【中国特許分析】燃料電池に関する中国特許出願動向と注目すべき現地企業をチェック
「燃料電池」(Fuel cell)とは、水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させることにより、燃料に蓄えられた化学エネルギーを電気出力に変換できるエネルギー変換装置であり、エネルギー変換効率が高く、発電過程で有害な排出ガスがなく、低ノイズ、高速負荷応答などの特長があるため、世界の科学界、製造業、および各国の政府から大きな注目を集めています。
特に中国では、新エネルギーに対する強力な政策支援により、燃料電池に関する研究開発の勢いが凄まじく、風力エネルギー、太陽光発電、リチウム電池などの他の新エネルギー産業を上回っています。
今回は、中国における燃料電池技術の現在の開発と研究動向を把握するために、主要な科学技術革新情報プラットフォームの一つである“IncoPat”を利用して、燃料電池技術に関する中国特許出願の状況を分析しました。
目次
1.世界各国への出願動向
最近10年間における、燃料電池に関する特許の中国(CN)、米国(US)、日本(JP)、韓国(KR)、ドイツ(DE)、ヨーロッパ(EP)、PCT出願(WO)への出願件数の推移および割合を図1-1、図1-2に示しました(公開年ベース)。
【図1-1 最近10年間燃料電池技術に関する世界特許出願の公開公報件数推移】
【図1-2 最近10年間出願先国別公開公報件数割合】
出願先国別に見ると、出願先では中国(CN)が一番多く28%で、次いで日本(JP)24%、米国(US)16%、韓国(KR)11%、WO10%、欧州(EP)6%、ドイツ(DE)5%と続きます。世界各国への出願件数推移を見ると、2010年以降、CNへの出願が年々増加しているのを除いて、JP、US、KR、WO、EP、DEへの出願はほぼ横ばい状態です。
2015年から中国特許の出願件数は急増し、中国の市場規模は急速な発展の段階に入りました。これは、中国からの燃料電池技術に注目度が高く、新エネルギー分野への継続的な投資が原因である可能性があります。
2.最近10年の中国特許・実用新案の出願状況
【図2 最近10年間燃料電池技術に関する中国出願の状況(公開件数推移)】
最近10年の出願状況(図2)から見ると、特許出願が増加しているのは当然として、実用新案も年々急速に拡大しています。
3.燃料電池技術に関する中国特許出願のIPC大分類状況
燃料電池分野の主要な技術テーマと研究開発の焦点を把握するために、検索されたこの分野の中国特許IPC大分類の統計分析を見てみましょう。
IPC分類番号とそれに対応する技術トピックを表1に示します。
IPC分類 | 定義 |
H01M8 | 燃料電池;その製造 |
H01M8/02 | ・細部 |
H01M8/04 | ・補助的な装置,例.圧力制御のためのもの,または流体循環のためのもの |
H01M8/06 | ・反応物質の製造または反応生成物の処理のための手段と燃料電池との結合 |
H01M8/10 | ・固体電解質をもつ燃料電池 |
H01M8/16 | ・生化学燃料電池,すなわち微生物が触媒として作用する電池 |
H01M8/18 | ・再生形燃料電池,例.レドックスフロー電池または二次燃料電池 |
H01M8/24 | ・燃料電池の集合化,例.燃料電池の積層 |
H01M4 | 電極 |
H01M4/86 | ・触媒により活性化された無消耗性電極,例.燃料電池のためのもの |
H01M4/88 | ・・製造方法 |
H01M4/90 | ・・触媒の選択 |
H01M2 | 発電要素以外の部分の構造の細部またはその製造方法 |
H01M12 | 混成電池;その製造 |
C08J5 | 高分子物質を含む成形品の製造 |
C01B3 | 水素;水素を含有する混合ガス;水素を含有する混合物からのそれの分離;水素の精製 |
B01J23 | 金属または金属酸化物または水酸化物からなる触媒 |
B82Y30 | 材料または表面科学のためのナノテクノロジー,例.ナノ複合材料 |
H01M10 | 二次電池;その製造 |
B60L11 | 車両内で動力供給する電気的推進 |
【表1 IPC分類説明】
【図3-1 最近10年間中国特許出願のIPC大分類別公開件数及び比率】
図3-1に燃料電池技術に関する中国特許出願のIPC大分類状況を示しました(公開年ベース)。
検索データ分析から、現在、燃料電池特許の技術分布は、主に燃料電池およびその製造(H01M8)に集中していることがわかり、全体の約60%を占めています。
また、H01M4(電極)の公開件数が約2割となっています。
その、H01M8とH01M4の下層分類をさらに分析してみましょう(図3-2と図3-3)。
