3分でわかる技術の超キホン Diels-Alder反応と医薬品での利用例

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Diels-Alder反応を利用した医薬品の例

Diels-Alder反応は、大学の有機化学の教科書に必ずといってよいほど載っている超有名な化学反応です。
古くから知られており、また、今でも多くの化合物の合成に利用されています。
今回は、特にDiels-Alder反応を用いた医薬品関連物質の合成反応に注目してみましたので、ご紹介致します。

Diels-Alder反応とは?

Diels-Alder反応とは、共役ジエンとアルケンの反応により環状化合物が得られる化学反応をいいます。
種々の医薬品、生理活性天然物等の骨格合成を行う上で最も基本的かつ有用な反応の一つとなっています。
反応系にルイス酸を添加すると錯体が形成されることによって、反応速度が増し、位置及び立体選択性が向上することが知られています。

天然物や医薬品の合成に多く用いられていますが、そのうちの一部をご紹介いたします。

 

Diels-Alder反応の利用例

(1)タキソール(パクリタキセル、paclitaxel)

タキサン類は常緑樹の一種、イチイ科植物から得らるジテルペン化合物で、タクスシン、タキシニン、タキソールなどが知られています。
中でもタキソールは、広い抗癌スペクトルを持ち、その基本骨格であるタキサンジテルペン類の合成が数多く研究・報告されています。

paclitaxel

その一例として、分子内Diels-Alder反応を利用してAB環の同時構築した例が報告されています。

BF3

 

(2)ダイネミシンA

1980年代後半に多くの環状エンジイン系抗腫瘍性抗生物質が単離・構造決定されました。
アグリコン部分は、いずれもアセチレンを含んだ不飽和度の高い特徴のある化学構造を有しています。
ダイネミシンAもそのうちの一つで、全合成が種々検討され、その一例として、分子内Diels-Alder反応を用いたダイネミシンAの骨格合成が行われています。

Dynemicin A

 

(3)抗菌プラテンシマイシン(platensimycin)

南アフリカの土壌に存在する放線菌 Streptomyces platensis から抗菌活性を有する低分子化合物プラテンシマイシンが発見されました。
プラテンシマイシンは MRSA、VRE、VRSを含むグラム陽性菌に対して広範な抗菌スペクトルを示しますが、その作用特性により既存の抗菌剤との交差耐性も持たず、また毒性も確認されていないという特徴を持っています。ペンタシクロ環という特徴のあるカゴ状骨格を有しています。

platensimycin

ジエノフィルとジエンとのDiels-アジドキノンAlder反応によって、中間体である二環性骨格体を合成したという報告がされています。

Dienophile

 

(4)アクツミン(Actumine)

オオツヅラフジ Sinomenium acutum の根茎を乾燥させたものは防已(ボウイ)と呼ばれ、古くから鎮痛、利尿作用を有する生薬として用いられています。
アクツミンは、1929年にオオツヅラフジの根茎から単離され、1967年に構造決定された四環性ハスバナンアルカロイドです。
アクツミンは、T細胞選択的増殖抑制および抗健忘活性を示すとされています。

Actumine

アジドキノンとトリメチルシリルシクロペンタジエンとの不斉Diels-Alder反応が用いられています。

Azidoquinone

 

(5)4型ホスポジエステラーゼ(PDE 4)阻害薬KW −4490

抗喘息薬として開発されていた薬剤ですが、2004年に開発中止となっていまいました。(欧州でフェーズ2、欧州4ヵ国・南アフリカのデータで有効性が不十分)

KW −4490

合成ルートは種々検討されていて、その中でDiels-Alderルートが採用されたと文献で報じられていました。
diels-alder route

 

(6)キナマイシン類(kinamycin)

キナマイシン類は、1970年代に、Streptomyces murayamaensisの産出する抗生物質として単離されました。
グラム陽性菌に対して抗菌活性を示し、キナマイシンCは抗腫瘍性活性を有することが知られています。
中間体の合成において、ルイス酸として塩化亜鉛を用いたところ収率良く、Diels-Alder反応付加体を得たことが報告されています。

kinamycin

 

Diels-Alder反応に関する特許を検索してみると・・・

Diels-Alder反応に関する特許検索をするにあたって、まずは特許分類を検討しましょう。
予備検索してみたところ、下記FIが見つかりました。

  • ①C07B37/12 ・・ディールス・アルダー反応
  • ②C07C2/50 ・・ディールス・アルダー反応
  • ③C08G63/553・・・・・脂肪族環を含む酸またはヒドロキシ化合物 例.ディールス―アルダー付加物(高分子化合物)

日本特許庁のデータベース”J-PlatPat”で検索してみると、①43件、②159件、③85件がヒットしました。
ざっと内容を見てみると、そのほとんどが樹脂原料に用いる環状化合物の製造方法に関するもので、医薬品に関する特許は、残念ながらありませんでした。

そこで、キーワード「ディールス・アルダー」「ディールス-アルダー」の全文検索と、医薬品に関する特許分類(FI)の”A61K”とを掛け合わせた検索をしてみると853件がヒットしました。
その中からは、テトラサイクリン化合物、ベラプロスト等々の製法に用いられている特許が検出されました。

 

Diels-Alder反応に関する文献を調査してみると・・・

J-GLOBALを用いて「ディールス・アルダー反応」で検索したしたところ、104件の文献がヒット。
また「ディールス・アルダー反応 医薬」では5件ヒットしました。
TXA2アンタゴニスト類の合成に関する文献などが得られました。

 
※上記の検索結果は、いずれも2019年9月時点における件数です。
※いずれも簡易的な検索による件数確認に過ぎませんので、分類やキーワードを厳密に精査したうえでの検索結果とは異なります。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 


◆関連コラム:Diels-Alder反応と天然物化学はこちら


 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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