【早わかり電子回路】オペアンプの応用回路① [フィルタリング/信号変換/信号処理/発振回路]

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オペアンプは、アナログ回路あるいはデジタル/アナログ混在回路のなかで最も基本的な構成要素で、様々な応用回路があります。
今回は、オペアンプの応用回路について見ていきましょう。

1.オペアンプの働き

当連載の前回のコラム「オペアンプとは?」では、次のような例がありました。

  • ① 増幅: 入力された信号を大きく増幅することができます。
  • ② フィルタリング: 入力信号からノイズを除去することができます。
  • ③ 信号変換: 電流や周波数の変化を電圧の変化に変換することができます。
  • ④ 信号処理: 信号の合成や微分、積分などができます。
  • ⑤ 発振: いろいろな波形の信号を繰り返し生成することができます。

①の増幅は、前回のコラムで扱ったので、今回は、②から⑤についてみていきましょう。
 

2.オペアンプの応用回路[フィルタリング]

図1は、ローパスフィルタの回路を示した図です。

(a)はパッシブフィルタ、(b)はアクティブフィルタです。

ローパスフィルタの回路
【図1 ローパスフィルタの回路】

 
アナログフィルタには、図1(a)に示すように抵抗・コイル・コンデンサなどの受動素子のみで構成された「パッシブフィルタ」と、図1(b)に示すようにオペアンプやトランジスタなどの能動素子に抵抗やコンデンサを組み合わせて構成された「アクティブフィルタ」があります。

図1(b)のオペアンプを用いたローパスフィルタは、オペアンプと抵抗R1、R2とコンデンサCで構成されているローパスフィルタです。入力電圧Viの低周波成分を通過させ、高周波成分を遮断します。
コンデンサCが無ければ、回路構成は反転増幅回路と同じになります。そのため、コンデンサCのインピーダンスが非常に大きくなる領域(周波数fが低い領域)では、コンデンサCをオープン(開放状態)に見なすことができるので、反転増幅回路として動作をします。

図2は、図1(b)のオペアンプを用いたローパスフィルタの周波数とゲインを示す図です。
カットオフ周波数fcは、図2のようになります。
カットオフ周波数」とは、ゲインが-3dBになる周波数です。
パッシブフィルタでも、ほぼ同様の特性になります。

ローパスフィルタの周波数とゲイン
【図2 ローパスフィルタの周波数とゲイン】

 

ここで、余談ですが、パッシブフィルタとアクティブフィルタの特徴(メリットとデメリット)を比較してみましょう。
 

パッシブフィルタの特徴

《パッシブフィルタのメリット》
  • 外部電源を必要としないため、省エネ化できる。
  • 部品点数が少ないため、回路が簡単であり、また、比較的安価に作ることができる。
  • 能動素子(オペアンプやトランジスタ)では困難な大きな信号(数10Aや数100V)を取り扱うことができる。
  • 帯域幅の制限がないため、高周波動作が可能である。

 

《パッシブフィルタのデメリット》
  • 出力を増幅する能力がないため、ゲインが1以下である。
  • 周波数帯域をシャープにしにくい。
  • コイルを用いるパッシブフィルタにおいて、カットオフ周波数fcを低周波に設定する場合、大きなインダクタンス値のコイルが必要(大きなサイズのコイルが必要)になるため、回路のサイズが大きくなる。

 

アクティブフィルタの特徴

《アクティブフィルタのメリット》
  • 形状が大きくて高価なコイルを使用せずに、周波数帯域をシャープにすることができる。
  • 出力を増幅する能力があり、ゲインを与えることができる。
  • 入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いため、信号源のインピーダンスと負荷のインピーダンスに対して自由度が大きい。
  • アクティブフィルタを多段にする場合、各段独立して定数を決めることができるので、定数の自由度が大きい。

 

《アクティブフィルタのデメリット》
  • オペアンプやトランジスタなどの能動素子が必要になるため、部品点数が増えて回路が複雑になる。
  • 外部電源を必要とするため、消費電力が増える。
  • オペアンプを用いるため高周波領域への対応が困難である。

 

3.オペアンプの応用回路[信号変換]

次に、オペアンプの信号変換についてみてみましょう。

電子回路では、主に「電圧」を扱って増幅や演算などの処理を行います。
電流や抵抗や周波数など、電圧以外の信号を扱う場合は、これらの信号を電圧に変換する回路が用いられます。この際に、オペアンプが用いられることが多いです。

図3は、フォトダイオードに流れる微小な電流をオペアンプで他の回路で扱いやすい電圧に変換する回路です。

オペアンプの応用回路(信号変換)
【図3 オペアンプの信号変換】

 

図3において、フォトダイオードに流れる光電流ⅠⅬは、帰還抵抗Rrefとオペアンプにより、
Vo=ⅠⅬ×Rref で表される電圧に変換されます。

例えば、光電流ⅠⅬ=10μA、Rref=100kΩとすると、
出力電圧Vo=10μA×100kΩ=10×10-6 A× 100×103 Ω=1V
となり、マイコンなどでも扱いやすい電圧に変換することができます。
Cは、発振防止のためのコンデンサです。

