【中国特許分析】太陽電池・太陽光発電に関する特許出願をチェック!注目の中国現地企業は?

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太陽電池・太陽光発電に関する中国特許分析

太陽電池は光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体装置であり、光電池、光起電セル、ソーラーパネル、PVモジュール等とも呼ばれます。

2020年の中国の太陽電池の生産量は157.3GWに達し、2019年と比較して22.3%増となっています。
また、2020年の中国製太陽電池の輸出量は198億ドル(約2.2兆億円)に達しました。

中国企業の太陽電池シェアが拡大していることに対して、日系メーカの太陽電池事業は縮小しています。
既に太陽電池事業から撤退したメーカーや、今後の生産終了を決定しているメーカーもあります。また、事業の撤退はしないものの、自社工場を一部閉鎖して、OEMによる委託生産や外部調達へシフトするといった動きも見られます。特許出願動向から見ても、このような動きや変化が分かります。
 

1.太陽電池分野に関する特許公開推移

現時点の太陽電池に関する世界範囲内の特許公開件数は、中国特許の件数が一番多く、次は日本特許、さらに米国特許が多くなっています(incoPat基準)。
特許の公開件数推移から見ると、中国特許公開件数は2010年から年々増加を続け、2014年以後は増加率がさらに一段と上がりました(図1を参照)。

これに対して、日本特許は2013年に特許公開のピークに達し、2014年から減少に転じました。2020年の特許公開件数は2008年以前の水準に戻り、回復の兆しは見られません。
なお、米国特許の公開件数は2015年から横ばいになっています。他の国/機関も近年ほぼ横ばい状態です。
世界範囲での特許総公開件数が増えている傾向は、主に中国特許の増加の勢いによるものと考えられます。

太陽電池に関する各国/機関の特許公開件数推移

※図1の年度別の特許件数はDBの既存設定で公開/登録の重複は合併されていません。

【図1.太陽電池に関する各国/機関の特許公開件数推移】

 

2.太陽電池に関する中国特許の分析

では、中国特許の状況を詳しく見ていきましょう。

太陽電池に関する中国特許の年度別公開件数推移を見ると、2011年の時点に既に7,906件の公開件数があり、他の国/機関の年間公開件数を超えていますが、その後さらに急増し、2018年には28,909件に達しています(図2を参照)。

2019年に一旦減り、25,343件になりました。これは中国政府が「2018年太陽光発電に関する事項の通知」(「531新政策」とも呼ばれています)を発表し、太陽光発電に対する補助金が低減されたことが原因だと思われます。ただ、その後の2020年には特許公開件数が再び回復して最高値を更新し、29,822件に達しました。
また、出願種別から見ると、特許と実用新案はほぼ半々の割合で出願されています(図2を参照)。

太陽電池に関する中国特許・実用新案公開推移

※特許公開/登録の重複が合併されております。

【図2.太陽電池に関する中国特許・実用新案公開推移】

 

3.太陽電池分野の主なIPC分類

太陽電池の特許に付与されている主な分類を、表1に赤字で示しました。

光起電[PV]半導体変換装置[H01L31/04]及びその下位分類、光電池による電池の充電/電力給電の回路装置[H02J7/35]、赤外線,可視光または紫外光の変換による電力発電[H02S]、車輪付車両用太陽電池[B62M6/85]があります。
なお、太陽電池専用の分類ではありませんが、車両の自然力により動力供給源とする電気的推進装置[B60L8/00]、宇宙航行体の輻射による動力供給[B64G1/44]、エネルギー収集装置における屋根ふき[E04D13/18]の分類などにも、太陽電池関連の出願が見られます。

