レーザー距離計の基礎知識|測定原理・精度・用途を解説

建設・製造・測量など、さまざまな現場では、高精度かつ迅速な距離測定が求められています。レーザー距離計は、対象物に触れずに短時間で測定できることから、幅広い用途で利用されています。
本記事では、レーザー距離計とは何か、その測定原理や仕組み、種類、特性、精度に影響する要因について、初学者にも分かりやすく解説します。
目次
1.レーザー距離計とは
「レーザー距離計」(Laser Distance Meter)とは、レーザー光を対象物に照射し、その往復時間や位相差、反射光の受光位置、光の干渉などを利用して、対象物までの距離や変位を求める測定器です。日本語では「レーザー測距計」と呼ばれることもあります。
巻尺などの接触式測定具と異なり、対象物に直接触れることなく距離を測定できるため、短時間で安全に測定できる点が大きな利点です。また、測量に用いられるトータルステーションと比べて、一般的なハンディ型レーザー距離計は小型・軽量で、簡単に使用できる製品が多いことも特徴です。
なお、本記事では、一般的なレーザー距離計に加え、レーザー変位計やレーザー干渉計についても、レーザーを利用した距離・変位測定技術として取り上げます。
2.レーザー光を用いた距離の算出
レーザーを用いて距離や変位を測定する方法には、主に以下のような原理があります。
(1)TOF方式
「TOF方式」(Time of Flight:飛行時間)は、レーザー光を対象物に照射し、反射光が戻るまでの往復時間を測定する方式です。
距離 L は、次式で求められます。
![]()
- L:対象物までの距離(m)
- C:光の速度(約3×108 m/s)
- T:レーザー光の往復時間(s)
光は1秒間に約30万km進むため、ナノ秒単位の時間を測定する必要があります。このため、高速応答が可能な受光素子や高分解能の時間計測回路が欠かせません。
(2)位相差方式
「位相差方式」は、強度を周期的に変調したレーザー光を対象物に照射し、送信した変調信号と反射して戻ってきた変調信号との位相差を測定して、距離を求める方式です。位相差を高い分解能で検出できるため、高精度な距離測定が可能です。
なお、位相は2π rad(360°)ごとに繰り返すため、実際の距離計では複数の変調周波数を用いるなどして、測定距離を確定します。
距離 L は、次式で求められます。
![]()
- L:対象物までの距離(m)
- φ:送信した変調信号と反射した変調信号の位相差(rad)
- λ:変調信号の波長(変調波長、m。レーザー光そのものの波長ではない)
- π:円周率
(3)三角測距方式
「三角測距方式」は、レーザー光を対象物に照射し、その反射光を受光素子で検出して距離や変位を測定する方式です。
対象物との距離が変化すると、反射光が受光レンズに入射する角度が変わり、受光素子上の結像位置が移動します。この変化量をもとに、三角形の幾何学的な距離関係から距離を算出します。
(4)干渉方式(レーザー干渉計)
「レーザー干渉計」は、同一のレーザー光を測定光と参照光に分け、それぞれ異なる光路を通過させた後に再び重ね合わせることで生じる干渉信号を利用し、対象物の変位を測定する装置です。
対象物が移動すると測定光の光路長が変化し、測定光と参照光の位相差も変化します。この位相変化や干渉信号の周期数を測定することで、微小な変位を求めます。
代表的な往復光路型の干渉計では、干渉信号が1周期変化するごとに、反射鏡がレーザー光の波長の半分だけ移動します。
このとき、対象物の変位 L は、次式で求められます。
![]()
- L:対象物の変位(m)
- λ:レーザー光の波長(m)
- N:干渉信号の周期数

【図1 測定方式一覧】
3.レーザー距離計の仕組み
ここでは一般的なTOF方式や位相差方式の反射型レーザー距離計を例に、基本的な動作の流れを説明します。
(1)レーザー光の発振
距離計内部の半導体レーザーでレーザー光を発生させ、光学レンズを通して対象物の方向へ照射します。レーザー光は指向性が高く、広がりが小さいため、狙った位置の距離測定に適しています。
[※関連記事:3分でわかる 半導体レーザ(LD)の構造と発光原理]
(2)反射光の受光
対象物に当たったレーザー光の一部は反射し、受光レンズなどの光学系を通って、距離計内部の受光素子(フォトダイオードなど)に入射します。
[※関連記事:3分でわかる フォトダイオードの原理と使い方]
対象物の反射率や表面状態によって受光できる光量が異なるため、受光部には十分な感度と、幅広い光量に対応できる性能が求められます。
(3)信号処理
戻ってきた光信号は、受光素子によって電気信号に変換され、内蔵のプロセッサで距離に換算されます。位相差方式では位相解析が、TOF方式では時間計測が行われます。
(4)ディスプレイへの表示
製品によっては、Bluetooth通信やスマートフォンとの連携機能を備え、測定データを記録・共有できるものもあります。
4.レーザー距離計の種類
レーザー距離計には、用途に応じて複数の種類があります。
- ハンディ型(携帯型)
最も一般的なタイプで、手のひらサイズのコンパクトな距離測定器です。主に室内外の短~中距離測定に用いられ、建築現場や内装工事などで広く利用されています。 - 長距離型
受光性能の高い光学系や高感度受光素子、高度な信号処理技術を備え、数百m以上の距離を測定できるタイプです。製品によっては反射板などを使用することで、1kmを超える測定に対応するものもあります。測量、土木、設備の位置制御などに利用されます。 - センサー組込み型
工場ラインや自動測定システムに組み込まれ、位置決め、寸法測定、搬送物の位置検出や搬送設備の制御などの用途に使われます。高速応答と安定性が特徴です。

