷量そのものを測定したい場合があります。
このような測定に用いられるのが、クーロンメータや電荷測定機能を持つエレクトロメータです。
(1)表面電位と電荷量は異なる
静電気測定で混同されやすいのが、「電位」と「電荷量」です。
電位の単位はV(ボルト)ですが、電荷量の単位はC(クーロン)です。
帯電した物体の電位は、その物体が持っている電荷量だけで決まるわけではありません。対象物の大きさ、形状、周囲の導体との位置関係などによっても変化します。
そのため、次のように測定目的を分けて考える必要があります。
- 表面電位を測る ⇒ 表面電位計
- 電荷量を測る ⇒ クーロンメータ/エレクトロメータ
(2)クーロンメータによる電荷量測定
クーロンメータでは、測定対象から測定系に導かれた電荷を測定します。
測定方法によっては、ファラデーカップなどを利用して電荷量を測定する場合もあります。
また、エレクトロメータにも電荷測定機能を備えた製品があります。
電荷測定回路では、入力された電荷を既知の静電容量を持つ回路で電圧に変換し、その値から電荷量を求める方法などが用いられます。

【図1 クーロンメータによる電荷量測定のイメージ】
電荷量は、測定対象によってC、μC、nC、pCなどの単位で表示されます。
ただし、接触によって電荷を取り込む測定では、測定そのものによって対象物の帯電状態が変化する場合があります。そのため、非接触で帯電状態を確認する表面電位測定とは、測定の性質が異なります。
3.電荷の逃げやすさを調べる:表面抵抗測定器・高抵抗計
静電気対策では、発生した電荷を適切に逃がすことも重要です。
作業台、ESDマット、床材、包装材などでは、材料や設備の電気抵抗を測定することで、電荷がどの程度流れやすい、あるいは逃げやすい状態にあるかを評価します。
そのために使用されるのが、表面抵抗測定器や高抵抗計です。
(1)抵抗測定の基本原理
電気抵抗は、電圧と電流の関係から求めることができます。
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(R:抵抗[Ω]、V:印加電圧[V]、I:測定電流[A])
高抵抗計では、測定対象に規定された電極を配置し、所定の試験電圧を印加します。そして、そのとき流れる微小電流を測定することで抵抗値を求めます。
静電気対策材料は非常に高い抵抗領域を扱うことがあるため、一般的なテスターではなく、高抵抗を測定できる専用機器が使用されます。
IEC 61340-2-3では、静電気の蓄積を防止するために使用される固体材料について、抵抗および抵抗率を測定する試験方法が規定されています。

【図2 表面抵抗測定器の基本原理と主な測定対象】
主な測定対象としては、作業台・ESDマット、床材、静電気対策包装材、作業服などがあります。
(2)電位測定と抵抗測定の違い
ここで注意したいのは、表面電位が低いことと、抵抗値が適切であることは同じ意味ではないという点です。
表面電位計は「現在どの程度帯電しているか」を確認するための測定器です。
これに対して抵抗測定器は、「その材料や設備が電荷をどのように流す性質を持っているか」を評価するためのものです。
したがって、静電気対策の効果を総合的に確認する場合には、必要に応じて両方の測定を組み合わせることが重要です。
4.イオナイザの性能を評価する:チャージドプレートモニタ
絶縁物では、導体のように接地するだけでは電荷を逃がせない場合があります。
このような対象物の除電には、正負のイオンを供給して帯電を中和する「イオナイザ」(除電器)が使用されます。
イオナイザが十分な性能を発揮しているかを評価するために使用される代表的な測定器が、「チャージドプレートモニタ」(Charged Plate Monitor:CPM)です。
チャージドプレートモニタでは、主に「除電時間」と「オフセット電圧」の2つを評価します。
IEC 61340-4-7 でも、イオナイザの評価項目としてoffset voltage(ion balance)とdecay time(charge neutralization time)の測定方法が定められています。ANSI/ESD STM3.1-2024も同様に、offset voltageとdischarge timeを評価対象としています。
(1)除電時間(減衰時間)
チャージドプレートを正または負に帯電させ、イオナイザを作動させます。その後、プレートの電位が所定の値まで低下するのに要する時間を測定します。この時間が除電時間(減衰時間)です。
除電時間を測定することで、イオナイザが帯電した対象物をどの程度の速さで中和できるかを評価できます。
(2)オフセット電圧(イオンバランス)
イオナイザから供給される正イオンと負イオンの量に偏りがあると、除電後の対象物が正または負に帯電する場合があります。
そこで、チャージドプレートを0V付近にした状態でイオナイザを作動させ、安定したときのプレート電圧を測定します。この値がオフセット電圧で、イオンバランスを評価する指標になります。

【図3 チャージドプレートモニタによるイオナイザの性能評価】
