3分でわかる技術の超キホン LiAlH4 (水素化アルミニウムリチウム) 還元反応と医薬品

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LiAlH4還元反応の基礎知識

LiAlH4水素化アルミニウムリチウムLAH)は、有機合成反応ではアルデヒドやケトンの還元反応に用いられる非常に強力な還元剤です。
実験室ではよく使われる還元剤ですが、医薬品の製造にもよく用いられています。

今回は、LiAlH4還元反応に関連する化学反応や医薬品をご紹介いたします。

1.LiAlH4還元剤とは?

(1)LiAlH4還元剤の性質

LiAlH4は、白色または灰白色の粉末で、エーテルやTHFなどの溶剤に溶ける、強力な還元剤です。
LiAlH4は、種々のカルボニル化合物などを還元して、アルコールなどを合成することができます。
その還元力はi-Bu2AlHやNaBH4より強いとされています。

また、LiAlH4は、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)などとと同様に、立体的に小さい還元剤として知られ、立体的に大きい水素化(s-ブチル)ホウ素リチウムなどを用いた場合とは生成物の立体配置が異なるものが得られることがあります。
例えば、シクロヘキサノンの還元では、LiAlH4を用いた場合の生成物は、水酸基がエカトリアルなシクロヘキサノールに対して、水素化(s-ブチル)ホウ素リチウムを用いた場合はアキシアルのシクロヘキサノールが得られます。
 

(2)LiAlH4還元剤の製法

LiAlH4の製法としては、アルカリ金属の水素化物(LiH)と無水塩化アルミニウム(AlCl3)をエーテル中で反応させる方法があり、他には金属と水素を直接反応させる方法も知られています。
 

(3)LiAlH4還元剤の取り扱い

水と激しく反応します。空気中の水分とも反応するので、窒素などの不活性ガス中で取り扱ったり、エーテルやTHFなどの溶剤を用いると取り扱いが容易になります。
また、空気の水分や皮膚の湿気と反応することによりアルカリ化合物が生じ薬傷を起こすことがあるので、皮膚に接触させないよう注意をします。保護眼鏡、保護手袋などを使用します。
 

(4)LiAlH4還元剤の反応機構

LiAlH4還元剤の反応機構としては、下記のように考えられています。

反応機構

 
理論的には、1分子のLiAlH4で、4分子の還元ができることになります。

(※LiAlH4については、インターネット上で多く情報を得ることができますので、ここでは簡単に取り上げさせていただきます。)
 

2.LiAlH4還元反応の医薬品利用例

LiAlH4を用いた還元反応は、実に多くの反応例が紹介されていますが、ここでは医薬品の製造にLiAlH4還元反応が用いられた報告をいくつかご紹介することにいたします。

 

① マレイン酸レボメプロマジン

フェノチアジン系の抗精神病薬で、効能効果としては、統合失調症、そう病、うつ病における不安・緊張があります。いくつか合成方法が知られていますが、LiAlH4が用いられている例があります。

マレイン酸レボメプロマジン1

 
また別の合成ルートでも、初期段階で還元反応が行われています。

マレイン酸レボメプロマジン2

 

② メダゼパム

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬で、効能効果としては神経症における不安・緊張・抑うつなどがあります。

メダゼパム

 

③ 塩酸ホモクロルシクリジン

抗ヒスタミン薬で、皮膚疾患に伴うそう痒、じん麻疹、アレルギー性鼻炎の効能がある薬です。メダゼパムに似た還元反応に用いられています。

塩酸ホモクロルシクリジン

 

④ エトリプタミン

中枢神経刺激薬で、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬で、幻覚作用があり、医薬品としては使用されていないようです。ニトロ基の還元にLiAlH4が用いられていました。

エトリプタミン

 

⑤ 塩酸フェンメトラジン

食欲抑制剤として使用されていた覚醒剤で、乱用や依存症により使用されていません。この化合物の合成ルートのひとつとしてLiAlH4が用いられていました。

塩酸フェンメトラジン

 

⑥ 硫酸グアネチジン

交感神経末梢遮断薬として使用されていましたが、現在は販売は中止されています。
ベックマン転位によりラクタムを得て、LiAlH4で還元、環状アミンとしています。

硫酸グアネチジン

 

4.LiAlH4還元反応に関する特許・文献の調査

(1)LiAlH4還元反応に関する特許検索

J-PlatPatを用いて、LiAlH4還元反応を検索してみました。
(調査日:2022.3.29)

《キーワード検索》
  • 全文: [水素化アルミニウムリチウム/TX+LiAlH4/TX]*還元/TX ⇒21518件
  • 全文: (水素化アルミニウムリチウム+LiAlH4),5C,還元/TX ⇒3982件
  • 全文: (水素化アルミニウムリチウム+LiAlH4),5C,還元/TX*A61K/FI ⇒2352件
  • 請求範囲: (水素化アルミニウムリチウム+LiAlH4),5C,還元/CL ⇒101件
  • 請求範囲: (水素化アルミニウムリチウム+LiAlH4),5C,還元/CL*A61K/FI ⇒56件

この中には、「カテキンの新規合成手法」「新規なキノロンカルボン酸誘導体およびその製造法」「ピペラジン誘導体、その製造方法およびそれを含有する医薬」「マンノジリマイシン誘導体の合成方法」「新規な3-フエニル-1-インダンアミン」「新規テトラリン類」など多数の特許が検出されました。

 

(2)LiAlH4還元反応に関する文献調査

JSTが運営する文献データベース「J-STAGE」を用いて、LiAlH4還元反応を検索してみました。
(調査日:2022.3.29)

  • 全文: (水素化アルミニウムリチウム or LiAlH4) and 還元 ⇒424件
  • 抄録: (水素化アルミニウムリチウム or LiAlH4) and 還元 ⇒25件
  • 全文: (“水素化アルミニウムリチウム“ or “LiAlH4“) and 還元 ⇒64件
  • 抄録: (“水素化アルミニウムリチウム“ or “LiAlH4“) and 還元 ⇒8件

ざっと内容を見てみると、「ビタミンB_1合成にLiAlH_4還元法の利用」「新規光学活性トリアゾール系植物生長調節剤および殺菌剤の発明と工業化」「金属水素化物を用いたF-ベンゾ複素五員環化合物の開環反応」「7-置換フラボン類の合成」などの文献が見受けられました。

上記の特許公報や文献の内容を確認たい方は、是非データベースを検索してみましょう。
 

以上、今回は「LiAlH4還元反応」についてご紹介しました。

 

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 S・T)

 

医薬品関連の特許調査なら日本アイアール

 

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