このように、光センサに限らず、センサ単体では電流を出力するタイプが多いので、オペアンプを用いて電流―電圧変換(Ⅰ―Ⅴ変換)して、扱いやすい電圧にしてから使用されることが多いです。
 

4.オペアンプの応用回路[信号処理]

オペアンプを用いた信号処理回路は様々なパターンがありますが、ここでは加算回路について説明します。

図4は、加算回路で、V1とV2の電圧を加算した電圧がVoに出力されます。
但し、回路としては、反転増幅器の形をしていますので、V1+V2の反転した電圧が出力されます。

オペアンプの応用回路(信号処理)
【図4 オペアンプを用いた信号処理回路】

 

図4において、a点が仮想短絡され、0Vになりますので、R1を流れる電流をI1とすると、I1は、V1/R1、R2を流れる電流I2は、V2/R2となります。オペアンプの入力バイアス電流は、小さいものとして無視します。
R3を流れる電流は、(I1+I2)ですが、反転増幅器なので、Voはa点に対し負の値、-(I1+I2)R3 となります。
したがって、Vo= -(I1+I2)R3 = -(V1/R1+V2/R2)R3
= -(V1×R3/R1+V2×R3/R2) となります。
ここで、R1=R2=R3とすると、
Vo= -(V1+V2) となり、V1とV2が加算されたことになります。

オペアンプは、上記の加算回路をはじめ、減算、積分、微分などの回路が可能です。
 

5.オペアンプの応用回路[発振回路]

オペアンプは、発振回路に用いられることもあります。

発振回路は、何も入力信号を加えなくても、電源さえ供給していれば回路自身が出力信号を作り続けます。

発振回路には、正弦波を発生するものや、方形波/三角波を発生するものがあります。
ここでは、方形波/三角波を発生する回路をオペアンプで構成しています。

図5は、オペアンプを用いて、方形波/三角波を発生する回路です。
また、図6は、A点、B点、Voのそれぞれの波形を示しています。

方形波/三角波を発生する回路
【図5 方形波/三角波を発生する回路】

 

それぞれの波形
【図6 それぞれの波形】

 

図5において、回路は、CR積分回路とコンパレータで構成されています。
図5のR4とCで構成されるCR積分回路を除くと、残りは、コンパレータの回路となります。
コンパレータの動作は、入力であるA点とB点の電圧を比較して 、AB であれば Vo = Vcc となります。

A点の電圧について考えてみましょう。
A点の電圧は、R1、R2、R3 で構成された回路の抵抗分圧によって決まります。
Vo の電圧は、0VとVccの2状態をとるため、R1、R2、R3で構成される回路も2状態となります。
図5のR1、R2、R3が全て同じ抵抗値の場合、Voの電圧値がVccの時、A点の電圧が2/3×Vccとなり、Voの電圧値が0の時、A点の電圧が1/3× Vccとなります。(図6のA点の図)

次にB点についてみてみると、B点とグランド0Vの間には、コンデンサCが接続されています。
コンデンサの特徴は、流れ込む(もしくは流れ出す)電荷の量に応じて電圧が変わるということです。
電荷の流れが電流ですが、Voの電圧が変わると抵抗 R4 に電流が流れコンデンサに電荷が流れ込んだり、コンデンサから電荷が流れ出したりします。Voの電圧が0VとVccに変わると、この電荷の動きによって、B点の電圧は、図6のB点の図のように変化します。
 

図6において、時間 t が 0(t = 0)のとき、A点の電圧は B点の電圧より高いものとして考えていきましょう。
A>B ですので、コンパレータの出力Voの電圧は、Vccとなります。
Vo= Vccなので R1、R2、R3で構成される抵抗分圧回路により、A点の電圧=2/3× Vcc になります。

このとき、Voの電圧がB点の電圧より高いため、Voから B点に電流が流れます。
その結果、コンデンサ Cには電荷が溜まっていき、B点の電圧は徐々に上昇していきます。
B点の電圧が上昇していき、図6の時間が t=t1で、B点の電圧が2/3 × Vccを越えると、A<Bとなり、Vo =0Vに変わります。
すると、R1、R2、R3で構成される抵抗分圧回路により、A点の電圧は、1/3× Vccになります。
そうなると B点の電圧は一転、下降し始めます。時間が t =t2の時、B点の電圧が1/3× Vccを下回ると、Voの電圧は再び Vcc になります。

以上の動作を繰り返すことにより、Vo端子は矩形波(方形波)を出力し続けることになります。
また、B点の電圧を取り出せば、三角波も出力できます。このようにして、発振回路が形成されるのです。

 

以上、オペアンプの応用回路を見てきましたが、ほんの一部を紹介したにすぎません。

次回は、続きとしてコンパレータや差動増幅回路等の例についてご説明します。
オペアンプは、アナログ信号を処理する場合には、もはや必要不可欠になってきているのです。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 E・N)
 

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