3分でわかる技術の超キホン 「タイヤ」の基礎知識まとめ(種類/仕組み/用語/技術開発のトレンド等)
「タイヤ」とは、陸上を走行する輸送機械の車輪であって、路面に接し、かつ交換できる部分の総称です。
広義には、鉄道車両の車輪もタイヤに含まれますが、一般には、自動車、オートバイ、自転車などの空気入りタイヤを指します。
以下、空気入りタイヤ、特に自動車用の空気入りタイヤを中心に簡単に解説します。
目次
1.タイヤの種類
(1)用途別の分類
タイヤを用途別に分類すると、自動車用タイヤ、オートバイ用タイヤ、建設・鉱山車両用タイヤ、農業機械用タイヤ、航空機用タイヤ、自転車用タイヤなどがあります。これらは主に空気入りタイヤです。
(2)構造別の分類
構造別にみると、主に、ラジアルタイヤとバイアスタイヤに分けられます。
【図1 構造別にみたタイヤの違い】
図1(a)のように「ラジアルタイヤ」は、タイヤの骨格を形成しているカーカスをタイヤの中心から放射状(radial)に配置したものです。
自動車用タイヤは、ほぼラジアルタイヤです。
図1(b)のように「バイアスタイヤ」は、カーカスを斜め(bias)に配置したもので、モーターサイクル用、産業車両用、建築車両用、農業機械用として使用されていますi*1)。
このほかにも、「スタッドレスタイヤ」や「ランフラットタイヤ」などの種類があります。
「スタッドレスタイヤ」は、積雪路や凍結路などを走行するために開発されたスノータイヤの一種です。以前使用されていたスパイクタイヤのスタッド(スパイクピン)がない(レス)タイヤということでこの名称がついています。
スタッドレスタイヤのトレッド面(接地面)にはノーマルタイヤに比べて深い溝が形成され、溝によって形成されたブロックにはサイプと呼ばれる複数の細かい溝が形成されているのが特徴です。使用されるゴム自体もノーマルタイヤに比べて柔らかい素材が使用されています。
「ランフラットタイヤ」は、サイドウォールの剛性を強化することにより空気圧がゼロの状態でも形状を維持することができ、パンクしたとしても走行可能なタイヤを指します。
サイドウォール部の内面側に補強ゴムが一体化され、この補強ゴムの剛性により、たとえパンクしたとしてもタイヤ形状を維持することができるようになっています。
2.タイヤの仕組みと名称(用語)
タイヤには、場所によって名称があります。タイヤの仕組みについて図2を参照して説明します。
【図2 タイヤの子午線断面図】
タイヤの表面は、接地面である①トレッド部、それに続く②ショルダー部、③サイドウォール部、そしてリムに固定される④ビード部となっています。
構成部品でみると、タイヤの骨格部となる⑤カーカス、レッド部でカーカスの外側に配置される⑥ベルト、空気が入れられる内部空間に表出する⑦インナーライナー、リムに固定するための⑧ビードワイヤー、ビードワイヤーを補強する⑨ビードフィラーや⑩チェーファーなどを備えています。
ここで、各部、各構成部品について簡単に説明します。
① トレッド部
路面に接触する部分であり、路面からの衝撃や外傷から内部を守る役割を果たしています。
表面には模様(トレッドパターン)が形成されています。トレッドパターンには、グリップ性能や排水性能を高めたり、摩耗を抑制したりするために様々な工夫がなされています。
トレッドパターンの主要なものとしては、図3に示す4パターンがあります。
図3の左から順に「リブ」、「ラグ」、「リブラグ」、「ブロック」と呼ばれています。
【図3 主なトレッドパターンの概略図】
- リブ:タイヤ周方向に連続する溝をタイヤ幅方向に複数形成したものです。このタイプのトレッドパターンを備えたタイヤには、操縦安定性に優れ、転がり抵抗が小さく、低騒音で、排水性に優れ、横滑りが少ないという特徴があります。
- ラグ:タイヤ周方向に交差する横方向に溝を形成したものです。このタイプのトレッドパターンを備えたタイヤは、駆動力、制動力、耐カット性に優れているのが特徴です。
- リブラグ:リブとラグを組み合わせたものです。つまり、上記トレッドパターンの両方の良いところを取り入れているのが特徴です。
