- 《大好評》LTspice設計実務シリーズ
LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2025/4/2(水)10:00~17:00
お問い合わせ
03-6206-4966
「D-A変換回路」はデジタル信号からアナログ信号に変換する回路で、「A-D変換回路」はアナログ信号からデジタル信号に変換する回路です。これらの回路は、現在では、様々なところで使われています。
例えば、CDなどでは、音楽を録音する時は音をマイクで捉え(アナログ信号)、その後、CDに録音し(デジタル信号)、聞く時はスピーカやイヤホンなどで聞きます(アナログ信号)。
この時、必ず、D-A変換回路、A-D変換回路が必要になるのです。
今回は、このD-A変換回路、A-D変換回路について説明します。
D-A変換回路は、デジタル信号をアナログ信号に変換する回路です。代表的な回路例をご紹介します。
図1は、電流加算方式と呼ばれるD-A変換回路の回路例です。
【図1 D-A変換回路の回路例】
図1において、抵抗Rが非常に小さい値だとすると、スイッチS0だけがオンの時には、抵抗Rに1mAの電流が流れます。
同様に、スイッチS1がオンの時には、抵抗が1/2なので、電流は、2mA流れます。スイッチS2、スイッチS3では、それぞれ、4mA、8mA流れます。
図2に各スイッチがオン状態の時に、流れる電流値を示します。
【図2 各スイッチがオン状態の時に、流れる電流値】
ここで、複数のスイッチをオンした場合には、抵抗Rには、各スイッチに対応した電流の和が流れます。
したがって、抵抗Rの両端から出力される電圧V0は、スイッチ入力(デジタル信号)に対応したアナログ信号となります。
例えば、1001(S3、S2、S1、S0)というデジタル信号は、S3とS0をオンにするので、8+1=9mAの電流が抵抗Rに流れます。
これは、デジタル信号の1001がアナログ信号の9(10進数)に対応していることを意味します。
このようにして、デジタル信号をアナログ信号に変換することができます。
図3は、はしご型(ラダー型)と呼ばれるD-A変換回路の回路例を示したものです。
【図3 D-A変換回路の回路例】
図3において、抵抗値Rと2Rの抵抗が、はしごのように並べられています。
オペアンプは、電流を流すためのインピーダンス変換用として用いています。出力電圧Eoを出力します。
はしご型抵抗の性質を見てみましょう。
はしご型回路は、図3のA、B、C、Dのどの接続点においても等価的に2Rの抵抗が3方向に接続されているというものです。
例えば、E4、E3、E2、E1の4ビットが0010に設定されているとするとE2入力だけが“1”なので、C点における抵抗の接続状態が分かります。
その状態を順にみていくと、
次に、流れる電流についてみていきます。
図4は、E4、E3、E2、E1が0010に設定されている場合の電流Iの様子を示した図です。
【図4 電流Iの様子】
図4において、はしご型抵抗の性質から電流が各接続点で1/2になっていく様子が分かります。
デジタル入力が0010のとき、E2に加えられた電圧Vにより、I=V/3Rなので、
Eo=2R×I/8=2R×(V/3R)/8=(2/24)V
となります。
同様にして、デジタル入力が0001のとき、Eo=(8/24)V、デジタル入力が0100のとき、Eo=(4/24)V、デジタル入力が0100のとき、Eo=(1/24)V、となります。
すなわち、デジタルの値(8、4、2、1)× V/24の関係があることがわかります。
したがって、このはしご型D-A変換回路は、
Eo=(8/24)E4+(4/24)E3+(2/24)E2+(1/24)E1
となり、最後に24を掛ければ、デジタル入力をアナログ出力に変換することができます。
A-D変換回路は、アナログ信号をデジタル信号に変換する回路です。
アナログ信号をデジタル信号に変換するには、標本化、量子化、符号化という処理を経ることになります。
アナログ信号をデジタル信号に変換する際、アナログ信号に含まれる最大周波数の2倍以上の周波数で信号を標本化(サンプリング)すると、もとのアナログ信号の連続波形を再現できます。これを「標本化定理」といいます。
電圧-時間変換方式のA-D変換回路には複数の種類がありますが、ここでは、二重積分型A-D変換回路について述べます。電圧-時間変換方式は、精度が高いですが動作は低速です。
図5は、二重積分型A-D変換回路の回路例です。図6は、回路の動作原理を示す図です。
【図5 二重積分型A-D変換回路の回路例】
【図6 二重積分型A-D変換回路の動作原理】
図5において、オペアンプと抵抗RとコンデンサCで積分回路を構成しています。
コンパレータは比較器で、この場合は、電圧ゼロを検出します。
図5、図6を用いて動作原理を見てみましょう。
このように、2通りの積分期間があるので、「二重積分型A-D変換回路」と呼ばれています。また、アナログの入力電圧V1をデジタル量のn(時間)に変換しているので、「電圧-時間変換方式」とも呼ばれます。
電圧比較方式のA-D変換回路として、並列比較型A-D変換回路を見てみましょう。
電圧比較方式は、高速でA-D変換できる特徴がありますが、回路規模が大きくなってきます。
図7は、並列比較型A-D変換回路の回路と動作を説明する図です。
【図7 並列比較型A-D変換回路の回路と動作】
並列比較型A-D変換回路は、図7のように、主にコンパレータとエンコーダで構成されています。
図7において、基準電圧Vrに対する入力電圧Viを入力すると、エンコーダからデジタル出力が出力されます。
図7のように、基準電圧Vr=8Vとして、入力電圧Vi=5.4Vとします。
基準電圧Vrは、同じ抵抗値の抵抗Rで8つに分割されています。
すると、抵抗によって、1Vから7Vの電圧を作成できます。この作成された電圧と入力電圧ViとをCP0からCP6のコンパレータで比較します。
入力電圧Viの方が大きい場合にコンパレータの出力を“1”となるようにして、その出力をエンコーダに入力すると、デジタル出力が得られます。
この場合は、101(2進数)=5(10進数)となります。
このように、並列比較型A-D変換回路は、入力信号を一斉に比較できるため、非常に高速な変換が可能となります。但し、ビット数が増えると多くのコンパレータが必要となります。
[※関連ページ:コンパレータに関する解説はこちら]
以上、今回はD-A変換回路、A-D変換回路について述べてきましたが、実際には、他に多くの種類のD-A変換回路、A-D変換回路があり、用途に合わせて選ぶことができます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)