IPC 定義
H01L 半導体装置,他に属さない電気的固体装置
H01L31/00 赤外線,可視光,短波長電磁波または粒子線輻射に感応する半導体装置で,これらの輻射線のエネルギーを電気エネルギーに変換するかこれらの輻射線によって電気エネルギーを制御するかのどちらかに応用されるもの;それらの装置またはその部品の製造または処理に特有な方法または装置;それらの装置の細部
H01L31/04 ・光起電[PV]変換装置として使用されるもの
H01L31/042 ・・PVモジュールまたは1つ1つのPV素子のアレイ
H01L31/05 ・・・PVモジュール内のPV素子間の電気的相互接続手段,例.PV素子の直列接続
H01L31/06 ・・少なくとも1つの電位障壁または表面障壁に特徴のあるもの
H01L31/07 ・・・電位障壁がショットキー型のみからなるもの
H02J 電力給電または電力配電のための回路装置または方式;電気エネルギーを蓄積するための方式
H02J7/00 電池の充電または減極または電池から負荷への電力給電のための回路装置
H02J7/34 ・電池と他の直流源の双方を使用する回路網内での並列運転,例.バッファリングの提供
H02J7/35 ・・光電池をもつもの
H02S 赤外線,可視光または紫外光の変換による電力発電,例.光起電[PV]モジュールを使用するもの
B62M 車輪付車両またはそりの乗手推進;そりまたはサイクルの動力推進;そのような車両に特に適合した伝動装置
B62M6/80 ・付属品,例.動力源;その配置
B62M6/85 ・・太陽電池
B60L 電気的推進車両の推進装置
B60L8/00 自然力,例.太陽または風,を動力供給源とする電気的推進装置
B64G 宇宙航行;宇宙航行体またはその装備
B64G1/00 宇宙航行体
B64G1/22 ・宇宙航行体の部品または,宇宙航行体に特に適合した装備品
B64G1/42 ・・動力供給システムの配置または適用
B64G1/44 ・・・輻射の利用,例.太陽電池の利用
E04D 屋根ふき;天窓;とい;屋根工事用工具
E04D13/00 屋根ふきと関連する特殊装置または器具;屋根排水
E04D13/18 ・エネルギー収集装置における屋根ふきの観点,例.ソーラーパネルを含むもの

※ …: H01L31/04の下位分類の記載は一部省略しています。
【表1.太陽電池に関する主なIPC分類】

 

4.太陽電池分野で中国特許の主な出願人

太陽電池に関する中国特許の出願人のうち、中国現地の出願人が9割以上を占めています。

外国籍出願人のうち、日本籍の出願人が2.8%あり、次はアメリカ籍の出願人が1.7%、韓国籍の出願人が1.2%、ドイツ籍の出願人が1.1%となっています。

太陽電池に関するCN特許出願人の国別割合
【図3.太陽電池に関するCN特許出願人の国別割合】

 

出願人ランキングを見ても、上位10社(大学を含む)は、2位のカナディアン・ソーラー以外は全て中国現地出願人で占められています(表2を参照)。

出願人(中国語表記) 公開
件数
 特許
生存率
有効
件数
審査中
件数
 無効
件数
本社
所在地
1位 国家電網
(国家电网公司国家电网有限公司)
2,562 74% 1,152 754  656 中国
2位 カナディアン・ソーラー
(阿特斯阳光电力集团有限公司, 苏州阿特斯阳光电力科技有限公司, 常熟阿特斯阳光电力科技有限公司)
1,423  86%  1,093 137 193 カナダ
3位 ジンコソーラー/Jinko Solar
(晶科能源有限公司, 浙江晶科能源有限公司)
830 82% 462 215 153 中国
4位 BOEテクノロジーグループ
(京东方科技集团股份有限公司)
764 88% 395 280 90 中国
5位 トリナ・ソーラー/Trina Solar
(常州天合光能有限公司)
749 51% 382 6 367 中国
6位 北京箔陽頂栄太陽光発電科術有限公司
(北京铂阳顶荣光伏科技有限公司)
655 94% 432 210 37 中国
7位 華南理工大学
(华南理工大学)
591 69% 267 141 184 中国
8位 漢能/Hanergy
(北京汉能光伏投资有限公司)
587 95% 441 115 31 中国
9位 海洋王照明
(海洋王照明科技股份有限公司,深圳市海洋王照明技术有限公司)
560 20% 111 0 449 中国
10位 ロンジ/LONGi Solar
(泰州隆基乐叶光伏科技有限公司)
500 97% 330 163 14 中国

※特許生存率:登録特許と審査中特許を含む。
※総公開件数の数値には特許公開/登録の重複が合併されておりますが、有効と審査中件数はDBの既存設定で一部重複が存在しております。

【表2.太陽電池に関する中国特許の出願人ランキング】

 

現地出願人の特許公開件数が明確に増加し始めたのは、2010年以後です。
最近10年の各出願人の年度別公開件数を図4に示します。

太陽電池に関するCN特許出願人の年度別公開件数推移

※図中の年度別の特許件数は、D公開/登録の重複があります。

【図4.太陽電池に関するCN特許出願人の年度別公開件数推移】

 
 
