3分でわかる技術の超キホン 「イオン交換水」とは?純水の作り方と特徴を解説

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1.水の種類とイオン交換水

私たちの生活に欠かせない「水」ですが、純度や応用目的によって様々な種類があります。

例えば「水道水」の中に様々な不純物を含んでいます。しかし、精密電子業界の製造用水はとても純度の高い「超純水」を使わなければいけません。
イメージとしては、50mプールを「水道水」「純水」「超純水」で満たした場合、その不純物の量はそれぞれドラム缶2本分、コップ1杯分、スプーン1杯分といった感じです。

ちなみに、私たちがよく見かける飲料水も次のように様々な種類があります。

  • 軟水:硬度100 mg/L未満の水
  • 硬水:硬度100 mg/L以上の水
  • 天然水:自然の源水を使って、ろ過、沈殿、加熱殺菌のみの加工を行った水
  • ミネラルウォーター:地下水を原水とする水
  • 海洋深層水:水深200m以上の海水を処理した水

 

イオン交換水とは?純水とは違う?

イオン交換水」(脱イオン水)は、純水(精製水)の一種です。
「純水」は、一般的には水道水から不純物を除いた水です。純水は作り方(製造プロセス)の違いによって、イオン交換水以外にも蒸留水Elix水などの種類があります。

この記事では、イオン交換水の基礎知識をご紹介します。
なお、関連記事「イオン交換樹脂とは?種類(分類)/原理/特徴/用途など要点解説」では、イオン交換樹脂の原理についてご説明しています。そのイオン交換樹脂を使用して、水中の不純物を除去して作った純水のことを、一般的に「イオン交換水」または「脱イオン水」と呼びます。

 

2.イオン交換水のつくり方(製造原理)

水道水に含まれる不純物イオンとしては、主にカルシウムイオン(Ca2⁺)、マグネシウムイオン(Mg2⁺)、カリウムイオン(K⁺)、ナトリウムイオン(Na⁺)、塩化物イオン(Cl⁻)、硫酸イオン(SO₄²⁻)、硝酸イオン(NO3⁻)などがあります。

これらの不純物をイオン交換樹脂により除去できます。カチオン交換樹脂により水中のNa⁺、K⁺、Ca2⁺、Mg2⁺など陽イオン不純物アニオン交換樹脂により硫酸イオンSO₄²⁻、NO3⁻などの陰イオン不純物を除去します。

式1と2でNa⁺とCl⁻を例として、イオン交換水の製造原理を示しております。

 H+SO32- + Na+ ⇔ Na+SO32- + H+  ・・・(式1)
 CH2N+(CH3)3OH + Cl ⇔ CH2N+(CH3)3 Cl + OH  ・・・(式2)
 H+ +  OH → H2O  ・・・(式3)

具体的な操作方法としては、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂が充填された純水装置に水道水を入れると、交換基からイオンを放出し、代わりに水道水中の無機イオンを取り込むことによって水道水中の無機イオンを交換して、純水を精製します。(式1~3、図1)

 

強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂によるイオン交換水の精製
【図1 強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂によるイオン交換水の精製】

 

使用時間が経つと、次第に交換基が無機イオンの交換により飽和して、樹脂のイオン交換能が低くなります。しかし、酸(アルカリ)溶液に浸すと回復できるので、イオン交換樹脂は再生可能です(図2)。

 

イオン交換と再生のイメージ図
【図2 イオン交換と再生のイメージ図】

 

2.イオン交換樹脂の寿命

イオン交換樹脂には寿命があります。樹脂の種類・目的・使い方等によって寿命は変わりますが、樹脂の劣化などにより性能が落ちるので状況に応じて交換する必要があります。

イオン交換樹脂の交換の目安は、主に以下の三つがあります。

  • 交換容量の不足、再生不良
  • 交換速度の低下
  • 物理的な劣化、割れ、破壊など

なお、イオン交換樹脂はプラスチックなので、廃棄したイオン交換樹脂はプラスチックごみの出し方に従って処分します。

 

3.イオン交換樹脂を用いた水処理の特徴

イオン交換樹脂による水処理には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
 
《イオン交換樹脂を使うメリット》

  • イオン交換樹脂は無機イオンを効率よく除去できる。
  • 水道水を流すだけで純水を簡単につくれる

 

《イオン交換樹脂を使うデメリット》

  • 有機物を除去できない
  • 負に帯電する微生物がイオン交換樹脂に吸着されると、精製水が汚染される恐れがある。

 
ということで今回は、知っておきたいイオン交換水の基礎知識をご紹介しました。
 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1)板垣 孝治, イオン交換樹脂,醸協,第77券第4号.
  • 2)細川 利雄,有機合成化学,第42巻第2号, 1984.

 

 

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