3分でわかる技術の超キホン ファインバブルの基礎知識|マイクロバブル/ナノバブルの比較・効果
バブル(泡)は日常的によく見られるものですが、実はその小さい泡が様々な業界で大きく役立っています。
バブルは、気体が液体もしくは固体の中に入って、表面張力により丸くなったものです。
液体中に生じたバブルは密度が小さいので、上昇して水面に出てきて、よく見かける泡になります。
シャボン玉と同じように、空気中の部分は薄い液体の膜からなりますが、次第に薄くなって壊れます。
近年、よく注目されているのはバブルの直径が100μm以下の微細気泡であり、それを「ファインバブル」とも呼ばれています。
ファインバブルはその直径の大きさによって、さらに「マイクロバブル」(1-100μm)と「ナノバブル」(1μm未満、「ウルトラファインバブル」とも呼ばれます)の2種類に分けられます。
目次
1.泡の大きさの違いによるバブルの特徴・挙動
(1)マイクロバブル
マイクロバブルが多数入った水は白濁しています。
水中をゆっくりと浮上して、溶解が進むと共にバブルが収縮して、消滅します。
(2)ウルトラファインバブル(ナノバブル)
ウルトラファインバブル(ナノバブル)が多数入った水は透明です。
微細なバブルは水中で浮上せず、刺激を与えなければほとんど溶解も浮上もしないので、数週間~数カ月の寿命があると報告されています。
浮力が小さい為、長時間液中でブラウン運動をしながら浮遊しています。
ブラウン運動の特徴として、レーザー光線を当てると、ウルトラファインバブル水はレーザー光線が浮かび上がります。
【図1 粒径の違いによるファインバブルの挙動の区別】
2.ファインバブルの機能(作用)と効果
(1)界面活性作用
ファインバブル(マイクロバブルとウルトラファインバブル両方)共有の作用です。
- 洗浄機能:細かな隙間に気泡が入り込むため精密洗浄や、汚れに付着して取り除く効果があります。ウルトラファインバブルは特に接触角も小さいから、洗浄効果が高いです。
- 表面の帯電:水中で気泡表面がマイナスに帯電します。表面帯電の性質により、気泡表面の帯電極性と反対の極性に帯電する物体を引き付けます。一方、気泡表面の帯電極性と同じ極性に帯電する物体は反発します。
- 疎水性相互作用:水中に浮遊する油性の物体が気泡表面に集まります。水中の様々な汚れを浮上分離させます。
(2)マイクロバブル特有の作用
① ガス溶解促進作用
- 高速ガス溶解:気泡内のガスを液中に短時間で溶かします。
- 緩慢浮上:ゆっくりと上昇します。
② 衝撃作用
- 圧壊:外部から圧力をかけることで気泡を破壊し、その衝撃で周辺の物質に対し作用させます。細胞破壊を必要とする最新医療の分野や醸造、発酵などで期待されています。
③ 反応促進作用
- 反応促進:気泡内ガスとして反応性ガスを選び、化学反応を促進させます。
- 酸化促進:酸性ガス気泡を用い、水中の化学物質を酸化させます。
③ 殺菌促進作用
水中に難溶性のオゾン気泡を効率よく溶解し、水中に溶解したオゾンで殺菌します。
(3)ウルトラファインバブル特有の作用
生成したウルトラファインバブル(ナノバブル)は、気泡界面にマイナス電位を形成しています。
そのため、すぐに浮上することなくブラウン運動をしながら長期間滞在し、以下の性質を有します。
①ガス貯蔵作用
- 長期安定性:大きな刺激を与えなければ水中に長期間安定的に存在できます
- 輸送性:あらかじめ酸素以外のガスのウルトラファインバブルで満たしておけば、ある程度の刺激以下ならば輸送できます。
- 過飽和維持:水中から外気へ放出される溶存ガス成分の消失を抑制できます。
- 鮮度維持:水中への酸素溶解を抑制し低酸素状態を維持できます。
② 生理活性作用
- 植物成長促進:種子の発芽促進や植物の生育を促進します。
③ 光透過性
- 透明性:可視光線を透過するので肉眼で透明に見えます。
- 光散乱性:可視光線より短波長の光を散乱します。
3.ファインバブルの可能性
ファインバブルは大きな気泡にくらべて有用な性質を持っています。
これらの作用を活用すると、これまで使っていた薬品や化学物質の使用量を減らし、地球環境浄化や地球資源消費削減への貢献が期待できます。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 H・L)