(1)H01M8(燃料電池およびその製造)
【図3-2 最近10年間 H01M8下層IPC分類別の公開件数推移】
H01M8全体の推移(図3-2)を見ると、2011年以降年々増加し、年間の出願件数は高水準で維持されています。そのうち2011年から2016年は、H01M8/10(固体電解質をもつ燃料電池)、H01M8/02(細部)、H01M8/04(補助的な装置)に関する発明が最も多いです。
それらが燃料電池システムの通常の動作に重要な影響を及ぼし、燃料電池の研究開発の分野でホットスポットになっているためと考えられます。
しかし、2016年以降は年々減少傾向にあり、研究はある程度飽和状態に達し、これからは成熟期に入っていくとも考えられます。
これに対して、H01M8/16(生化学燃料電池,すなわち微生物が触媒として作用する電池)、H01M8/18(再生形燃料電池)の件数が年々増加してきて、今後の展望も期待されています。
(2)H01M4(電極)
【図3-3 最近10年間 H01M4下層IPC分類別の公開件数推移】
また、H01M4の件数増加が速い点も注目です(図3-3)。
現在、中国の燃料電池の開発研究機関は、燃料電池の主要部品に焦点を当てており、プロトン交換膜、触媒、MEAなどの製品で徐々に国際競争力を獲得することができています。
4.注目されている技術効果
燃料電池技術に関する中国特許における、具体的な技術効果や課題を見てみましょう。
incoPatによる技術効果の大分類別出願件数推移を図4に示しました。
図4からは、製法複雑性低減、コスト削減、安定性向上、効率性向上を技術効果・課題解決としている技術が多いことが分かります。
【図4 技術効果ごと公開件数推移】
5.燃料電池技術の中国特許の出願人分析
(1)燃料電池に関する中国特許出願人の国別割合
燃料電池に関する出願人国籍別中国特許出願件数比率を下図に示しました。
出願人国籍別(図5-1)によれば、中国籍出願人が全体の64.44%と6割以上を占めており、最近10年の燃料電池技術に関する中国特許出願状況(図5-2)と比べると、中国籍出願人の割合はさらに増えてきており、7割以上になりました。
なお、外国籍出願人の中では、日本国籍出願人の出願件数が一番多く16.98%で、次は米国出願人の7.58%となっています。
【図5-1 燃料電池技術に関する中国特許の出願人国籍別割合(全期間)】
【図5-2 2011年以後の燃料電池技術に関する中国特許の出願人国籍別割合】
(2)燃料電池技術の中国特許の出願人ランキング
出願人別出願件数上位ランキングを表2に示しました。
出願人の国籍を見ると、日本企業が一番多く4社であり、中国籍が3社、韓国籍が2社、米国籍が1社となっています。
また、上位10位のうち、自動車メーカーが5社を占めているのが目立ちます。
その他、大手電機メーカー2社、エネルギー技術企業1社、中国の研究機関2つであり、自動車と電機領域に関する研究開発で注力されていることが分かります。
出願人 | 件数 | 出願人国別 | |
1 | トヨタ自動車株式会社 | 1643 | 日本 |
2 | 中国科学院大連化学物理研究所 | 1031 | 中国 |
3 | ゼネラルモーターズ | 813 | 米国 |
4 | 松下電器産業株式会社(パナソニック) | 694 | 日本 |
5 | 現代自動車株式会社 | 471 | 韓国 |
6 | 日産自動車株式会社 | 451 | 日本 |
7 | サムスンSDI株式会社 | 409 | 韓国 |
8 | 上海神力技術有限公司 | 392 | 中国 |
9 | 本田技研工業株式会社 | 383 | 日本 |
10 | 清華大学 | 382 | 中国 |
【表2 燃料電池技術に関する中国特許出願人上位ランキング】
(3)燃料電池技術の中国特許の中国籍出願人ランキング
中国籍に限った出願人別出願件数上位ランキングを表3に示しました。近年、中国の主要な出願人は主に科学研究機関、大学、エネルギー技術会社であり、それらはすでに燃料電池技術の分野で一定の強みを持っています。上位10位のうち、科学研究機関と大学が8つで、約50%を占めています。科学研究機関と大学が中国の燃料電池の知的財産権の主力であることがわかります。これは、中国の燃料電池企業の開発が遅れたことが理由である可能性があります。
出願人 | 件数 | |
1 | 中国科学院大連化学物理研究所 | 1029 |
2 | 上海神力技術有限公司 | 392 |
3 | 清華大学 | 382 |
4 | 新源動力有限公司 | 336 |
5 | 華南理工大学 | 272 |
6 | 武漢理工大学 | 270 |
7 | ハルビン工業大学 | 263 |
8 | 上海交通大学 | 255 |
