縮合重合とは?重合の代表例や特徴など要点解説

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化学

1.「縮合重合」と「重縮合」「縮重合」に違いはある?

今回は「縮合重合」について解説します。
文献等では「縮合重合」の他に、「重縮合」および「縮重合」という用語も出てきますので、混乱している方もおられるかもしれません。実際にはどれも同じ意味であり、差はありません。
表1に示すように、論文では「重縮合」と呼ばれることが多い状況です。

 

【表1 縮合重合および同義の用語】

用語 google scholar件数 対応する英語
“縮合重合” 827 condensation polymerization
“重縮合” 5750 polycondensation
“縮重合” 1690

 

2.縮合重合とは

縮合重合の代表としてポリエチレンテレフタレート(PET)ナイロン66の例を表2に示します。

縮合重合では2種類の異質のモノマーが反応します。異なるモノマーが各々2つの手を外向けに有しており、異なるモノマー間での縮合反応により結合を形成します。
「縮合」とは反応で失われる分子があることを意味していますが、表2の例では水が失われています。
即ち、脱水縮合しながら結合を形成しています。

 

【表2 縮合重合の例】
縮合重合の実例(PET、ナイロン66)

 

3.縮合重合の特徴

縮合重合の特徴を確認しましょう。

 

(1)高い反応度が必要

付加重合(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル)との顕著な違いは、反応度(全モノマー中の反応したモノマーの比率)と重合度(生成ポリマー中で連結したモノマーの数)との関係にあります。

付加重合の場合にはモノマーの反応度pが10%、即ち90%が未反応のままでも、重合度xが100以上のポリマーが生成することがしばしばあります。付加重合では通常起こりうる現象です。

しかし縮合重合ではこの点が全く異なります。縮合重合における重合度xの平均値と反応度pとの関係を表3に、xの分布とpとの関係を図1に示します1)

 

【表3 縮合重合における重合度xの平均値と反応度p1)
縮合重合における重合度xの平均値と反応度p

 

縮合重合における重合度xの分布と反応度p
【図1 縮合重合における重合度xの分布と反応度p】

 

表3と図1から、縮合重合では反応度が90%に達しても平均重合度はわずか10にしかならず不十分であること、高分子の特性が顕著になるとされる平均重合度100以上にするには反応度を99%以上に高める必要があることが分かります。

 

(2)縮合物(水等)除去の必要

表2に示した縮合重合は平衡反応です。即ち、水とポリマーが反応して結合が開裂する逆反応も起こり得ます。
1)で述べた通り縮合重合では反応度を非常に高くする必要がありますので、この逆反応を抑制しなければなりません。
このため、縮合物である水を反応系から除去して正方向の反応を促進する操作が行われます2)

 

(3)異なる2種のモノマーは等モル使用

表2のエチレングリコールとテレフタル酸の反応において、もし一方が過剰だったらどうなるでしょうか?
少ない方のモノマーがすべて反応した段階で重合が停止してしまうことになります。
従って、縮合重合で十分な重合度を得るためには、異なる2種のモノマーは等モルであることが必要です1)

 

(4)環化ポリマーの生成

表2の縮合重合の実例では、生成するポリマーはすべて鎖状であるとして示しました。
しかし、現実には図2に示すような環化したポリマーも生成します。環化するとポリマーは、通常、そこで重合が停止します。
環化物の重合度は低いことが多いため、環化は高重合度のポリマーを得るための障害となる副反応とみなされています1)2)
しかし非常に高重合度のポリマーにも環化物が含まれているとの報告もあります3)

 

縮合重合ポリマーの環化
【図2 縮合重合ポリマーの環化】

 

(5)高速反応モノマーの利用

表2のエチレングリコールとテレフタル酸の反応速度はあまり速くありません。
工業的な観点からは改善が必要です。速度を上げるにはどうしたらよいでしょうか?

この反応は有機化学的には求核置換反応です。
求核置換反応においては、カルボン酸誘導体の活性は下記の序列であることが知られています。

 

求核置換反応

 

従って高速化を目的に、テレフタル酸に代えてテレフタル酸のジエステルやジクロライドが利用されるケースもあります。

 
次回は「開環重合」について解説します。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》

  • 1) 井上祥平, 改訂版 高分子合成反応, 裳華房(2011)
  • 2) 遠藤剛・三田文雄, 高分子合成反応, 化学同人(2001)
  • 3) Cyclic Polymers by Kinetically Controlled Step-Growth Polymerization, Hans R. Kricheldorf etc., Macromol. Rapid Commun., 24, 359–381(2003)

 

 

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