3分でわかる技術の超キホン ドラッグデリバリーシステム(DDS)とは?

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DDS(ドラッグデリバリーシステム)の解説

前回の当連載コラムでは、リポソームとmRNAワクチンとの関係についてご説明しました。

新型コロナウイルス問題により、多くの方が「mRNAワクチン」という慣れない言葉を見たり聞いたりされたかと思います。mRNAワクチンは、ドラッグデリバリーシステムDDS, Drug Delivery System, 薬物送達システム)技術の一つとして、とても注目されています。

今回は、そのDDSの基礎知識について解説します。

1.薬物送達システム(DDS)とは?

薬物送達システム(DDS)は、薬物効果を最大限発揮させるための制御技術で、体内での分布を量的、空間的、時間的にコントロールすることを目指しています。
つまり、DDSは医薬品を必要な場所(臓器、組織など)に、必要な時間、必要な量だけを送達する技術です。
 

2.DDSの基幹技術

(1)薬剤標的化技術(ターゲッティングDDS)

疾患の病変部位を目的に集中的に薬物を到達させる技術です。
薬剤の効果の増強や副作用の軽減を期待できます。

薬剤標的化技術は、主に2つの種類があります。
 

① 受動的標的化(担体の物理的性質の利用)

薬物輸送担体(キャリア)の粒子径や親水性などの物理化学的性質を利用して、薬物の体内動態を制御する方法です。

例えば、EPR(Enhanced Permeation and Retention)効果を利用するがん治療用薬剤はその一つです。
がん患部の新生血管の細胞壁の隙間(100 nm – 200 nm)は普通の血管より大きく、粒子透過性が高いため、薬剤の粒子径を制御することで、がん組織内に集積しやすくなります。
 

② 能動的標的化(担体に化学修飾)

薬物運送担体に特殊な仕組み(たとえば、抗体やリガンドを結合したキャリアの導入)を付け加えて、標的とする組織への指向性を制御する方法です。

抗体―抗原や受容体―リガンド反応など、生体分子間の特異な強力な認識反応を利用するので、その特性から「ミサイルドラッグ」と呼ばれることもあります。
 

(2)薬剤放出制御技術(放出制御型DDS)

DDS製剤からの薬物放出をコントロールする技術です。
薬物の血中濃度を長期間一定に保つことや、薬物が溶け出すタイミングをコントロールすることを「放出制御」と言います。
一回の投入で、長期間を渡って、薬物の血中濃度を一定に保つことが副作用を減らすことに繋がります。

薬剤放出制御技術には、主に以下のような方法があります。

 

① マトリックス型(モノリシック型)

薬物を高分子あるいは無機物のマトリックス中に分散させて、マトリックスの緩やかな溶解などによって、薬物の放出を制御する方法です。
 

② 拡散制御膜型(リザーバー型)

薬物成分を高分子膜で包み、その膜の薬物透過性により薬物透過量を制御する方法です。

例えば、膜崩壊、膜離脱、膜溶解と膜透過などで引き起こす時限放出制御があります。
また、時限放出には刺激応答技術も使われます。特定の臓器や組織に対して、外部からの物理的な刺激(光、超音波、磁気、放射線など)を当てることで、薬剤を放出させることが多いです。
 

(3)吸収改善技術(吸収制御型DDS)

皮膚・粘膜などからの薬物の吸収改善血液脳関門通過の技術です。

例えば、細胞膜表面が負に帯電しており、負に帯電した薬剤は細胞内に取り込まれにくいことがわかっています。この場合、この薬剤をカチオン性リン脂質に包まれると、負に帯電した細胞膜が膜融合を引き起こし、薬剤分子の送達が促進されて、細胞内に取り込まれます。
他には、ウイルスのペプチドなど、細胞透過に関わる分子を結合する例もあります。

 

3.「ナノDDS」の研究開発動向に注目

DDS技術の進歩により、様々な難治性希少疾患製剤の開発が可能になりました。
さらに、ナノテクノロジーと組み合わせしたDDS技術(ナノDDS)は、遺伝子治療や核酸医薬の進化をもたらし大きな注目を集めています。
ナノDDSは、病気の治療や診断目的だけでなく、生化学、免疫学、食品産業、化粧品産業などの分野でも活用していく動きが活発化しているようです。

DDS技術に携わる方は、論文や特許文献などを通じて技術動向をチェックされることをおススメします。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 
 

 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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