なお、除電時間やオフセット電圧について、一律に「この数値以下なら良好」と判断できるわけではありません。測定条件や要求性能、適用規格、社内管理基準などに基づいて評価する必要があります。IEC 61340-4-7も「specified conditions(規定された条件)」のもとで評価する試験方法として位置づけています。
また、実際のワークの除電前後の帯電状態を確認する場合には表面電位計が有効ですが、イオナイザそのものの性能を定量的に評価する場合にはチャージドプレートモニタを使用するという使い分けが重要です。
5.材料の帯電特性を調べる:帯電減衰測定器
静電気対策材料では、単に抵抗値を測定するだけでなく、一度帯電した材料から電荷がどの程度の速さで減衰するかを評価することがあります。そのために使用されるのが、帯電減衰測定器です。
(1)帯電減衰特性とは
材料に電荷を与えた後、その帯電状態が時間とともにどのように変化するかを測定します。
たとえば、ある電位まで材料を帯電させ、その電位が所定の値まで低下する時間を測定することで、材料の静電気散逸特性を評価できます。
IEC 61340-2-1では、材料や製品が静電荷を散逸させる能力を測定する方法が規定されており、コロナ帯電を利用する方法と、帯電した金属プレートを利用する方法などが示されています。これらの方法は必ずしも同じ結果を与えるものではなく、用途に応じて使い分ける必要があります。
(2)抵抗測定だけでは分からない特性を評価する
材料の電気抵抗は、静電気対策材料を評価する重要な指標です。
しかし、実際の帯電・減衰挙動は、抵抗値だけで完全に表現できるとは限りません。
そのため、帯電防止フィルム、包装材、衣服などについては、用途によって抵抗測定と帯電減衰測定を組み合わせて評価することがあります。
静電気対策材料の性能を確認する場合には、「抵抗値を見るのか」「実際の電荷の減衰を見るのか」をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
また、チャージドプレートモニタによる測定と混同しないよう注意が必要です。
次の違いをしっかりと確認しましょう。
- チャージドプレートモニタ ⇒ 主にイオナイザによる除電性能を評価する
- 帯電減衰測定 ⇒ 主に材料や製品そのものの電荷散逸特性を評価する
6.目的別・静電気測定器の選び方
ここまで説明したように、静電気測定器は「静電気を測る装置」という一つのカテゴリーだけで考えるのではなく、測定したい物理量や評価したい性能から選ぶことが重要です。
代表的な用途と測定器の組み合わせを整理すると、次のようになります。
| 現場で確認したいこと | 適した測定器 | 主な測定量・評価項目 |
| フィルムや樹脂製品がどの程度帯電しているか知りたい | 表面電位計 | 表面電位 |
| 設備や搬送ライン周辺の電界を確認したい | 電界強度計 | 電界強度 |
| 対象物が持つ電荷量を測りたい | クーロンメータ/エレクトロメータ | 電荷量 |
| ESDマットや床材の抵抗を確認したい | 表面抵抗測定器・高抵抗計 | 電気抵抗 |
| イオナイザの除電性能を確認したい | チャージドプレートモニタ | 除電時間・オフセット電圧 |
| 帯電防止材料の電荷の減衰特性を比較したい | 帯電減衰測定器 | 帯電減衰時間など |
(1)製造工程の帯電状態を確認したい場合
フィルム、樹脂、電子部品など、製造工程中の対象物がどの程度帯電しているのかを調べたい場合には、表面電位計が適しています。非接触で測定できるタイプであれば、対象物に触れることなく帯電状態を確認できます。
ただし、測定距離や対象物の大きさ、周囲の導体などが測定結果に影響することがあるため、使用する測定器の仕様・取扱説明書に従って測定する必要があります。
(2)静電気対策材料の性能を確認したい場合
作業台、ESDマット、床材、包装材などが電荷を適切に逃がせるかを確認する場合は、抵抗測定を行います。一方、材料が実際にどの程度の速さで電荷を散逸させるかを調べたい場合は、帯電減衰測定が適しています。
同じ静電気対策材料でも、抵抗特性を評価するのか、電荷の減衰特性を評価するのかによって測定方法が異なります。IECでも抵抗・抵抗率の測定はIEC 61340-2-3、電荷散逸能力の測定はIEC 61340-2-1として別の試験方法が定められています。
(3)除電器の効果を確認したい場合
「イオナイザを設置したところ、実際のワークの帯電が低下したか」を確認したい場合には、表面電位計による測定が有効です。一方、除電に何秒かかるのか、正負のイオンバランスに偏りがないかなど、イオナイザ自体の性能を評価する場合にはチャージドプレートモニタを使用します。
このように、「何を確認したいのか」を明確にすることで、必要な測定器を選びやすくなります。
7.静電気測定器を選定するときのポイント
測定対象に適した測定方式を決めた後は、実際の用途に合わせて測定器の仕様を確認します。
- ① 測定範囲
まず確認したいのが測定範囲です。想定される測定値が、測定器の測定可能範囲に入っている必要があります。静電気測定では、大きな電位を確認したい場合もあれば、わずかな変化を高い分解能で確認したい場合もあります。単に「最大測定値が大きい機器」を選ぶのではなく、実際に管理したい範囲に適しているかを確認することが重要です。 - ② 分解能と測定精度
