3分でわかる技術の超キホン 毒性・発がん性を示す恐ろしい環状ペプチドは?
前回の連載コラムでは、医薬品に関連する環状ペプチドをご紹介しましたが、今回は、毒性を示す環状ペプチドや発がん性を示す環状ペプチドをご紹介いたします。
意外にも身近に毒のある環状ペプチドがあったりするのです。
α-アマニチン(α-amanitin)
アマニチンには数種類(アマトキシン類 amatoxins)ありますが、代表的なのは、タマゴテングタケ等の生産する毒素であるα-アマニチンです。8つのアミノ酸が結合した環状ペプチドで、システインとトリプトファンの側鎖がくっついてしまったような、妙な構造をとっています。
α-アマニチンはRNAポリメラーゼIIに結合し、タンパク質の合成に必要なmRNAの合成反応を阻害することで細胞組織を壊死させます。症状が出るのが遅く、症状が出てからの処置が困難とされています。
きのこ1本食べただけで致死量に達するとされ、さらに、解毒剤は存在しないという大変恐ろしい毒です。
きのこによる死亡例の9割がアマトキシン群のキノコによるものとの報告があります。
ミクロシスチン (アオコ毒)
公園などで時々アオコが発生したりしますが、アオコはミクロキスティスという藍藻類の藻が異常に繁殖したものです。
このミクロキスティスの中にはミクロシスチンという毒を産生するものがあります。
ミクロシスチンは、7個のアミノ酸からなる環状ペプチドで、急性毒性として肝毒性、慢性毒性として肝臓がんの発がん促進性があります。
ミクロシスチンは種類になって毒性の強さが異なるとされています。
モロイジン
オーストラリア北東部の熱帯雨林に自生する、ギンピ・ギンピという植物は、イラクサ科に属する被子植物です。ギンピ・ギンピ全体を刺毛が覆っており、この刺毛に触れると有毒な神経毒が送り込まれます。
毒の正体は、トリプトファンとヒスチジンが希なC-N結合で繋がった二環式オクタペプチドであるモロイジンという物質です。
はじめギンピ・ギンピの葉と茎から単離され、その後長期間の激痛をもたらす主要な有機化合物であることが判明しました。
グラミシジン
グラミシジンは、土壌細菌のバシラス属が生産するペプチド性猛毒です。
グラミシジンを摂取するとイオンが細胞膜を通過できるようになります(イオノフォア, ionophore)。
このイオンは、水素イオン・リチウムイオン・ナトリウムイオン・カリウムイオンなどの1価カチオンです。
神経・脳、心臓、肺などでナトリウムイオンやカリウムイオンのバランスを崩し、呼吸困難や心臓発作などを引き起こします。
また、グラミシジンは細胞内のタンパク質の製造を停止させ、生命維持が困難になり、最悪の場合は死に至ります。
致死量は体重1キログラムあたりわずか15ミリグラムから17ミリグラムとされています。
同じ環状ペプチドでも、薬になったり、毒になったりするのですね。
三次元構造を比較するとおもしろいのではないかと思います。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)
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