バイオ燃料とは?主な種類と原料、処理工程、課題と可能性などの要点まとめ解説
1.カーボンニュートラルとバイオ燃料
「カーボンニュートラルで、CO2実質排出量0」とは、図(A)に示すように「実際のCO2排出量に対して、植物などのCO2吸収による低減量で、CO2がプラスマイナスで0」になることを意味します。
バイオ燃料は、石油に対してエネルギーの多様化を行う代替燃料の一つですが、植物由来のバイオ燃料は、「カーボンニュートラル」にも貢献できます。ちなみに、タピオカの原料であるキャッサバ(イモの一種)は、植物由来バイオ燃料の原料としても使うことができます。
今回のコラムではバイオ燃料の可能性と課題について考えてみたいと思います。
2.バイオ燃料の種類と原料、必要処理工程
燃料は原料に対して必要な処理工程を加え製造しますが、バイオ燃料などの原料は「バイオマス資源」(biomass、生物由来の資源)と呼ばれます。
図(B)に、主なバイオ燃料について、原料と必要処理工程の事例をまとめました。
キャッサバは、タイでバイオエタノールの製造のために使用されています。
バイオ燃料の基礎知識と次世代バイオ燃料
バイオエタノール、バイオメタノールあるいはバイオディーゼル(BDF、Bio-Diesel Fuel)は、ガソリンや軽油などの既存燃料と混合して用いられ、バイオ燃料の種類と含有パーセンテージを組み合わせて、E5、E10、E85、E100、M100、B5、B20、B100(E:エタノール、M:メタノール、B:バイオディーゼル)などのように呼ばれます。
自動車用燃料(ガソリン、軽油)や航空機燃料(ジェット燃料)は、炭化水素(炭素原子と水素原子だけでできた化合物、hydrocarbons)燃料です。
一方、バイオエタノールやバイオディーゼルは酸素を含む化合物で「含酸素燃料」と呼ばれます。
これに対して、水素化処理などを加え、炭化水素燃料に変えたバイオ燃料は「次世代バイオ燃料」と呼ばれ、商用化に向けた開発が進められています。
次世代バイオ燃料原料の例としては、セルロース系バイオマス、微細藻類、都市ごみ、廃食油・植物油などがあります。微細藻類の一つとして、ミドリムシ(Euglena 、ユーグレナ)も使われています。
3.LCAと環境負荷評価
電気自動車や燃料電池自動車(水素と空気中酸素により車両で発電)は、エネルギー使用時、すなわち走行中はCO2を発生しません。
しかし、電気エネルギーや水素の生成工程でCO2を発生するならば、その生成工程でのCO2排出量にも配慮が必要です。
LCA(Life Cycle Assessment)は、製品やサービスのライフサイクルを通じた環境への影響を評価する手法です。(※LCAは、ISO14040/40により規格化されています。)
LCAでは、図(C)に示すように、ライフサイクルを4段階に分けて、環境負荷を評価します。
4.バイオ燃料の課題と可能性
バイオ燃料の課題を、LCAの考えと同様に、(使用時だけでなく)ライフサイクルの各過程でまとめたものが、図(D)です。
これらの課題に対しては、個別対策以外に、農業、製造業にIoT、CPS(*)などの技術を活用したトータルシステムでの対策を行い、効率の高い生産・製油システム、燃焼と環境に優しい工程、ロバスト性(頑健性)の高い装置、そして循環型のシステムを実現することが望まれます。
(*)CPS(Cyber-Physical System):実際の状態を様々なセンサで収集した大量の情報を用いて、サイバー空間、すなわちバーチャルワールドでモデル化やシミュレーションを行い、リアルワールドの制御を行う技術。
SDGsとバイオ燃料
国連で決められた国際目標であるSDGs〈Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標〉では、17のグローバル目標を定めています。
そのうちの7番目にあるのが「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保」であり、そのための手段として「2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大」と定められています。
太陽光発電や風力発電、バイオマスなど10種類は「新エネルギー」と呼ばれ、これら新エネルギーは法令に定められた「再生可能エネルギー」です。
今後SDGsに関連する産業、製品、そしてビジネスが成長していき、バイオ燃料も循環型社会を作っていくための技術分野の一つとして発展するものと思われます。
現在、自動車の電気自動車化が進められていますが、航空機の電気飛行機化は困難です。
航空機では、ジェット燃料の代替燃料としてバイオ燃料を使用してCO2削減を行うという動きがあります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
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