3分でわかる 化粧品の乳化・可溶化の基礎知識|仕組みと界面活性剤の役割

水と油は互いに混ざり合わない物質ですが、両者とも化粧品には重要な処方原料として用いられています。そのため、水と油を混ぜる乳化や可溶化といった製剤技術は、化粧品開発における重要な柱のひとつです。
本記事では、化粧品における乳化と可溶化の基礎知識についてわかりやすく解説します。
1.乳化とは
「乳化」とは、本来混ざり合わない水と油を安定して混合する技術のことです。
例えば、保湿クリーム、ファンデーション、乳液など多くの化粧品が乳化により成り立っています。
乳化により得られる混合物を「エマルション(emulsion)」と呼び、下記の「O/W型」「W/O型」の2つのタイプに分類されます。
これらを適切に設計するには、乳化剤と呼ばれる界面活性剤の選定が鍵となります。
図1に示すように、界面活性剤は水になじむ部分(親水基)と油になじむ部分(親油基)の両方を持っているので、図2のように水と油をとりもつことができます。

【図1 界面活性剤】

【図2 水中/油中における界面活性剤の状態】
2.乳化剤の種類と選定ポイント
乳化剤(界面活性剤)は、水と油の界面に吸着してエネルギー的な不安定さを抑え、乳化状態を安定化させる働きを持ちます。
界面活性剤にはさまざまな種類があり、化粧品に使用される代表的なものを以下に示します。
| 種類 | 特徴 | 主な用途 |
| 非イオン性界面活性剤 (ノニオン型) |
皮膚への刺激が少ないものが多い | 化粧水、乳液、クリームなど |
| 陰イオン性界面活性剤 | 洗浄力が強いものが多い | クレンジング製品 |
| 両性界面活性剤 | pHによって性質が変わるものがある | シャンプー、洗顔料など |
乳化剤の選定では「HLB値(Hydrophilic-Lipophilic Balance)」が重要な指標です。
HLB値とは、親水性と親油性のバランスを数値化したもので、一般的にO/W型では10以上、W/O型では4~6程度の乳化剤が適しています。
攪拌などの機械的エネルギーや、必要に応じて熱エネルギーを活用して油相と水相を微細に分散させるとともに、乳化剤の働きによって分離しにくい状態に安定化させることが重要です。
3.可溶化とは
可溶化とは、本来水に溶けにくい油性成分(精油や香料、有効成分など)を水の中に透明な状態で均一分散させる技術です。主に化粧水や美容液などの水系製品に使用されます。可溶化には、一般に界面活性剤が可溶化剤として用いられます。
乳化では油滴や水滴が微細な液滴として分散するのに対し、可溶化では油性成分などが界面活性剤の形成するミセルに取り込まれます。ミセルは通常、可視光の波長に比べて十分に小さく、光の散乱が少ないため、透明な状態を得ることができます。
具体的なメカニズムは、少量の界面活性剤が水に溶けているときはバラバラになっていますが、界面活性剤の濃度が高くなると、図3のように界面活性剤どうしが集まって球状の集合体(ミセル)を形成します。
親水基を外側に向けて球状になることで安定した状態となり、このミセルの中に油性成分を取り込むことができるようになります。

【図3 界面活性剤のミセル形成】
可溶化は単なる混合ではなく、界面活性剤の濃度、HLB値、配合順序、温度などの制御が必要です。また、成分の安定性や感触への影響も考慮しなければなりません。
4.ピッカリングエマルション
界面活性剤の代わりに固体粒子を油水界面に吸着させ、乳化状態を安定化させる技術もあります。
これを利用したものが「ピッカリングエマルション」であり、O/W型とW/O型の両方が存在します(図4はO/W型の例)。
界面活性剤とは異なり、乳化剤である固体粒子の油水界面への吸着エネルギーが非常に高いことから高い乳化安定性を示します。
固体粒子としてはシリカ、チタニア、粘土類、カーボンブラックなどの無機系のほか、ポリスチレンやPMMA、シリコーン樹脂などの有機系があります。
固体粒子を用いることで、従来の界面活性剤の使用量を減らせる場合があり、肌への刺激の低減も期待できます。ただし、その効果は使用する固体粒子の種類や処方条件によって異なります。

【図4 ピッカリングエマルション】
[※関連記事:《界面活性剤を用いない乳化?》ピッカリングエマルションの特長と開発例]
5.まとめ
化粧品の乳化・可溶化という処理は単に水と油を混ぜ合わせるだけではありません。本来親和性の低いものが一つの製剤の中に混在していることを考えると、これを大量に調製することは難しく、高度な処方技術が求められます。長い年月の間に実にさまざまな技術が編み出され、実用化されてきました。筆者がそれを最も感じるものが日焼け止めクリームです。今ではクリームだけではなくミルクやジェル、スプレー等剤型もさまざまで、塗り心地や感触も一昔前と比べると格段に違います。
このように身近なものから技術の進歩を感じられるとその分野の研究開発にも興味が湧いてきます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 A・F)

































