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不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
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流量を検出するセンサの事例として、自動車用の吸入空気量センサ、すなわち「エアフロセンサ」(エアフロメーター、マスフローセンサ)について取り上げてみたいと思います。
目次
エアフロセンサ特有の必要特性とセンサとしての必要な特性を挙げると以下のようになります。
また、性能や耐久信頼性以外の必要特性として以下などもあります。
流量センサで検出する対象流体としては、気体、液体、スラリー(泥状粒子が混ざり込んだ液体)がありますが、エアフロセンサの検出対象は空気です。
その方式には、フラップ式、カルマン渦式、ホットワイヤ式、ホットフィルム式、およびピトー管式と呼ばれるものがあります。
以下に各方式の特徴を簡単に説明します。
バネで押し付けられ吸気管を塞ぐように配置されたフラップが空気の動圧によって押し開かれ、そのときの開口量が空気量に比例することを用います。
実際にはフラップ開口角度をポテンショメータ(回転位置センサ)で検出して、空気量との相関により空気量を検出します。ここでの空気量は体積流量のため、質量流量にするためには、圧力と温度の情報が必要になります。
空気脈動がる場合には、センサフラップの動きの追従性が検出精度に影響を与えることとなります。
流路内にカルマン渦発生柱が設けられ、発生するカルマン渦の数が流速の大きさに比例することを用います。
カルマン渦を数えるために超音波発信器と超音波センサーを組み込みます。
カルマン渦の発生した空気の流れに超音波を当てると渦の数に応じて変化する超音波波形を検出しパルス変換することで周波数を計測出力します。出力周波数の比例変数として検出されるのは空気速度ですので、フラップ式と同様に質量流量にするためには、圧力と温度の情報が必要になります。
超音波センサーの替わりにフォトインタラプタ(透過型フォトセンサ)と呼ばれるものを用いるタイプもあります。このタイプは、カルマン渦発生時の圧力変化を金属箔でとらえ、金属箔の変形振動数をフォトインタラプタでとらえます。
「ホットワイヤ式」も「ホットフィルム式」も基本原理は同じで、流路にさらされた抵抗体の抵抗が空気の流れによる冷却効果で温度が変わることを用います。
ホットワイヤ式では抵抗体として白金ワイヤを、ホットフィルム式では厚膜技術構成されたフィルムを使用します。抵抗体は、空気流量に応じて温度を変えるというセンシング機能とともに、通電によるヒーター機能をもちます。
空気流によって変化した温度を一定温度にするためのヒーター電流量を知ることで空気流量を検知します。
電流量をとらえるために計測するのは抵抗体両端部の電圧です。白金は抵抗の温度特性が比較的直線に近いため適用されます。
フラップ式と比較すると、流路における流れ抵抗損失を小さくできます。
ピトー管式ではベルヌーイの式の原理を用います。
センサ部は二重管構造であり、内管は先端部に、外管は側面に、それぞれ圧力計測のための穴があり、内部の圧力計により二か所の圧力差を計測することができます。
先端部を流れに対向するように配置すると、先端穴内部では全圧がかかり、側面穴内部では静圧がかかります。これら二つの圧力の差が流れの動圧となるため、ベルヌーイの式を用いて動圧から流れ速度をもとめ、流路断面積とで流量を検知することができます。
空気自体の圧力を計測しているので、空気中のダストや水分(湿度)の影響を受けません。
ピトー管式以外のセンサでは、計測外乱の一つとして空気中のダストがありますが、ダスト質量と空気質量の慣性力の差を利用し、流路の工夫でダストを検出部に導かないようにすることができます。(簡単に言えば、流路を急カーブにすれば、空気は曲がれますが、ダストは直進を続けカーブに当たります)
エアフロセンサで検出したいのは時間あたりの空気体積ではなく時間あたりの空気質量です。
圧力や温度などの環境条件の影響に対応する方法としては、これらの影響を受けにくい方式にするか、圧力センサや温度センサをエアフロセンサに搭載して、これらセンサにより圧力や温度の影響を補正するという方法があります。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・N)
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