3分でわかる技術の超キホン「オプジーボ」とは?
2018年のノーベル生理学・医学賞の話題です。
受賞された本庶博士は、T細胞の表面にある”PD-1“というタンパク質を発見し、さらに、PD-1は免疫細胞の働きを抑えるブレーキとなることを突き止め、その発見が「オプジーボ」という抗がん剤に結び付きました。
ニュースでもだいぶ取り上げられていますが、今回は関連事項をまとめてみました。
目次
オプジーボとは?
オブジーボの一般名は、ニボルマブ(遺伝子組換え)。
薬効分類としては、抗悪性腫瘍剤 ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体です。
小野薬品工業株式会社が開発した抗がん剤です。
PD-1、PD-L1
“PD-1“は本庶先生によって単離同定されたT細胞などの表面にあるタンパク質の遺伝子です。T細胞の免疫応答を制御しています。
“PD-L1“は、がん細胞の表面にあるPD-1のリガンドで、PD-L1がPD-1に結合すると、T細胞の活性化が抑制されます。がん細胞が免疫細胞による攻撃から逃れることで、がん細胞の異常な増殖・がんの進行につながることになります。
そのため、PD-1とPD-L1の結合を阻害する抗PD-1抗体薬が、がん治療に用いられるということになります。
高い生存率
オプジーボを投与した転移性非小細胞肺がん患者の長期生存率が予想よりもはるかに高く、5年生存率が16%であることが、2017年の米国がん学会にて発表されました。
この生存率は化学療法で期待される生存率の4倍になります。
オブジーボの価格って?
発売当初は、オプジーボ点滴静注100mgがおよそ70万円でした。
本稿の執筆時点(2018年10月)では、
- オプジーボ点滴静注 20mg 35,766円/瓶
- オプジーボ点滴静注 100mg 173,768円/瓶
となっています。
オプジーボは、通常、成人にはニボルマブ(遺伝子組換え)として、1回240mgを2週間間隔で点滴静注しますので、
1回240mg = 100mg ×2瓶 + 20mg × 2瓶 ⇒ 173,768円 × 2 + 35,766円 × 2 = 419,068円
1箇月でおよそ83万円、1年で1,005万円かかります。保険適用で3割負担としても年間301万円になります。
発売当初よりだいぶ下がりましたが、まだまだ結構高額な薬なのですね。
オブジーボの同効薬
同じ抗PD-L1 ヒト化モノクローナル抗体の薬としては、
- イミフィンジ デュルバルマブ(遺伝子組換え)製剤 [アストラゼネカ株式会社]
- キイトルーダ ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤 [MSD株式会社]
- テセントリク アテゾリズマブ(遺伝子組換え) [中外製薬(開発は米国Genentech社)]
- バベンチオ アベルマブ(遺伝子組換え) [メルクセローノ株式会社]
があります。
なお、
- ヤーボイ イピリムマブ(遺伝子組換え) [ブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社]
という薬は、ヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体の抗悪性腫瘍剤です。
CTLA-4は、本庶先生と同時にノーベル賞を受賞されたアリソン博士が発見されました。作用する点が異なることから、オプジーボと併用されることがあります。
こうしてみると、開発した製薬会社は海外が多いですね。ちょっと残念です。
オプジーボに関する特許・文献を検索してみると?
(※2018年10月に検索した際のヒット件数です)
(1)オブジーボに関する特許調査
J-Platpatで検索してみました。
「請求の範囲:PD-1 * 出願人:小野薬品」で検索すると36件ヒットしました。中を見てみると癌治療薬が数件検出されました。
なお、「PD-1」では902件、「PD-L1」では512件でした。また、本庶先生を発明者で検索したところ41件の特許がヒットしました。
(2)オブジーボに関する文献調査
J-GLOBAL で文献を検索してみると、「PD-1」では2271件、本庶先生は331件の文献がヒットしました。
ということで今回は、ノーベル賞でも話題の「オブジーボ」ついてご紹介しました。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)