9 | 天津大学 | 229 |
10 | 大連理工大学 | 213 |
11 | 大連融科エネルギー貯蔵技術開発有限公司 | 182 |
【表3 燃料電池技術に関する中国特許中国籍出願人上位ランキング】
6.中国の燃料電池技術関連企業・研究機関の概要と特許出願分析
中国籍出願人ランキング(表3)をみると、中国の主要な燃料電池技術研究および応用ユニットの中で、中国科学院大連化学物理研究所、上海神力技術有限公司、清華大学、新源動力有限公司が重要な指導的地位にあることがわかります。
その他、中国現地の有名な燃料電池関連企業は、大連融科エネルギー貯蔵技術開発有限公司、中国東方電気集団有限公司(Dongfang Electric)、北京億華通科技股份有限公司(SinoHytec)などが挙げられます。
(1)中国科学院大連化学物理研究所
中国の著名な研究機関である「中国科学院大連化学物理研究所」の出願件数が目立っています。
上記の表2の燃料電池技術に関する中国特許出願人上位ランキングでは、1031件の特許を出願してトヨタ自動車株式会社に次ぐ2位にランクインしました。
大連化学物理研究所は、中国で燃料電池研究を行うための最も初期の科学研究機関の1つであり、燃料電池および水素源技術国立工学研究センター、中国科学院燃料電池およびハイブリッド電気エネルギー重点実験室が設立され、燃料電池技術の研究開発に関する研究チームが数多く見られます。
燃料電池および関連分野の主要材料、コアコンポーネント、システム統合、プロセス監視、その他のエンジニアリングおよびエンジニアリングの基礎研究を通じて、新しい電気自動車、分散型発電所、高エネルギー密度、長寿命、環境に優しいモバイル電源などの技術の開発に焦点を当てています。
燃料電池の国家規格の半分以上の策定を主導し、中国の燃料電池産業の発展を促進するために重要な貢献をしてきました。
2020年まで、大連化学物理研究所は、燃料電池の主要材料、コアコンポーネント、およびスタックシステムについて1031件の特許を出願し、そのうち90%以上が発明特許であり、有効特許が491件で、審査中は306件、ほか234件が失効であり(拒絶88件、出願公開後の取下げ75件、特許料未納59件、存続期間満了12件)となっています。
【図6-1 燃料電池技術に関する大連化学物理研究所の特許出願公開状況】
また、2009年11月8日、上海の宝山区にある飛行船基地で、中国で初めてプロトン交換膜燃料電池を主力とした「志源1号」という飛行船が無事に飛行しました。
「志源1号」では、大連化学技術研究所と新源動力会社が開発した10kWのプロトン交換膜燃料電池エネルギーシステムが採用され、飛行船での国内燃料電池の最初の試験が実現しました。
2017年に大連化学物理研究所は、薄層金属バイポーラプレートに基づく水素燃料電池スタックの特許技術を、安徽省明日水素エネルギー会社に対して実装のためのライセンス供与をしました。
明日水素エネルギー会社は、安徽省に最初の固定水素燃料補給所を設立し、2019年には、開発された様々な出力と仕様の一連の燃料電池スタックとシステムプロトタイプを、安凱客車、申龍客車、金龍商用車、奇瑞物流車両などの車両で路上テストしました。
2020年には、安徽省六安市で、大連化学物理研究所の研究者Shao Zhigangのチームの特許ライセンス、および、安徽省明日水素エネルギー会社によって製造された金属バイポーラプレートスタック製品を使用している燃料電池システムが搭載された水素燃料電池バス301号の最初のバッチが正式に発足されました。
なお、大連化学物理研究所は、主要な燃料電池技術に投資して、新源動力有限公司を設立しました。
同社が提供するエンジンを搭載した燃料電池バスは、北京のバス路線での1年間の実証運転に使用され、累計で20,000キロメートルになります。
また、2010年の上海国際博覧会において、新源動力有限公司は42台の車両に燃料電池エンジンを提供しました。これはすべての新エネルギー車両の40%を占め、中国の新エネルギー研究領域において強い技術競争力を示しています。
(2)新源動力有限公司
「新源動力有限公司」は、2001年4月に中国科学院大連化学物理研究所と蘭州長城電工股份有限公司によって大連ハイテク工業団地に設立され、燃料電池の工業化を専門とする中国初の株式会社です。
2006年には国家発展改革委員会から免許を授与され、「燃料電池と水素源技術国家工学研究センター」を建設しました。
2016年12月には「国家知的財産実証企業」として承認され、国家燃料電池技術基準策定副委員長ユニットとして、中国における水素燃料電池技術の商業化の実践に活躍しています。
また、2018年には、IATF16949自動車産業の品質管理システム認証に合格しました。