太陽電池に関するCN特許上位出願人の特許出願のIPC別付与状況を見ると、国家電網はH02J(電力給電/配電、電気エネルギーの蓄積方式)に関する発明が多いことに対して、その他の出願人はH01L(半導体装置)に関する発明が多いです(図5を参照)。

国家電網は、太陽光発電のインフラを備え、各社はその上の太陽光電池用半導体装置を提供するという役割分担が見られます。

太陽電池に関するCN特許出願人の特許出願IPC別付与状況
【図5.太陽電池に関するCN特許出願人の特許出願IPC別付与状況】

 

5.中国現地企業の情報

 

(1)国家電網

国家電網は中国国有の電力配送会社です。
主な業務は電力配送事業であり、中国における電力インフラ整備の役割も果たしています。
2020年末まで、太陽光発電と風力発電の容量は4.5億kWhとなっており、2030年までに、10億kWh以上増加することが計画されています。
図6のオレンジ色表記は太陽光発電の分布及び発電容量推移図です。

国家電網のクリーンエネルギー業務のイメージ図

出典:国家電網の公式HPより
※オレンジ-太陽光発電、緑-水力発電、青-風力発電
【図6.国家電網のクリーンエネルギー業務のイメージ図】

 

(2)ジンコソーラー/Jinko Solar

ジンコソーラー(晶科能源有限公司)は、2006年に設立されたPVメーカです。
100以上の国に製品を提供し、累積出荷量は70.0GWに達しています。2020年までの単結晶シリコンウェーハの生産能力は約22GWで、太陽電池の生産能力は約11 GWで、モジュールの生産能力は約31GWに達しています。

モジュールの正面と裏面とで同時に太陽光を吸収し発電する「両面発電技術」を採用しており、一般の片面発電技術より発電量を25%増やすことができます。
「ハーフセルモジュールテクノロジー」により各メイングリッドを流れる電流が半減し、モジュール内部の電力損失は1/4まで削減されます。ハーフセルモジュールには、ステッチ溶接技術が採用されています。

ジンコソーラーのPVプロジェクト

出典:ジンコソーラーの公式HPより
【図7.ジンコソーラーのPVプロジェクト】

 

(3)BOEテクノロジーグループ

BOEテクノロジーグループ(京东方科技集团股份有限公司)は、情報交換/スマートポート知能端末とIoTサービスを提供している巨大企業グループです。
2020年に、スマホ、タブレット、ノートPC、モニタ-、テレビの5つの分野における半導体ディスプレイの出荷量は世界1位であり、全世界への特許出願量は7万件超えています。また、クアルコムを含む複数の大手企業と戦略提携をしているようです。
この会社の特許の中には、太陽電池によりOLEDディスプレイに電力提供する出願が見られました。

2009年に「北京京東方能源科術有限公司」という子会社が設立され、太陽電池、PVシステム、風力発電システム及びそれらのパーツ等を経営しています。
2012年に北京で完了したPV発電プロジェクトは、110,000平方メートルの工場屋根に、21,276個の電池パネルが設置され、総設備容量は5,000KWに達し、当時の中国最大規模の太陽光PV屋上発電プロジェクトでした。
 

(4)トリナ・ソーラー/Trina Solar

トリナ・ソーラー(天合光能有限公司)は、1997年に中国常州市に設立された太陽光モジュールメーカーです。
100以上の国へ進出しており、累積出荷量は66GW以上になっています。
結晶シリコンセルの効率とモジュールの出力に関する開発では、20回以上も世界記録を更新しており、最先端の研究活動を行っています。具体的には、2018年に大面積6インチIBCセルの効率が25.04%に達し、2019年にN型i-TOPCon太陽電池の効率が24.58%に達し、N型多結晶i-TOPCon太陽電池の効率が23.22%に達したとされています。

トリナ・ソーラーは世界範囲内で2千件以上の特許を保有しています。
シンガポール太陽光研究所やオーストラリア国立大学、バレンシア工科大学等との合同研究もしています。

モジュール製品については、「Vertex/至尊」シリーズ670W/600W+/550W+/500W+高出力コンポーネント、「至尊小金剛」400W+分布式高出力コンポーネントなどがあります。PVステーション、知能システム、メンテナンス等を含むトータル太陽光ソリューションを提供しています。

トリナ・ソーラーのPVプロジェクト

出典:トリナ・ソーラーの公式HPより
【図8.トリナ・ソーラーのPVプロジェクト】

 

