3分でわかる LNGとLPGの違いと特徴

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ガスタンク 天然ガス

皆さんは「LNG」や「LPG」という略語を耳にして混乱したことはありませんか?
今回は両者の違いについて解説します。

1.LNGとLPG

表1はLNGとLPGを比較したものです。
両者共に液化ガスであり燃料として使用される点で共通していますが、「LNG」は液化天然ガスであってメタンを主成分とするのに対して、「LPG」は液化石油ガスでありプロパンとブタンとの混合ガスです。

【表1 LNGとLPGの比較】

略称 LNG LPG
英語 Liquefied Natural Gas Liquefied Petroleum Gas
日本語 液化天然ガス 液化石油ガス
ガス成分 メタンCH4 プロパンC3H8 , ブタンC4H10
液化温度 約-160℃ 常温
消費者への
供給形態
LNGは船舶等での長距離輸送時の形態であり、再ガス化後に消費者には都市ガスとして供給 LPGボンベ(一般にプロパンボンベとも呼ばれる)として供給
ガスの重さ 空気より軽い 空気より重い
ガスの発熱量 約1.1万kcal/m3 約2.4万kcal/m3
 

また同じ液化ガスであっても液化方法が大きく異なります。
LNGは液化に-160℃という超低温が必要であり、設備投資に加え、液化・再ガス化の過程で多大なエネルギーを要するという課題もあります。これに対して、LPGは常温で加圧するだけで液化できます。

天然ガスをLNGという形態にするのは、海外から長距離海上輸送する際に、液化して体積を減らすためです。一般消費者には再ガス化したものが都市ガスとして供給されます。
一方、LPGはLPGボンベの形で消費者に供給されます。

都市ガス(天然ガス)もLPGも取り扱いには注意が必要ですが、両者には重さという点で差があります。
都市ガスは空気よりも軽いので、漏れても開放されていれば大気中に放散されます。
しかしLPGは空気よりも重いため、漏れた際にその場に滞留しやすく、火災・爆発の危険性が高まります。そのため、LPGは特に注意が必要です。

発熱量という点では、LPGの方が都市ガスの2倍以上あり、ガスとして高火力です。このため、都市ガスが整備されている地域でも、都市ガスの火力では不足する金属溶接の工場や、中華料理店等の高火力が望ましい飲食店でLPGが使用されています。

 

2.LNGとLPGの国内消費量

図1はLNG(天然ガス=都市ガス)とLPGについて2000年以降の日本国内消費量の推移を示したものです。LNGがLPGを大きく上回っていること、両者ともに近年は減少傾向にあることが分かります1)

 

LNGとLPGの日本国内消費量の推移
【図1 LNGとLPGの日本国内消費量の推移】

 

3.天然ガス権益の活用法を考える《3つの輸送方法》

皆さんが国外における天然ガス田の権益を新たに確保した会社の経営者だとします。
LNGという輸送形態には限定せず、エネルギーとして消費地まで輸送する方法を広い視野で検討してみることにしましょう。どんな選択肢があるでしょうか?

表2は主な活用法を比較したものです。

 

【表2 天然ガス田権益の活用法】

選択肢 パイプライン LNG法 GTL法(Gas to Liquid)
化学変換
の有無
無し(天然ガスのまま) 有り(液体炭化水素へと転換)
輸送時の形態 ガス 液化ガス 液体
主要設備 敷設パイプ 液化・再ガス化プラント、専用船舶 合成プラント
メリット 輸送コストが安価 長距離輸送に好適 石油用の既存インフラが活用可能
デメリット 建設に長期間 液化・再ガス化の所要エネルギー大 プラント投資が巨額
 

最も単純なのがパイプラインでの輸送です。
地上のパイプラインが主流ですが、海底パイプラインも既に稼働中です。パイプライン法は建設に要する期間が長いのがデメリットですが、完成後は低コストでの輸送が可能です。

LNG法は、液化・再ガス化時の所要エネルギーが大きいのが欠点ですが、長距離輸送で強みを発揮します。

GTL法とは、天然ガスを合成ガスに転換した後に、FT合成により液体燃料に化学変換する方法です。プラント建設費が巨額になるという欠点はありますが、石油系の既存設備を活用できるのが強みです。なお、FT合成(フィッシャー・トロプシュ法)に関心のある方は下記の別コラムをご参照ください。

[※関連記事:3分でわかる FT合成とは?FT合成触媒の注目研究事例も紹介!

天然ガスというエネルギー資源の調達戦略を検討する際には、上記3つの輸送方法の利点と欠点を踏まえた経営判断が重要になると思われます。

 
以上、今回はLNGとLPGの違い、そしてLNGの特徴を解説しました。
これらの知識が、エネルギー利用や燃料選択を検討する際の参考になれば幸いです。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


 

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