- ブロック:独立したブロックを備えたものです。雪路、泥ねい地での操縦性安定性に優れています。
自動車用タイヤでは、これらのトレッドパターンを組み合わせた種々の設計がされています。
② ショルダー部
タイヤの肩に当たる部分であり、カーカスの保護と、走行時に発生する熱の発散という働きがあります。
③ サイドウォール部
タイヤのなかで最も大きく屈曲する部分であり、カーカスを保護し、伸びを防ぐ役割があります。
表面にはタイヤサイズや偏平率、速度記号などの情報が刻印されています。
④ ビード部
カーカスのコードの末端を支持し、タイヤをホイールのリムに固定する部位です。
⑤ カーカス
タイヤの骨格を形成するものです。
繊維やスチールでできたコードをゴムで被覆し、シート状としたものコード層で構成されています。
放射状又は斜めに貼り合わせた構造で、内部空間の空気圧を維持し、荷重や衝撃に耐えてタイヤ構造を保持する役割があります。
⑥ ベルト
ラジアルタイヤのトレッド部とカーカスの間に配置されるコード層です。
カーカスを締めつけて、トレッド部の剛性を高める役割を果たします。
⑦ インナーライナー
チューブレスタイヤの内面に貼り付けられるゴム層の部位です。
内部空間の気密性を確保する役割があります。
⑧ ビードワイヤー
スチールワイヤー(鋼線)を束ねてゴムで被覆したリング状の補強部材です。
カーカスコードの引っ張りを受け止めてリムに固定する役目があります。
⑨ ビードフィラー
ビード部の剛性を高めるための部位で、断面が三角形のゴムで構成されています。
⑩ チェーファー
カーカスがリムに接触して損傷することを防止するための補強コードです。
3.タイヤにおける技術開発のトレンド
タイヤの基本機能には、主に次の4つがあります。
- 負荷荷重機能(車両の荷重を支える)
- トラクション・ブレーキ機能(駆動力、制動力を路面に伝える)
- 操縦性能・安定性能(方向を転換し、維持する)
- 乗り心地性能(路面からの衝撃を緩和する)
技術開発のトレンドとしては、これら4つの機能だけでなく、ほかの機能を発揮できるものに関心が高まっているようです。
(1)低騒音化
自動車のEV化に伴い、走行時に発生する騒音をさらに抑制する必要が生じています。
例えば、トレッドパターンの形状に工夫を凝らすことにより、パターンノイズを抑制しようとしています。
また、タイヤの回転により、トレッドパターンを構成するブロックが路面から離れるときに滑りが発生し、ノイズを発生させますが、ブロック形状の最適化やゴムの粘弾性特性の変更により対処しようとしています。
(2)エアレスタイヤ
空気を入れなくても走行できるタイヤです。
スポーク構造のゴムが空気の代わりとなって路面からの衝撃を吸収します。
(3)タイヤセンシング技術
トレッド部の内側に加速度センサを設け、トレッド部の振動を検出することにより、路面状態を判定します。
4.主要なタイヤメーカー
世界のタイヤメーカーを売上順に見ると、2021年にブリジストン社が公表しているデータ(2019年の順位)では次のようになっています※引用2)。
- ミシュラン:15.0%
- ブリヂストン:14.6%
- グッドイヤー:8.2%
- コンチネンタル:6.8%
- 住友ゴム:4.2%
- ピレリ:3.6%
- ハンコック:3.4%
- 横浜ゴム:2.9%
- 正新:2.3%
- 中策ゴム:2.1%
- ジーティータイヤ:1.9%
- トーヨータイヤ:1.8%
- その他:33.2%
首位のミシュランがフランスのメーカーであるように、比較的ヨーロッパのタイヤメーカーが上位に君臨しています。一方で、いわゆる「アジアンタイヤ」の勢力が年々高まっていることに目が離せません。
(アイアール技術者教育研究所 T・N)
≪引用文献、参考文献≫
- 1)日本グッドイヤー 公式サイト「ラジアル構造とバイアス構造」(goodyear.co.jp)
- 2)株式会社ブリヂストン 「ブリヂストンデータ2021」
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/library/data_book/pdf/BSDATA2021.pdf