(5)北京箔陽頂栄太陽光発電科術有限公司

北京箔陽頂栄太陽光発電科術有限公司(北京铂阳顶荣光伏科技有限公司)は、2012年に設立された会社です。主に、太陽電池設備の開発、製造と、PV設備の設置やメンテナンス業務を行っております。
 

(6)漢能/Hanergy

北京漢能太陽光発電投資有限公司(北京汉能光伏投资有限公司)は、漢能グループ(Hanergy Holding Group)の子会社です。

漢能グループは世界最大級の太陽光薄膜発電企業であり、電池効率において複数の世界記録を更新したことがあります。
技術的には、ガリウムヒ素(GaAs)ダブルジャンクション薄膜電池の最高変換率は31.6%に、シングルジャンクション電池の最高変換率は29.1%に達します。
Solibroガラスベースの銅インジウムガリウムセレン化物(CIGS)薄膜電池モジュールの変換効率は22.92%に、MiaSoléフレキシブル銅インジウムガリウムセレン化物薄膜電池モジュールの変換効率は20.56%に、GSEフレキシブル銅インジウムガリウムセレン化物電池の効率は19.3%に、カルシウムチタン電池の効率は23.7%に、シリコンヘテロ接合(SHJ)電池の6インチシリコンウェーハの変換効率は25.11%に達するとされています。
 

(7)海洋王照明

海洋王照明(海洋王照明科技股份有限公司)は照明設備メーカーです。
太陽光発電の照明器具を開発、製造、販売しています。
 

(8)ロンジ/LONGi Solar

ロンジ(隆基乐叶光伏科技有限公司)は世界トップクラスのPV製造メーカーで、2016年から2018年までの単結晶モジュールの出荷量は世界1位でした。
今は年間30GWのソーラーウェーハおよびモジュール製品を提供しており、世界市場の1/4のシェアを占めているようです。

主な太陽電池製品には、Hi-MO 4、Hi-MO 4m、Hi-MO 5、Hi-MO 5m等があります。特にPERC電池モジュールに関しては、何度も世界記録を更新しています。
2021年5月に、ロンジグループは吉林電力株式有限公司と戦略協議を結びました。これは、太陽光発電所の運用と保守に関する技術サポート等を含み、新エネルギー分野で技術連携したことになります。

以上、太陽電池に関する中国特許動向及びメイン出願人の大まかな状況でした。
 

6.参考:分析対象とした母集団(検索式)

検索日:2021/5/11、検索対象: 特許・実用新案、使用DB: incoPat

検索式 件数
1. IPC=(H01L31/04 or H01L31/05 or H01L31/06 or H01L31/07 or H02J7/35 or H02S or B62M6/85) && 382,256
2. IPC=(B60L8/00 or B64G1/44 or E04D13/18) and TIABC=(太阳 or 太阳能 or 阳光 or 光 or 光伏 or 光敏 or 光电 or Sun or solar or sunlight or sunshine or photovoltaic) && 28,383
3. TIABC=(((太阳 or 太阳能 or 阳光 or 光 or 光伏 or 光敏 or 光电)(5w)(电池 or 发电 or 蓄电 or 充电 or 储电 or 芯片 or 面板))or ((Sun or solar or sunlight or sunshine or photovoltaic) (5w) (battery or batteries or cell or cells or generation or generat* or generate or generator or storage or storag* or charging or charge or charge* or chip* or panel*))) and IPC=(H01L or H02J) 415,975
4. #1 or #2 or #3 598,640
5. 公開優先で出願番号合併 中国(200,198)
日本(76,036)
アメリカ(60,588)
韓国(39,152)
世界知的所有権機関(28,452)
欧州特許庁(18,718)
ドイツ(14,150)
(以後省¥)

 

 

太陽電池の技術動向把握には的確な中国特許分析が重要

今回の調査は、太陽電池分野での中国特許出願状況を俯瞰することを目的としているため、簡易的な検索による分析結果に過ぎません。
より精度の高い特許情報を確認するには、具体的な技術課題により対象分類と中国語キーワード(技術用語の網羅とシソーラス[類義語]の確認)をしっかりと選定したうえでの、本格的な検索が必要となります。

具体的な技術テーマについて中国特許の分析をしてみたい方は、お気軽に日本アイアールの特許調査部までお問い合わせ下さい。
 


中国の技術情報調査、特許調査・分析サービスは日本アイアールまでお気軽にお問い合わせください。


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