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LTspiceで学ぶ電子部品の基本特性とSPICEの使いこなし(セミナー)
2024/12/5(木)10:00~16:00
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冷蔵庫とは、一般的に、食品を貯蔵するために、収容部の温度を低温度に保つことができる装置を言います。
古くは氷冷蔵庫もありましたが、現在では、冷凍庫を備えた電気冷蔵庫のことを指していることが多いです。
国産第1号の電気冷蔵庫は、1930(昭和5)年に株式会社東芝(当時は株式会社芝浦製作所)から発売されましたが、庭付き一戸建てが購入できるほど高価なものだったようです。
電気冷蔵庫の基本的構造は、収容部を構成する箱にヒートポンプの一種である冷凍機を取り付け、この冷凍機によって筐体内の熱を外部に排出するものです。
筐体の壁には断熱材が設けられ、熱の移動が遮断されています。
今回は、電気冷蔵庫の基礎知識について解説します。
目次
冷蔵庫は、冷媒を循環させ、その途中で冷媒を気化させることにより、筐体内の熱を奪い、外部に放出する、いわゆるヒートポンプの仕組みを利用した「冷凍機」によって筐体内を冷却しています。
【図1 冷凍機のしくみ】
冷凍機では、環状に接続された配管(パイプ)の途中に、図1に示すように、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および冷却器が設けられています。
【図2 冷蔵庫の構造図】
図2は冷蔵庫の構造を示しています。
圧縮機は、電力により気体冷媒を圧縮して高温、高圧状態とするものです。この圧縮機は、通常、筐体の背面側下部空間に配置されています。筐体内の容積が400L以上であれば、省エネを考慮してインバータ方式のものが使用されています。
凝縮器は、「コンデンサ」とも呼ばれ、圧縮機で高温、高圧状態となった気体冷媒から周囲雰囲気に放熱させて冷却し、液体とする役割があります。凝縮器は、冷蔵庫の天板部分や背面に設けられています。
膨張弁は、液体冷媒を絞り部分に通過させ、その圧力を急激に降下することで沸点を低下させることにより、気化しやすい状態とするものです。
冷却器は、膨張弁を通過して気化しやすくなった液体冷媒を気化させることにより吸熱して、筐体内の空気を冷却するものです。図示していませんが、冷却器の近傍にはファンが設けられ、冷却器で冷やされた空気を庫内へと送風します。
筐体は、図2に示すように、本体部、扉、引出し(野菜ケース)を備えています。これらは、内面側が樹脂パネルで構成され、外面側がステンレス等の金属パネルで構成されています。両パネルの間の空間には断熱材が収容されています。断熱材にはウレタンや真空断熱材が使用されています。安価な冷蔵庫では、ウレタンのみ、省エネタイプでは、真空断熱材とウレタン、450Lを超える大型のものでは、高性能真空断熱材と高密度ウレタンが採用されています。
扉には、片開き、観音開き、および両開きがあります。
片開きは、冷蔵室に取り付けられた1枚の扉が、左右いずれかを中心として片側一方にのみ開放するものです。内容量が450L以下の小型の冷蔵庫に採用されることが多いです。
観音開きは、左右に分かれた扉が内から外に向かって開放するものです。このため、全開すると、庫内全体を見渡しやすく、また前方に突出する扉の範囲が少なくて済むという利点があります。
両開きは、片開きとは異なり、1枚の扉を左右いずれにも開放することができるようになっています。これは、シャープ株式会社の特許技術でした。
内部は、大きく分けて、冷蔵室、野菜室(野菜ケース)、冷凍室で構成されています。冷凍室は、-18℃以下とされ、冷蔵室は、3~10℃、野菜室は、10℃以下に冷却されています。
タッチパネル機能とは、扉に設けたタッチパネルを操作することにより、冷蔵庫の設定を行うことができるようにした機能を言います。
冷蔵庫の冷蔵室や冷凍室での温度設定などを行うことができます。扉を開けずに操作できるため、操作に手間取ったとしても、庫内の温度が上昇してしまうといった不具合が発生することがありません。