同年に開発された燃料電池新モデル(HYMOD-300)の製品寿命は、国産最長の5000時間と言われています。
そして2019年2月には、第三代金属双極板を採用した燃料電池モジュール新製品 HYMOD®-70が発表されました。
その他、燃料電池モジュール製品HYMOD®-36、HYMOD®-50、HYMOD®-60、およびHYMOD®-70が大量生産され、多くの国内大手自動車会社と協力し、さまざまな燃料電池自動車に広く使用されています。
2020年12月の時点で、同社の主な事業である燃料電池製品と燃料電池試験装置に関する特許出願公開は336件であり、有効特許が185件、審査中が35件、失効が116件(拒絶24件、出願公開後の取下げ37件、放棄18件、特許料未納1件、存続期間満了36件)となっています。
また、同社は上述の通り、中国国内での出願以外に、PCT出願(WO)2件、27件の登録商標権も持っています。
【図6-2 燃料電池技術に関する新源動力有限公司の特許出願公開状況】
(3)上海神力技術有限公司
1998年上海に設立された「上海神力技術有限公司(Sino Fuel Cell)」という新エネルギーハイテク企業は、プロトン交換膜燃料電池の研究開発、システム統合、スタックとシステムのテストを含む燃料電池分野の色々な技術開発を進めています。
中国で自動車用燃料電池エンジンを開発した最初の企業とされ、中国科学技術省の「863プロジェクト」などの主要なタスクを継続的に行っています。
低圧燃料電池技術は世界の先進レベルに達しており、完全に独立した知的財産権を持っています。
中国国家燃料電池規格の起草と策定を主導し、22項が公布され、実施され、4つの登録商標が取得されました。
2020年末の時点で、上海神力技術有限公司は、米国特許を含む317件の特許を取得しています。
燃料電池技術に関する特許出願公開は392件あり、有効特許が156件、審査中が56件、失効が180件(拒絶23件、出願公開後の取下げ1件、放棄53件、特許料未納93件、存続期間満了10件)となっています。
【図6-3 燃料電池技術に関する上海神力技術有限公司の特許出願公開状況】
なお、2016年6月に億華通が同社の31.88%の株式を取得しており、2社は緊密に連携しています。同社はFCスタックを億華通へ供給しています。
2019年1月18日には、神力科技(Sino Fuel Cell)と神龍汽車によって開発されたFCVバスが上海市奉賢区へ納入されました。
8.5mと10.5mの2種類のバスは15分以内に水素を充填することができ、走行距離は360kmです。
神力科技(Sino Fuel Cell)の自主開発した燃料電池スタックのエネルギー密度は2.2kW / Lで、-30℃の低温起動温度を達成しています。
2019年8月14日には、付属の測定試験センターが、中国合格評定国家認可委員会(CNAS)の認証を初めて得た企業の燃料電池測定実験室となりました。
(4)清華大学
「清華大学」など、中国の重点大学による出願も目立ちます。
1990年代初頭に発足した、清華大学原子力・新エネルギー技術研究所の新エネルギー・材料化学研究所(研究室202)は、清華大学の燃料電池とリチウムイオン電池の研究の主要ユニットです。
該研究所は、中国の水素エネルギーの分野で最初の「973プロジェクト」支援ユニットに指定され、数多くの国家ハイテク開発計画「863プロジェクト」、国家主要基礎理論研究「973プロジェクト」、その他の科学技術開発プロジェクトを実施してきました。
該研究室では、プロトン交換膜型燃料電池、直接メタノール型燃料電池、中低温固体酸化物形燃料電池の方向で多くの研究開発を行い、実りある結果が達成されています。
清華大学の公開された特許出願は382件あり、有効特許が192件、審査中が78件、失効が112件(拒絶17件、出願公開後の取下げ17件、放棄4件、特許料未納69件、存続期間満了5件)となっています。
また、中国国内以外にも、PCT(WO)18件、台湾(TW)26件、香港(HK)2件を出願しています。
【図6-4 燃料電池技術に関する清華大学の特許出願公開状況】
(5)大連融科エネルギー貯蔵技術開発有限公司
「大連融科エネルギー貯蔵技術開発有限公司」は、2008年に、大連ボロンホールディンググループと中国科学院大連化学物理研究所が共同で大連ハイテク工業団地に設立した企業であり、バナジウムレドックスフロー電池の業界チェーン全体の技術開発と生産能力を備えた世界で唯一の企業とも言われています。
