3分でわかる技術の超キホン Beckmann転位反応と医薬品

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ベックマン転位反応の基礎知識

Beckmann(ベックマン)転位反応は、アミド結合やラクタム構造を持つ化合物の合成に多く用いられている反応で、転位を伴う反応機構は化学反応としても興味深いものといえます。
また、シクロヘキサンオキシムからカプロラクタムへの転位反応は、ナイロンの原料合成法としても広く知られています。

今回は、Beckmann転位反応に関連する化学反応や医薬品をご紹介いたします。

1.Beckmann転位反応とは?

「Beckmann転位反応」は、アルデヒドまたはケトンのケトオキシムを酸触媒で処理することによりアミドが得られる反応です。

転位を伴う反応で、1886年にE.Beckmannによって発見されたことから「Beckmann転位」として知られています。転位には、濃硫酸や五塩化リン、ルイス酸が多く用いられます。

Beckmann転位反応1

反応機構としては、ヒドロキシ基の脱離、アルキル基の転位、水の付加、N-置換イミドの互変異性によるN-置換アミドが得られると考えられています。

Beckmann転位反応2

Beckmann転位は、転位によって形成されたアミドの加水分解によって得られた酸とアミンを同定することにより、ケトンの構造を決定するためにも使用されます。
 

2.Beckmann転位反応の発見

ライプチヒ大学の講師であったBeckmannは、ハッカ成分のメントールの酸化によるメントンの研究を行っていました。
メントンオキシムがイソニトロソ結合を有しているかを確認するために、同じオキシム構造をもつベンゾフェノンオキシムを五塩化リン等で反応をさせたところ、予想していなかったベンズアニリドが得られました。
この反応をきっかけに、ケトオキシムから酸アミドへの転位が酸触媒により起きること、アルキルケトオキシムでも同様なアニリドが得られること等を見出されたということです。
 

3.Beckmann転位反応の利用例

Beckmann転位反応が用いられた報告をいくつかご紹介いたします。

(1)医薬品

① ベナゼプリル

ベナゼプリルは降圧剤です。
生体内で活性代謝物であるジアシド体(ベナゼプリラート)に速やかに変換されて、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を発現するプロドラッグとして知られています。
ベンゾ畔ピン骨格の合成にBeckmann転位反応が用いられています。

ベナゼプリル

 

② グアネチジン

グアネチジンは、交換神経節後遮断薬に分類される降圧剤ですが、日本では販売が中止されています。

グアネチジン

③ コデイン

コデインは、鎮痛、鎮咳作用のあるオピオイドとして知られている薬物です。

コデイン

④ スパルテイン

スパルテインは、エニシダから抽出されるアルカロイドで、クラス1a抗不整脈薬、ナトリウムチャンネル阻害作用があるとされています。

パルテイン

 

(2)天然物その他

① イボガミン

イボガミンは、イボガ(キョウチクトウ科)に含まれるアルカロイドで、薬物依存症の基礎研究に用いられた物質といわれています。

イボガミン

② ステロイド

ステロイド17-オキシムを用いたベックマン転位によるステロイドの合成方法の報告があります。

ステロイド

 

4.Beckmann転位反応に関する特許・文献の調査

(1)Beckmann転位反応に関する特許検索

日本特許庁の「J-PlatPat」を用いて、Beckmann転位反応を検索してみました。(調査日:2021.7.21)
 

  • 全文: ベックマン転位/TX+ Beckmann転位/TX ⇒ 2106件
  • 全文: [ベックマン転位/TX+Beckmann転位/TX] *A61K/FI ⇒ 224件
  • 請求範囲: ベックマン転位/CL+ Beckmann転位/CL ⇒ 226件
  • 請求範囲: [ベックマン転位/CL+ Beckmann転位/CL]*A61K/FI ⇒ 11件

※FIの「A61K」は医薬品に関する主要な分類(サブクラス)です。

この中には、「エリスロマイシンAオキシム溶媒和物」「15員ラクタム系からの新規なケトライド」など、Beckmann転位反応を用いた製法を用いた特許文献が検出されました。
 

(2)Beckmann転位反応に関する文献調査

JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」を用いて、Beckmann転位反応について検索してみました。(調査日:2021.7.21)
 

  • 全文: ベックマン転位 or Beckmann転位 ⇒ 285件
  • 抄録: ベックマン転位 or Beckmann転位 ⇒ 35件

ざっとタイトルを見てみると、「シクロヘキサノンオキシムの気相Beckmann転位反応」「塩化シアヌルを用いたベックマン転位の反応機構に関する理論的研究」「チオフェン系およびフラン系ケトンオキシムの Beckmann 転位」といった文献が見受けられました。

 

特許や文献の内容に興味がある方は、ぜひデータベースにアクセスして確認してみてください。

ということで今回は、Beckmann転位反応の概要とこれを用いた医薬品について簡単にご紹介しました。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
 

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