また、アイコンを表示させたり、カラーのバリエーションを増やしたりと、表示形式を自由に設定することができます。操作すべきアイコンを点灯させるなど、利用者が操作しやすい機能を備えたものもあるようです。
さらに、スマホと連動できるタイプのものもあり、外出先から設定変更するなどの操作が可能となっています。
タッチオープン機能とは、ボタンやタッチパネルに軽く触れたり、手をかざしたりするだけで、扉を開けることができる機能を言います。
タッチオープン機能を備えた冷蔵庫では、扉を本体部に回転可能に支持する軸は、モータによって回転するように構成されています。そしてボタンやタッチパネルに人が近づいたり、触れたりしたことが検知されると、モータを駆動制御して扉を開放するようになっています。
AIと連携し、お出かけ時に省エネ運転を行ったり、スマホのGPS機能による位置情報から買い物先にいることを検知し、まとめ買いを予測して庫内を予め低い温度まで冷却しておいたりできるものがあります。
また、登録した気象情報から冬の寒い時期での冷えすぎを抑制するものもあります。省エネ状況をスマホに表示させるといったことも可能なものがあります。
AI搭載の冷蔵庫は、2014年にLGエレクトロニクス社から発売されたのが最初のようです。
現在では、庫内の食材から献立を提案したり、スーパーでの特売情報を教えてくれたり、自動で節電したり、食材の適切な保存場所を教えてくれたりすることができるようになっています。今後、様々な機能が追加されていくことが予想されます。
IoTとは「Internet of Things」の略称で、直訳すると「モノのインターネット」ということになります。上記無線LAN・Wi-Fi機能と重複しますが、冷蔵庫がインターネットに接続されて、遠隔操作や冷蔵庫の状態を外部から把握することができたりします。
例えば、冷蔵庫の扉にタッチパネルを設け、そこで庫内の食材で調理できる献立をインターネット上から取得して表示させたり、スーパーなどでの特売情報を表示させたりすることができます。
また、音声によりスマホからの情報を知らせたりすることもできます。庫内の食材について在庫管理を行い、ある食材が減ってくれば、報知させることも可能です。その他、インターネットを介して様々な情報のやり取りを行わせることも考えられています。
直流を交流に変換する装置を学術的に「インバータ」(逆変換器)と言います。
交流を一旦直流に変換した後、再度交流に変換することで、周波数と電圧の大きさを自在に変えています。
冷蔵庫におけるインバータ制御とは、冷媒を循環させるための圧縮機の回転数をインバータによって自動調整するものです。
圧縮機の駆動をインバータ制御することで、扉の開閉や、庫内および周辺の温度を考慮したきめ細かい運転が可能となり、省エネ効果を発揮することができます。
例えば、搭載するセンサによって、長時間扉の開閉がないことや、室内が暗くなったことを検出して自動的に省エネ(節電)運転に切り替えることができます。
真空断熱材の構成に工夫を凝らしてさらに薄型にしたものがあります。
真空断熱材は、芯材となるガラス繊維(グラスウール)などをラミネートフィルムで覆い、その内部を真空にすることで作られています。
ガラス繊維の構造と細さを最適設計することで、さらに薄型化したものがあります。
以下、各メーカーの特長といえる主な搭載機能について説明します。
(※参考URL: https://www.mitsubishielectric.co.jp/home/reizouko/function/ |三菱電機株式会社)
(※URL: https://kadenfan.hitachi.co.jp/rei/ |日立グローバルライフソリューションズ株式会社)
(※URL: https://panasonic.jp/reizo/ |パナソニック株式会社)
(※URL: https://www.toshiba-lifestyle.com/jp/refrigerators/ |東芝ライフスタイル株式会社)
(※URL: https://jp.sharp/reizo/ |シャープ株式会社)
以上のように、普段当たり前のように使用している冷蔵庫ですが、日々進化を遂げています。
必需品だからこそ改良の余地がまだまだあるのかもしれません。
(アイアール技術者教育研究所 T・N)