洗浄技術と洗浄プロセス最適化の総合知識
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当連載コラムでは、半導体製造において使用される各製造装置の概要を解説します。
今回は、「洗浄装置」について説明します。
目次
「洗浄」とは、「化学的・物理的な性質を利用して材料表面に付着している不要なものを取り除き、材料表面を清浄な状態に保つこと」と定義されます。
洗浄は、各プロセスでの処理前後に必ず行われるため、洗浄装置は前工程で最も使用頻度の高い装置です。
装置そのものの構造は比較的単純ですが、さまざまな種類の洗浄装置が必要であり、クリーンルーム内のかなりの床面積を占めています。
半導体製造における洗浄の目的は、第一に、半導体の表面を清浄に保つということが挙げられます。
前工程ではシリコンウエハー上に構造を積み上げてデバイスを作っていきますが、このとき、表面に異物があると障害となって、うまく構造を積み上げていくことができません。
また、うまく積み上げることができたとしても、この異物がデバイスの特性を狂わせてしまい、設計の意図を達成することができなくなります。
[※前工程については、半導体プロセスの「前工程」と「後工程」の概要を解説をご覧ください。]
なお、補助的にエッチング処理を洗浄装置で行う場合があります。
「エッチング」とは、化学的にウエハー表面を削って、凹凸を作ることです。
大量に一括してエッチングを行う必要がある場合には、洗浄装置のエッチング機能を使うことがあります。
洗浄の対象物(除去対象物)には次のようなものがあります。
「パーティクル」とは、空気中に浮遊している微小な塵のことです。
集積回路の集積度が上がっているために、問題となるパーティクルの大きさも、極めて小さくなっています。
このため、工程の要所で行われる洗浄プロセスそのものも高いクリーン度が求められます。
パーティクルが小さければ小さいほど付着した際に取れにくくなるので、洗浄液(薬液)に超音波を当てて物理的な振動を与える洗浄装置が多くなっています。
主に、搬送装置などから発生します。また製造装置の筐体なども発生源となります。
搬送ロボットなどは発塵性が極めて低く抑えられていますが、それでも歯車のかみ合わせなどによって金属のパーティクルが発生してしまう場合があります。
有機物や細菌も洗浄の対象となります。
汚染源となる有機物は主に人間の呼吸や汗、皮膚からの脱落物などです。また、細菌は空気中に浮遊しており、クリーンルームのフィルタだけでは取り切れないものが侵入してきます。
油脂も洗浄の対象となります。
シリコンウエハーを空気中に放置していると、ウエハー表面のシリコン結晶が空気中の酸素を取り込んで、酸化シリコンの膜を形成します。これを「自然酸化膜」といいます。
自然酸化膜は絶縁体であり、再汚染を防止する機能があります。そこで、自然酸化膜を積極的に利用しますが、除去する必要があるときには洗浄の対象となります。
半導体製造に用いられる代表的な洗浄プロセスに「RCA洗浄」と呼ばれるものがあります。
RCA洗浄は複数の薬液を使用して洗浄を行うプロセスです。
ちなみに「RCA」とは、この洗浄プロセスを開発した米国RCA社に由来しています。
RCA洗浄のプロセスと洗浄に用いる薬液の種類は以下の通りです。
まず、SPMと呼ばれる薬液を使い、有機物を除去します。SPM洗浄は、有機物を洗浄する様子が、獲物に群がるピラニアの様に見えることから「ピラニア洗浄」とも呼ばれています。
つぎに、APMと呼ばれる薬液を使います。この薬液によって、パーティクルと有機物を除去します。APM溶液はウエハー表面にパーティクルが付着しようとする力を弱め、パーティクルが剥がれるのを促進します。さらに、このAPM溶液に超音波による物理的な振動をかけることによって、パーティクルを除去します。
DHFと呼ばれる薬液を使い、金属や酸化物(酸化膜)を除去します。フッ酸は強酸で金属を溶かす性質があり、そのままではシリコンも溶かしてしまいます。そこで、純水にフッ酸を少量混ぜたものを使用して、ウエハー表面のみに作用するように調製しています。
HPMと呼ばれる薬液を使い、残った金属や酸化物を除去します。そしてウエハー表面に不働態化層(酸化膜)を再形成しパーティクルや金属が再付着するのを抑制します。
最後にHPMで処理されたウエハーは純水による洗い流し(リンス工程)の後、乾燥工程に入ります。乾燥工程が終了すると洗浄プロセスの終了となります。
洗浄装置に投入されるウエハーは乾燥しています。
先に説明したRCA洗浄においても、第5段階で乾燥のプロセスがあるように、洗浄装置から出てくるウエハーも乾燥している必要があります。この原則を「ドライイン・ドライアウト」といいます。
洗浄の各段階の間には純水によるリンス工程が挿入されており、次の段階への薬液の持ち出しを抑制するように構成されています。さらに、使用後の薬液は、回収して処理を行い、できるだけ再利用するようになっています。
各プロセス終了後には必ず残渣やチリなどが発生し、ウエハーに付着します。そこで各プロセス間で洗浄を入念におこない、次のプロセスに残渣やチリを持ち出さないことが求められています。
これが、洗浄プロセスを各工程間で頻繁に行う必要がある理由です。
また、薬液の混合比率や洗浄プロセスの順番、必要なプロセスの選択は半導体メーカーによって異なっており、その具体的な内容は厳重な企業秘密となっている場合が多いです。
次回は、洗浄装置を例に「バッチ式」と「枚葉式」について解説します。
(アイアール技術者教育研究所 F・S)