3分でわかる技術の超キホン パラミロンとは?|ユーグレナが生産する特異物質

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ユーグレナ(パラミロン)

1.注目の物質「パラミロン」とは?

デンプンとセルロースは、ともにグルコース(ブドウ糖)を構成単位とする多糖類であるにもかかわらず、人間はデンプンを消化する一方でセルロースは消化できません。両者の性質には大きな差があります。
この差は表1に示すように両者の結合様式の違い(α-1,4かβ-1,4か)に基づくことが知られています。

今、この両者のどちらとも異なる結合様式の多糖類である「パラミロン」が注目されています。

多糖類の結合様式
【表1 多糖類の結合様式】

パラミロンはデンプンとセルロースのどちらに近いでしょうか?
人間が消化できないという点はセルロースと同じです。
少し乱暴ですが、独自の機能を有するセルロース類似物質とお考えいただいてよいでしょう。
 

2.パラミロンはどこにどんな形で存在するのか?

パラミロンは微細藻類のユーグレナが生産する特異な物質です。
ユーグレナの体内に粒状で存在し、大きさは数μmから数十μmの範囲にあります。
株式会社ユーグレナのWEBサイト1)に、青山学院大学の福岡伸一教授が撮影した電子顕微鏡写真が掲載されていますので、興味のある方はご参照ください。
[※URL:https://www.euglab.jp/column/euglena_clm/000465.html

なお、パラミロンと同じ構造の多糖類を一部の細菌が発酵生産することも知られており、その生産物は「カードラン」という名称で呼ばれています2)
 

3.新素材としてのパラミロン

ユーグレナは健康食品として知られています。その健康作用にパラミロンが貢献していると考えられており、日本ではその健康・薬理作用の解明を目的に、医学・薬学・栄養学の研究者らによる「パラミロン研究会」が2017年に発足しています3)

一方で、その特異な構造から機能性材料としても注目されています。
パラミロンを繊維やフィルムの形に加工して、その機能を活用しようとするものです。
2021年12月にはパラミロン繊維の製造販売を主業務とする企業である「株式会社ユーグリード」の立ち上げが報道されました4)
 

4.特許から見たパラミロンの用途開拓

上記の分野も含めて、パラミロンの用途開発はどんな状況なのでしょうか?
ここでは日本特許を下記条件の下で検索した結果をご紹介いたします。

  • データベース:J-PlatPat
  • 検策実施日:2022年4月6日
  • 検索条件:特許請求の範囲に「パラミロン」を含むもの

該当する特許はちょうど100件でした。
出願人別では、株式会社ユーグレナが27件、株式会社神鋼環境ソリューションが25件と両社で半分を占めています。

この100件につき、その内訳を表2に、出願年ごとの件数を図2に示します。

パラミロンに関する日本特許の区分と件数
【表2 パラミロンに関する日本特許の区分と件数】

 

パラミロンに関する日本特許:出願年ごとの件数
【図1 パラミロンに関する日本特許:出願年ごとの件数】

 

2014年から出願件数が急速に増加していること、殊に健康関連の出願が大幅に増加していることが分かります。2017年のパラミロン研究会の発足と符合しているとみることも出来ます。
健康増進分野でのパラミロンの比重が今後一層高まる可能性があります。
 

4.パラミロン:繊維としての可能性

材料としてのパラミロンの活用を検討する際には、セルロースとの差別化が課題になると考えられます。
そして繊維という形態が、フィルムや成型体と比べて、その差別化にはより有効とみられます。
実際、材料に関する特許出願26件中で繊維関連が最大の11件を占めています。

上述の、株式会社ユーグリードは、図2に示すパラミロンナノファイバー(PNF)としての市場展開を開始しています。同社は、先行するセルロースナノファイバー(CNF)よりも低価格であること、木材由来の不純物がないことを特長として掲げています5)

パラミロンナノファイバー
【図2 パラミロンナノファイバー ※引用5)

 
ということで今回は、大きな可能性を秘める注目物質「パラミロン」の基礎知識をご紹介しました。

 
(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


≪引用文献、参考文献またはWEBサイト≫


 

 

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