- おすすめ
不具合未然防止の基本と実務への適用《事例で学ぶ FMEA/FTA/DRBFMの効果的な使い方》(セミナー)
2024/12/3(火)9:30~16:30
お問い合わせ
03-6206-4966
部材の接合は様々な方法がありますが、今回はカシメについて説明します。
目次
部材の接合を原理別で考えると材料的接合、化学的接合、機械的接合の3種類に分類できます。
母材間を材料的に接合する方法であり、材料を強固に接合できる方法です。
いわゆる「溶接」がこれに相当します。
熱影響によりひずみなどが発生する可能性もあります。
ただし、溶接は金属の接合に限定されます。
接着剤による接合方法です。
殆どの材料、異材の接合が可能で、接合後も素材の性質や形状が変化しません。
一方で、固定に時間を要し、継手の耐熱性、強度に限界があります。
ボルトや圧入、カシメなどによる接合です。
接手部の重量が重くなる可能性もあります。
機械的接合による接合は、金属以外にも適応可能です。
今回は、機械的接合の中で「カシメ」について説明します。
「カシメ」とは、圧力を利用して塑性変形させ、二つ以上の部材を接合させる技術です。
カシメは、「加締め」と書く場合もありますが、今回は一般的な“カシメ”を使用します。
カシメは、材料を変形させて固定するため、一度取り付けると部品の取り外しが容易ではありませんが、非常に効率的な接続方法です。また、金属の結合のみでなく、樹脂との結合も可能です。
また、カシメは、古くは戦国時代の鎧(よろい)などにも使われています。現在でも機械部品のみでなく、ランドセル、ジーパン、ハサミなどの日常の製品に広く使われている技術です。
カシメは、大きく分けると「リベットカシメ」と「巻きカシメ」の2つの方式があります。
「リベットカシメ」とは、結合したい部材に穴をあけ、軸を差し込み、軸の片方の端をプレスして軸が抜けないように塑性変形させる方法です。
軸部品は、「リベット」と呼ばれ、結合したい部材と別部品になるのが一般的です。機械部品のカシメによく見られます。
「巻きカシメ」とは、結合したい部材そのものを変形させる方法です。
重ねた2枚の板金を折り曲げ塑性変形させます。巻きカシメは缶詰などによく見られるカシメ方法です。
リベットカシメは、大きく3つに分類されます。
リベットの軸の変形のさせ方に違いがあります。
「プレスカシメ」とは、リベットの軸方向から強い圧力を加え、リベットに塑性変形を起こさせることで部品同士を接合する方式です。そのため、塑性変形はリベット全体に及び、リベットの軸径を大きくし、リベット頭部の反対側も含め変形させます。
リベット全体が押しつぶされ、リベットの軸部が太り、部材の穴壁面との隙間を無くすため、接合強度が大きくなります。部材は完全に固定されるため可動は不可能となります。
接合力の品質評価方法は、カシメ部分が回転し始める力「回りトルク」による方法がよく用いられます。
評価後は廃却となるため、頻度を決めて定期的に確認することになります。
プレスカシメは結合力が大きくなりますが、デメリットとして、リベットを押しつぶす際に大きな音と振動が発生してしまう欠点もあります。
「スピンカシメ」とは、パンチを回転しながら加圧してリベットを変形させて接合する方式です。
弱い圧力でリベットを変形させるので、リベットの軸部が太くなりにくく、部材の穴壁面とリベット軸部の間に隙間を確保でき、リンクとして可動させることができます。可動性がもとめられるヒンジ部のような部品の結合で活躍します。
スピンカシメの典型的なものはハサミのカシメであり、二つの刃部をカシメ結合してますが、可動させることができます。
リベットを少しずつ変形させるため、大きな力を必要とせず、加工する際の音と振動は比較的小さくなるというメリットがあります。
「ブラインドリベット」とは、ボディー部とシャフト部から構成されていて、シャフト部を引き抜くことで、ボディー部に変形をあたえて2枚の板を固定することができます。
シャフト部の破断耐力によって締結圧が決まるので、同じリベット径の、他のカシメ方法よりも、弱いというデメリットがあります。
メリットとしては、窓枠の取り付けやシャッター部分のカシメなど、片側からしか作業ができない場合に最適なカシメ方法です。片側締結のブラインドリベットは、ピストル型の専用のカシメ工具が行われます。
巻き締めカシメは「シーミング」とも呼ばれ、巻きカシメの加工は、板金のフチを巻き込むように折り曲げてから潰してカシメを完了させる加工方法です。
どのように板金のフチを折り曲げるかによって、さまざまな種類の巻きカシメがあります。
加工が比較的簡単ですが、カシメが外れやすい傾向があるため、注意が必要です。
缶の蓋の部分と缶の胴の部分がそれぞれ二重になることから、二重巻カシメと言われています。
ビール缶などの缶飲料の製造工程で最も重要な工程の1つで、空気や水、細菌などの缶内への侵入を完全に防いでいます。
板金のフチではなく、中間でカシメを実施する方法です。
空調ダクトなどの接合部に使用される巻きカシメで、継ぎ目に雨水の侵入を防止するためには最適なカシメ方法です。
以上、今回はカシメ加工の種類・分類、各カシメ接合の概要についてご紹介しました。
(アイアール技術者教育研究所 T・I)
≪引用文献、参考文献≫