現在、フローエネルギー貯蔵バッテリーのR&Dセンターやパイロット生産工場などの、一連の主要なハイテク市場志向の研究部門が建設され、同社の主な事業は、基礎材料、大規模生産、バッテリーシステム統合、アプリケーションのデモンストレーション、およびフローエネルギー貯蔵バッテリーの市場プロモーションをカバーし、国内はもとより国際的に有名なエネルギー貯蔵ソリューションおよびフローエネルギー蓄電池技術サービス・プロバイダーとなっています。
融科エネルギー貯蔵の燃料電池技術に関する公開された特許出願は182件あり、有効特許が109件、審査中が48件、失効が25件(拒絶10件、出願公開後の取下げ11件、放棄1件、特許料未納3件)となっています。また、中国国内以外にも、CT(WO)6件を出願しています。
【図6-5 燃料電池技術に関する大連融科エネルギー貯蔵技術開発有限公司の特許出願公開状況】
(6)中国東方電気集団有限公司
「中国東方電気集団有限公司」(東方電気)は、中国の国営発電機メーカーです。
2010年から水素燃料電池の研究開発を開始し、MEA製造、スタック設計、システム統合に関するコア技術と知的財産権を保有しています。
中国で最初の西部地区の自動生産ラインが建設され、年産5万m2のMEAと5000ユニットの水素燃料電池システムの製造設備も備えています。
2018年6月28日に、同社が製造した燃料電池システムを搭載した最初の10台のFCVバスが運転を開始しました。
また、2019年4月10日には、車用燃料電池システムにおける実証生産ラインが稼働し始めています。
同社の主な製品は、MEA、車用燃料電池スタック、車用燃料電池システムをカバーしています。
東方電気の燃料電池技術に関する公開された特許出願は157件あり、有効特許が111件、審査中が15件、失効が31件(拒絶14件、出願公開後の取下げ3件、放棄14件)となっています。
また、中国国内以外にも、PCT(WO)9件を出願しています。
(7)北京億華通科技股份有限公司
「北京億華通科技股份有限公司」(億華通)は2004年に設立され、中国で初の水素ステーションである「北京水素ステーション」を建設し、中国の燃料電池製造のリーディングカンパニーです。その前身は「北京青年華通技術開発有限公司」です。
同社は、国家「863プロジェクト」、「973プロジェクト」、「国家主要研究開発計画」、および国連開発計画(UNDP)GEF実証プロジェクトにおいて、多くの主要な燃料電池特別プロジェクトに継続的に参加、または実施をしてきました。また、世界クラスの多くの主要イベントで燃料電池バスのデモ運用に参加し、効率的でプロフェッショナルなサービスチームの設立を主導しました。
独立したコア知的財産権により、エンジンシステムや燃料電池スタックの大量ローカリゼーションの実現を主導しており、その製品は主に乗用車や物流車などの商用車に使用されています。
億華通の燃料電池技術に関する公開された特許出願は86件あり、有効特許が58件、審査中が24件、失効が4件(拒絶1件、出願公開後の取下げ3件)となっています。
7.参考:分析対象とした母集団(検索式)
上記「1.世界各国への出願動向」で分析対象とした母集団の検索式は下記の通りです。
分析内容に応じて、式No.1(IPC)以外の条件は適宜変更しています。
No. | 検索式 | 件数 |
1 | IPC=(H01M8/00 OR H01M8/008 OR H01M8/02 OR H01M8/04 OR H01M8/06 OR H01M8/08 OR H01M8/10 OR H01M8/14 OR H01M8/16 OR H01M8/18 OR H01M8/20 OR H01M8/22 OR H01M8/24 OR H01M4/86 OR H01M4/88 OR H01M4/90 OR H01M4/94 OR H01M4/96 OR H01M4/98) | 370958 |
2 | PNC=(JP or US or EP or CN or KR or WO or DE) and PD=[20100101 TO 20201231] | 354906306 |
3 | 1 and 2 | 166146 |
燃料電池事業の推進には中国企業の特許・技術情報分析が不可欠
ということで今回は、中国における燃料電池技術分野の特許出願状況について簡単にまとめてみました。
この調査結果は、燃料電池技術関連研究の特許出願状況を把握することや、今後の業界動向を予測する際の参考データとして利用されることが期待されます。
自社の具体的な事業戦略・技術開発戦略の立案と研究のサポートとしては、より詳細な技術動向の調査を行うことが必要です。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 J・X)
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