《初心者向け》薬機法の基礎知識がわかる!対象の製品は?違反するとどうなる?
医薬品や医療機器に長年携わっている方にとって、「薬機法」は馴染み深い法律の1つであることは間違いないでしょう。
今回は、医薬品や医療機器の取り扱いに馴染みの薄い方に向け、薬機法の概要を解説します。
また、2021年に施行された改正薬機法の主な変更点も簡単にご紹介します。
医薬品や医療機器に携わる方だけでなく、化粧品や食品関連に携わる方も、ぜひ目を通してみてください。
目次
1.薬機法とは
薬機法は、2014年以前は「薬事法」と呼ばれていた法律で、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
「薬機法」の他、「医薬品医療機器等法」と略される場合もあります。
薬機法の対象は下記の通りです。
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
薬機法では、上記5つをまとめて「医薬品等」と表記されています。
サプリメントや美容器具など、一見すると医薬品や医療とは関わりのないジャンルの商品も、薬機法の対象となり得ます。
医薬品を取り扱う企業はもちろんのこと、その他の企業であっても、気がつかず薬機法に抵触することがないよう十分に気をつけましょう。
2.薬機法の目的
薬機法の目的は、品質や有効性、安全性の確保と保健衛生の向上です。
薬機法の目的は、第1章で下記の通り規定されています。
- 医薬品等の品質や有効性、安全性の確保
- 保健衛生上の危害の発生と拡大の防止、及び規制
- 指定薬物の規制措置
- 必要性が特に高い医薬品や医療機器、再生医療等製品の研究開発促進に必要な措置
- 保健衛生の向上
医薬品をはじめ、人や動物の健康に直接的に関わる製品の、品質向上や安全性を保つために制定された法律と考えるとよいでしょう。
3.薬機法の対象と定義
冒頭でも述べた通り、薬機法の主な対象は「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療機器」「再生医療等製品」です。
それぞれの定義が薬機法にて定められています。
定義を理解して、取り扱う製品が薬機法の適用を受けるか否か、十分に確認しておきましょう。
(1)薬機法における医薬品の定義
医薬品の定義は以下のとおりです。
- 「日本薬局方」に収められているもの
- 人または動物の診断や治療、予防に使用される機器器具等以外のもの
- 人または動物の身体に影響を及ぼす機器器具等以外のもの
- 上記に含まれるもののうち「医薬部外品」「化粧品」「再生医療等製品」に該当しないもの
具体的には、医師の処方のもと購入する医療用医薬品や、薬局などで購入できる一般用医薬品、体外診断用医薬品などが挙げられます。
なお、「日本薬局方」とは、厚生労働省から公示されている医薬品の規格基準書です。薬機法第41条で定められています。
(2)薬機法における医薬部外品の定義
医薬部外品は以下のうち「身体へ与える影響が緩和なもの」と定められています。
- 以下3つの目的に使用される医薬品を除く機器器具等以外のもの
- 吐きけその他の不快感、口臭や体臭の防止
- あせも、ただれなどの防止
- 脱毛の防止、育毛または除毛
- 人や動物の保健のためにねずみ、はえ、蚊、のみなどの防除に使用する医薬品を除く機械器具等以外のもの
- 医薬品の定義に含まれるもののうち、厚生労働大臣が指定するもの
医薬部外品は身体へ与える影響の程度から、医薬品と化粧品の間にあたるものと考えるとよいでしょう。
具体的には、育毛剤やうがい薬、薬用化粧品があげられます。
(3)薬機法における化粧品の定義
化粧品は、以下のうち「身体へ与える影響が緩和なもの」と定められています。
- 人の身体を清潔または容貌を変えることを目的とするもの
- 身体に塗擦や散布などの方法で使用されるもの
- 医薬品、医薬部外品を除くもの
化粧品は、清潔感や美しく見せるために使用するものが該当します。
具体的には、シャンプーや基礎化粧品、ファンデーションなどがあげられます。
ただし、効能の高い薬用化粧品は医薬部外品に分類され、化粧品には含まれません。
(4)薬機法における医療機器の定義
医療機器は、以下のいずれかに該当し、政令で定められたものです。
- 人または動物の疾病の診断や治療、予防に使用されるもの
- 人または動物の身体構造や機能に影響を及ぼす、再生医療等製品を除く機械器具等
具体的には、CTやMRIなどの画像診断装置や、治療に用いるカテーテル、ペースメーカーなどが該当します。
(5)薬機法における再生医療等製品の定義
再生医療等製品とは、以下のいずれかに該当し、政令で定められたものです。
- 以下の医療目的で、人または動物の細胞培養などの加工を施したもの
- 身体の構造または機能の再建、修復または形成
- 疾病の治療または予防
- 人または動物の疾病治療を目的として細胞に導入する、体内で発現する遺伝子を含有させたもの
具体的には、患者のiPS細胞から作る軟骨組織や心筋シート、ウイルスベクターなどが該当します。
4.たびたび指摘される薬機法違反
薬機法では、規制基準についても厳しく定められています。
その中で、広告規制違反で指摘を受けるケースが多々みられます。
たびたび違反が指摘される「広告規制基準」についてご紹介します。
広告規制基準とは
薬機法では、医薬品等の広告規制について、第66条〜68条で下記の通り定めています。
第66条:誇大広告等の規制
第67条:特定疾病用の医薬品や再生医療等製品広告の制限
第68条:承認前の医薬品や医療機器、再生医療等製品広告の禁止
薬機法の広告規制基準では、規制対象は製造元や販売業者に限らず「何人も」対象になる点に、注意が必要です。
また、薬機法の規制対象は、原則医薬品等ですが、健康食品や美容器具など、医薬品等に含まれない製品を医療的な効果があるかのように宣伝することは禁止されています。
医薬品等の広告適正基準については、厚生労働省から「医薬品等広告適正基準」が出されています。
医薬品等の広告業務に携わる方は、広告違反を指摘されないよう、基準をしっかりと確認しておきましょう。
[※広告規制基準の解説記事はこちら]
5.2021年8月に施行された改正薬機法の概要
2021年8月に施行された改正薬機法の主な変更点は「課徴金制度の導入」です。
第66条1項の違反者に対し課徴金を命じる規定が新設されました。
薬機法第66条1項 |
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。 |
第66条1項の規定に違反していた場合、課徴金として、違反していた期間の売上額の4.5%に納付命令が出されます。なお、課徴金額が225万円未満の場合は、課徴金納付命令は出されません。
取り扱い規模の大きい企業は、専門に対応できる部署を設けておくと安心でしょう。
6.医薬品・医療機器といえばまず薬機法
薬機法は、医薬品や医療機器などに携わる方にとって、最も身近な法律と言っても過言ではありません。
しかし、薬機法が適用される化粧品や、広告規制に抵触しがちなサプリメントや美容機器などを取り扱う方の中には、よくご存じない方も多いのではないでしょうか。
薬機法の適用範囲は広いため、気がつかぬうちに違反しているケースが多々あります。
少しでも関係する製品を取り扱う方は、薬機法の概要を押さえておくとよいでしょう。
アイアール技術者教育委研究所では、薬機法をはじめ、医薬品や医療機器などの法規制に関するセミナーも多数開催しています。
薬機法について詳しく学びたい方は、関連するセミナーの受講をぜひ検討してみてください。
(アイアール技術者教育研究所 S・N)
≪引用文献、参考文献≫