微小な変化を管理する用途では、分解能も重要になります。一方で、表示桁数が多いことと、測定値の正確さが高いことは同じではありません。測定精度、分解能、再現性などの仕様を確認し、必要な管理レベルに合った機器を選びます。 - ③ 接触式か非接触式か
対象物に触れることができない場合には、表面電位計などの非接触測定が適しています。
一方、電荷量や抵抗の測定では、測定対象との電気的な接触が必要になる場合があります。特にフィルムなどの連続搬送物や電子部品では、測定によって対象物の状態を変化させないことも重要な選定条件になります。 - ④ 測定距離・設置方法
非接触式の静電気測定器では、測定距離が重要です。
測定器によって指定距離や測定可能範囲が異なるため、実際の設備で適切な位置にセンサーを配置できるかを確認します。ハンディタイプでスポット測定するのか、センサーを製造装置に固定して継続監視するのかによっても、適した機器は異なります。 - ⑤ 応答速度
高速で移動するフィルムやワーク、短時間で帯電状態が変化する工程を測定する場合には、測定器の応答速度も重要です。平均的な帯電状態だけを確認する場合と、瞬間的な変化を捉えたい場合では必要な性能が異なります。 - ⑥ データ記録・外部出力
製造工程の管理では、その場で数値を見るだけでなく、測定データを保存して傾向を分析したい場合があります。その場合には、アナログ出力、デジタル通信、USBなどへのデータ保存、PCへのデータ転送など、必要な外部出力・記録機能を確認します。
固定式の測定器を使用する場合には、上位システムやPLCなどとの接続性も選定項目になります。 - ⑦ 使用環境
静電気は、材料、工程条件、温度、湿度などの影響を受けます。特に湿度の変化は、材料表面の電荷の漏れやすさなどに影響することがあります。静電気現象の評価では、測定値だけでなく、必要に応じて測定時の環境条件も記録しておくと、測定値の比較やトラブル原因の分析に役立ちます。
また、特殊な環境で測定する場合には、その環境に適した機器であるかを確認する必要があります。 - ⑧ 校正・規格への対応
測定値を品質管理や製品評価に使用する場合には、校正への対応も確認しておきます。校正周期は一律に決められるものではなく、メーカーの推奨、使用頻度、使用環境、過去の校正結果、社内の品質管理基準などを考慮して決定します。
また、ESD管理や材料評価など、特定の規格に基づいて測定する場合には、測定器だけでなく、電極、測定条件、試験方法を含めて適用規格に適合しているかを確認することが重要です。IEC 61340シリーズでも、抵抗測定、電荷散逸、イオナイザ評価はそれぞれ別の試験方法として規定されています。
8.まとめ
静電気は目に見えないため、製造現場で対策を進めるには、まず帯電状態や静電気対策の効果を測定によって定量的に把握することが重要です。
ただし、「静電気測定器」は一種類ではありません。対象物の帯電状態を確認するのであれば表面電位計、特定位置の電界を測定するのであれば電界強度計、電荷量そのものを測定するのであればクーロンメータやエレクトロメータを使用します。
また、ESDマットや床材などの電荷の逃げやすさを確認する場合には表面抵抗測定器や高抵抗計、イオナイザの除電性能を評価する場合にはチャージドプレートモニタ、材料そのものの電荷散逸特性を評価する場合には帯電減衰測定器が使用されます。抵抗、電荷散逸、イオナイザ性能については、それぞれ異なるIEC試験方法が設けられていることからも、「何を評価するか」によって測定方法を使い分ける必要があることが分かります。
したがって、測定器を選ぶときには、「静電気を測りたい」ではなく、「何を測って、何を判断したいのか」を明確にすることが第一歩です。そのうえで、測定範囲、精度、測定方法、設置条件、応答速度、データ出力、使用環境、校正、適用規格などを確認し、目的に適した測定器を選定することが重要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・K)
《引用文献、参考文献》
- 1) 一般社団法人 静電気学会(静電気ハンドブック等)
- 2) 独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所(静電気安全指針)
https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/doc/tr/TR_No42.pdf - 3) JIS C 61340-5-1(静電気現象からの電子デバイスの保護 – 一般要求事項)
- 4) RCJS-5-1(第 3 版):2016(静電気現象からの電子デバイスの保護-一般要求事項)規格発行に寄せて 日本電子部品信頼性センター)
https://rcj.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/RCJS-5-1-3rd-edition.pdf


































