3分でわかる技術の超キホン クロスカップリング反応とは③(医薬品・農薬分野での応用例)
クロスカップリング反応は、いろいろな分野で活用されています。前回のコラムでは具体的に電子材料分野でのクロスカップリング反応の利用例を取り上げました。
今回も引き続きクロスカップリング反応の応用例で、医薬品・農薬分野での利用例をご紹介します。
1.医薬品
多くの医薬品がクロスカップリング反応によって製造されています。ここでは、ロサルタン、バルサルタンを取り上げてみます。
1)ロサルタン
ロサルタンは、血圧降下剤としてよく知られている医薬品ですが、このロサルタンの中間体の製造にパラジウム触媒を用いたクロスカップリング反応が使用されています。
→→→ロサルタン
クロスカップリング反応を用いることによって、製造コストの低減が可能になりました。
2)バルサルタン
同様に血圧降下剤と知られているバルサルタンの中間体の合成にもクロスカップリング反応が使用されています。
→→→バルサルタン
従来の合成法では、中間体を製造するのに5段階必要としていましたが、クロスカップリング反応により1段階で合成できるようになり、製造工程の短縮がなされました。
3)アタザナビル
抗レトロウィルス薬としてHIV/エイズの治療と予防に用いられる医薬品で、同様に中間体にクロスカップリング反応が使用されています。
→→→アタザナビル
4)イマチニブ
慢性骨髄性白血病等に用いられる抗がん剤ですが、この薬の合成にもクロスカップリング反応が使われています。
→→→イマチニブ
2.農薬
1)ポスカリド
ボスカリドはアニリド系化合物の殺菌剤であり、ミトコンドリア内膜のコハク酸脱水素酵素系複合体の電子伝達を阻害することで灰色かび病、菌核病に効果があります。我が国では2005年1月になす、きゅうり、りんご及びなし等を対象に初めて登録されています。ポスカリドの中間体にクロスカップリング反応が使用されています。
→→→ポスカリド
2)プロスルフロン
スルホニルウレア系の除草剤です。植物体内でのアミノ酸の生合成を阻害するにより作用すると考えられ、一年生広葉雑草に効果があるとされています。
プロスルフロンの中間体にもクロスカップリング反応が使用されています。
→→→プロスルフロン
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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