医薬品・医療機器を保険適用させるには?保険適用の方法やメリット、保険制度の基本をおさらい

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保険適用の方法やメリット、保険制度の基礎知識をおさらい

開発した医薬品・医療機器を迅速に市場へ届けるためには、効果的な医療保険適用が必要不可欠です。
本コラムでは、保険制度の基礎知識から、医薬品・医療機器の保険適用手続き保険適用させるメリットまで、ざっくりと解説します。

はじめて医薬品・医療機器の開発や薬事に関わる方はもちろん、長年担当されている方も、業務に入る前の要点チェックにぜひご活用ください。

1.日本の医療保険制度

「医療保険制度」は、病気やけがで医療を受けた際に、あらかじめ加入している保険団体から、治療費が一部支払われる制度です。日本は、すべての国民が適切な医療を受けられるよう国民皆保険制度を採っており、全国民がいずれかの公的医療保険に加入しています。

  • 被用者保険
  • 国民健康保険
  • 後期高齢者医療制度

日本の医療保険は大きく上記3つに分けられます。それぞれの保険の違いを以下でご紹介します。

(1)被用者保険

被用者保険とは、企業などに雇われている労働者やその扶養家族が加入する保険です。
被用者保険は、下記の3つに大きく分けられます。

  • 健康保険組合
  • 協会けんぽ(全国健康保険協会)
  • 共済組合

「健康保険組合」は、大企業などに勤める労働者や、その扶養家族が加入する保険です。
「協会けんぽ」には、健康保険組合を持たない中小企業に勤める労働者や、その扶養家族が加入します。
「共済組合」は、公務員などの労働者と、その扶養家族が加入する保険です。

 

(2)国民健康保険

国民健康保険は、原則として、被用者保険または後期高齢者医療制度の加入者、生活保護を受給している人を除く、全国民が加入対象です。

地域保健とも呼ばれ、基本的に75歳未満の自営業者や会社を退職して無職の人、その扶養家族が加入します。

 

(3)後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度は、75歳以上の後期高齢者、もしくは65歳以上75歳未満の方で、寝たきり状態など一定の障害が認められた場合に加入する保険制度です。

従来の保険制度である老人保健制度を改定し、2008年4月に施行されました。

 

2.診療報酬と自己負担分

保険医療機関では、病気やケガの治療にかかる費用として「診療報酬」制度があります。

 診療報酬=技術料+特定医療材料費(医療機器・体外診断用医薬品)+薬剤料(医薬品)

原則、すべての診療報酬に医療保険制度が適用されるため、被保険者の自己負担分は最大診療報酬の3割です。

年齢 自己負担割合 注釈
0歳〜小学校入学まで 2割 自治体により自己負担割合が異なる
小学校入学〜69歳まで 3割 自治体により未成年の自己負担割合が異なる
70歳〜74歳まで 2割 現役並みの収入がある場合は3割
75歳〜 1割 現役並みの収入がある場合は3割

【表1 年齢別自己負担割合】

 

ただし、保険制度を活用するには、保険適用された医薬品や医療機器等を診療に用いる必要があります。

 

3.医療保険制度を適用させるには

日本では、多くの医療機関が保険適用された医薬品・医療機器を用いて診療を行います。
新たに開発した医薬品・医療機器を市場へ広く流通させるためには、保険適用の認可を受けることが必要不可欠です。
なお、保険適用が認められることを「保険収載」といいます。

保険適用申請に必要な手続きを簡単に解説します。

(1)医薬品

新たに製造販売承認を受けた医薬品は、承認後、保険適用希望書を厚生労働省へ提出します。
提出した希望書は中央社会保険医療協議会(中医協)で薬価が査定されます。

保険適用の可否は、既存薬の薬価や原価を参考にして薬価を決定したうえで判断されます。
なお、申請後、薬価収載されるまでの期間は、原則60日以内、最大90日以内です。

 

(2)医療機器・体外診断用医薬品

医療機器・体外診断用医薬品の保険適用申請においても、厚生労働省へ医保険適用希望書を提出します。
ただし、医療機器・体外診断用医薬品では、下表2のとおり区分が細かく分けられており、申請書類や保険適用の開始時期などが異なります

区分 評価方法 中医協の了承
医療機器 A1(包括) 既存の診療報酬項目において包括的に評価 不要
A2(特定包括) 既存の特定の診療報酬項目において包括的に評価 不要
A3(既存技術・変更あり) 当該製品を使用する技術を既存の診療報酬項目において評価 不要
B1(既存機能区分) 既存の機能区分により評価され、技術料とは別に評価 不要
B2(既存機能区分・変更あり) 既存の機能区分により評価され、技術料とは別に評価
※機能区分の定義等の変更を伴う
不要
B3(期限付改良加算) 既存の機能区分に対して期限付き改良加算を付すことにより評価 必要
C1(新機能) 新たな機能区分が必要で、それを用いる技術はすでに評価 必要
C2(新機能・新技術) 新たな機能区分が必要で、それを用いる技術は未評価 必要
R(再製造) 再製造品について新たな機能区分により評価する品目 必要
F 保険適用になじまないもの 不要
体外診断用医薬品 E1(既存項目) 測定項目、測定方法が既存の品目 不要
E2(既存項目・変更あり) 測定項目は新しくないが、測定方法等が新しい品目で、E3に該当しないもの 不要
E3(新項目・改良項目) 測定方法が新しい品目、または技術改良等により臨床的意義、利便性の向上等を伴う既存測定項目 必要

【表2 医療機器・体外診断用医薬品の区分】

特に、医療機器のC1・C2区分は申請が煩雑なため、申請前に厚生労働省の担当窓口で事前相談をするとよいでしょう。

医療機器の保険適用申請について詳しくお知りになりたい方は、セミナーの受講も検討してみてください。

 

(3)公知申請

公知申請」とは、欧米では使用が認められているが、日本では未承認のため使用できない医薬品・医療機器等の保険適用申請で活用できる方法です。

厚生労働省内に設置される「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(検討会議)で学会等から要望された品目を評価し、公知申請の妥当性を確認しています。

承認された場合、薬事承認を待たずに医学薬学上「公知」として、医療保険が適用されます。

 

4.医療保険適用のメリット

最後に、医薬品・医療機器等を保険適用させるメリットをご紹介します。

(1)取り扱い医療機関が増える

医療機関の多くが、保険適用内の診療のみを行っており、保険適用外診療を行っている医療機関はごくわずかです。

保険適用されることで取り扱い医療機関が大幅に増えることはいうまでもないでしょう。

 

(2)より多くの患者さまに使用してもらえる

保険外診療は多額の費用が必要となるため、金銭的に余裕のある一部の患者さまにしか使用できません。
しかし、保険適用されれば、金銭的な余裕がない患者さまでも使用が可能です。

もちろん、上記で述べた通り、取り扱い機関が増えるため、より多くの患者さまに使用できることはいうまでもないでしょう。

より多くの患者さまに使用していただくことは、大きな収益が見込まれるだけではなく、より多くのデータ収集ができるメリットもあります。

 

5.迅速な保険収載を目指すには

新たに医薬品・医療機器等を製造販売するにあたり、多くの市場を獲得するためには、迅速に保険収載されることも重要なポイントの1つです。

特に、医療機器の保険適用手続きは提出書類が煩雑で、薬事申請と並ぶ重要項目といえるでしょう。

医療機器の保険適用手続きに関しては、詳しく学べるセミナーも多数開催されています。
手続き方法に不安のある方は、ぜひ受講を検討してみてください。

 

(アイアール技術者教育研究所 S・N)

 


≪引用文献、参考文献≫


 

 

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