【図2 レーザー距離計の主な種類】
5.精度に影響する要因
レーザー距離計の測定精度は、機器の仕様や使用環境によって変化します。主な要因を以下に示します。
- 対象物の反射特性:
一般に、明るい色で適度に拡散反射する面は、反射光を安定して受光しやすいため測定しやすい傾向があります。一方、黒色や光を吸収しやすい素材では反射光が弱くなり、測定可能距離や精度が低下することがあります。また、鏡面、光沢面、透明体、傾斜した面では、反射光が受光部に戻らなかったり、意図しない位置を測定したりすることがあります。 - 測定距離:
一般的に、距離が長くなるほど誤差が増加する傾向にあります。機器の仕様で規定された測定範囲内で使用することが重要です。 - 外光・環境条件:
屋外では、直射日光などの外光が受光部に入り、ノイズとなることで測定精度が低下する場合があります。また、霧・雨・粉じんが多い環境ではレーザー光が散乱しやすく、測定誤差が大きくなることがあります。 - レーザー光の出力と波長:
レーザー光の出力や波長は、対象物から戻る光量や、周囲光の影響を受ける程度に関係します。ただし、出力が高ければ必ず測定精度が向上するわけではなく、受光光学系、信号処理、測定対象の反射特性などを含めた総合的な設計が重要です。また、製品の選定や使用にあたっては、レーザーの安全クラスを確認する必要があります。 - 内部処理アルゴリズム:
信号処理技術やノイズ除去アルゴリズムはメーカーごとに異なり、同じ原理でも精度に差が生じます。
6.レーザー距離計のメリット
レーザー距離計の特長を理解するには、従来から使われている測定方法との違いを整理すると分かりやすくなります。
例えば、巻尺や測量用ロッドは構造が単純で扱いやすい一方、測定位置まで人が移動したり、対象物に測定具を当てたりする必要があります。トータルステーションは長距離を高精度で測定できますが、設置や操作に一定の知識が必要です。
また、超音波距離計は対象物に触れずに測定できますが、温度や風、対象物の形状などの影響を受ける場合があります。
これに対して、ハンディ型レーザー距離計は、小型の機器からレーザー光を照射するだけで距離を測定でき、操作性や携帯性に優れています。
- 非接触で測定可能: 危険な場所や高所、手の届かない位置でも、対象物から離れた場所で測定できます。
- 高精度: 製品や測定距離、対象面によって異なりますが、短距離ではミリメートル単位の測定精度を持つ製品もあります。
- 高速測定: ボタン操作だけで短時間に測定値を取得できるため、作業効率の向上につながります。
- 携帯性が高い: 軽量・小型のモデルが多く、屋内外を問わず携帯して使用できます。
- 多機能化が進んでいる: 角度測定、連続測距、面積・体積計算、水平器機能、Bluetooth通信など、多彩な機能を搭載したモデルが増えています。
7.レーザー距離計の主な用途と活用例
レーザー距離計は、携帯型の測定器から生産設備に組み込まれる距離センサーまで、さまざまな分野で活用されています。主な用途と測定対象は次のとおりです。
- 建築・土木: 柱間距離、天井高、敷地の長さなどの測定
- 設備保全: 配管距離、設備レイアウトの確認
- 物流・倉庫: 棚間の距離測定、保管スペースの採寸
- 製造業: 寸法測定やライン上の位置検出
- 防災・安全管理: 危険区域との距離確認、変位監視
8.まとめ
レーザー距離計は、レーザー光の往復時間や位相差、反射光の受光位置などを利用して、対象物までの距離を非接触で測定する装置です。製品形態は、持ち運びに適したハンディ型から、生産設備に組み込まれる産業用の距離センサーまで多岐にわたり、建築・土木、測量、設備保全、物流、製造業など、幅広い分野で活用されています。
安定した測定を行うためには、それぞれの測定原理を理解するとともに、対象物の反射特性、測定距離、外光などが精度に与える影響を考慮することが重要です。用途や使用環境に応じて適切な機器を選定することで、その性能をより効果的に引き出せます。
今後も、受光素子や信号処理技術の高度化により、さらなる高精度化と信頼性の向上が期待されます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 Y・K)



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