【早わかり電子回路】タイマーICの概要 [機能特化アナログIC紹介①]
1.オペアンプ以外のアナログIC
当連載の前回の記事“IC(集積回路)の種類について総整理!“の中でご紹介したICのうち、今回はオペアンプ以外のアナログICをとり上げます。
実は、オペアンプがあれば、ほとんどのアナログICの機能は、実現できてしまいます。
ただ、より機能に特化した専用のICが存在します。今回はその一つとして「タイマーIC」をご紹介します。
2.タイマーICとは
「タイマーIC」とは、様々なタイマーやパルス生成、発振回路などの応用に使用されるICです。
タイマーICとしての代表は「NE555」というICです。
このICは1972年にシグネティクスによって発表され、その安さ、使いやすさ、安定性によって世界中で広く使われました。
タイマーIC、NE555は息の長いICの一つで、現在でも多くの半導体メーカーで製造され、入手も容易です。
外付け部品が必要ですがその分回路の拡張性があり、便利に使われている原因でしょう。
抵抗とコンデンサにより一定時間の発振ができますが、この値を大きくするとタイマーになり小さくすると発信器になります。
このICは、一定時間後にONするタイマー機能が、外付けのコンデンサと抵抗で自由に変更できるのが特徴です。また、回路を繰り返しモードにすることで、ON/OFFの点滅時間を早くすると一定の発振(音)を作る事もできます。
タイマーICの特徴
タイマーICには次のような特長があります。
- 8ピンのDIPで小型化されている。
- 抵抗とコンデンサで好きな時間(周波数)の定数を簡単に設定できる。
- 出力がオープン・コレクターなので大きな負荷(リレー・LED・ランプなど)を直接に駆動可能。(最大200mAまで可)
NE555の用途は、主にタイマー回路と発振回路です。
動作電源電圧も4.5V~15Vと範囲が広くて使いやすいものです。
消費電力を抑えたC-MOS版の555シリーズもあり、電源電圧は1.5Vから動作保証しています。ただし、出力電流は最大100mAまでとなります。
外付けパーツの算出方法・使い方は、オリジナル版555、C-MOS版共に、全く同じです。
図1に主なメーカーと製品名を記載します。
メーカー | 製品名 | 動作電圧など |
NXP Semiconductor | ICM7555 | 3-16V 500KHz |
Texas Instruments | NE555/SE555 | 4.5-16V (SE555 4.5-18V) |
STMicroelectronics | NE555/SE555 | 4.5-16V (SE555 4.5-18V) |
新日本無線 | NJM555 | 4.5-16V |
Texas Instruments | LMC555 | 1.5-12V 3MHz |
【図1 タイマーICの主なメーカーと製品名】
タイマICの回路の例
図2は、NE555を発振回路として使う場合の標準的な回路です。
【図2 発振回路の例】
図2において、3ピンの出力波形がHレベルになっている時間TH、Lレベルになっている時間TL、周波数f、デューティー比は次式で求められます。
「デューティー比」とは、1周期のうちHレベルになっている割合のことをいいます。
TH=TLならばデューティー比は50%です。
TH = 0.693 × (Ra + Rb ) × C 〔秒〕
TL = 0.693 × Rb × C 〔秒〕
周波数f = 1.44 / (( Ra + Rb + Rb ) × C ) 〔Hz〕
デューティー比 = ( TH / ( TH + TL )) × 100 〔%〕
※係数 0.693、1.44 はそれぞれ
loge2 = 0.69314…
1/loge2 = 1.4426…
図2において、例えば、
Ra = 50KΩ、Rb = 200KΩ、C = 0.1μF のときの発振周波数fは、
f = 1.44/(( 50 ×1000 + 2 × 200 ×1000)×0.1 × 10-6)
= 32 [Hz]
となります。
以上、今回は機能特化アナログICとして、「タイマIC」の概要をご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)