大気汚染防止法の要点をわかりやすく解説!

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大気汚染防止法のわかりやすい解説

今回は、工場の環境担当やマネジメントに携わる方なら必ず押さえておきたい「大気汚染防止法」について、重要知識を中心に整理・解説します。

1.大気汚染防止法の概要

大気汚染防止法は、水質汚濁防止法ともに、公害を防止するためには重要な法律となっています。所管官庁は環境省です。

大気汚染防止法では、工場等から排出又は飛散する大気汚染物質について、物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められており、大気汚染物質を排出する者はこの基準を守らなければならないことになっています。
 

まずは、大気汚染防止法(大防法)の法目的を見てみましょう。

第一条 この法律は、工場及び事業場における事業活動並びに建築物等の解体等に伴うばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、水銀に関する水俣条約(以下「条約」という。)の的確かつ円滑な実施を確保するため工場及び事業場における事業活動に伴う水銀等の排出を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進し、並びに自動車排出ガスに係る許容限度を定めること等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに大気の汚染に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする。

 

この第1条にあるように、大防法は、ばい煙、揮発性有機化合物及び粉じんの排出等を規制し、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全すること等を目的としています。

人の健康を保護し生活環境を保全する目的としては、環境基本法によって環境基準が設定されていますが、より具体的な環境基準を達成することを目標に、特定施設を有する事業場からの排出規制や対策の推進を行っています。
関連する法律としては、水質汚濁防止法と同じく、公害対策基本法環境基本法があります。

 

2.大気汚染防止法の規制対象

大防法によって規制対象となっているものとしては、以下のものがあります。
 

(1)ばい煙

いおう酸化物(大防法2条1項1号)、ばいじん(2号)、カドミウム、塩素、ふっ化水素、鉛その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある有害物質(3号、施行令1条)など、主に燃料その他の物の燃焼に伴い発生するものが対象になっています。

 

(2)揮発性有機化合物

大気中に排出され、又は飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質を除く。)などをいいます(大防法2条4項、施行令2条の2)。

 

(3)粉じん

物の破砕、選別その他の機械的処理又は堆積に伴い発生し、又は飛散する物質をいいます(大防法2条7項)。

また、粉じんのうち、石綿その他の人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質を「特定粉じん」(施行令2条の4)といい、特定粉じん以外の粉じんを「一般粉じん」といいます(大防法2条8項)。

 

(4)水銀等

水銀及びその化合物が対象になっています(大防法2条12項)。

 

(5)有害大気汚染物質

継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気の汚染の原因となるもの(ばい煙(第1項第1号及び第3号に掲げるものに限る。)、特定粉じん及び水銀等を除く。)をいいます(大防法2条15項)。

なお、「有害物質」については、大防法2条1項3号(省令1条)で、特定有害物質は大防法3条2項4号でそれぞれ規定されていまいます。

 

(6)自動車排出ガス

自動車の運行に伴い発生する一酸化炭素、炭化水素、鉛その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるものをいいます(大防法2条16項)。

 

3.大気汚染防止法における排出基準

大防法では、工場等から排出される大気汚染物質について、物質の種類ごと、施設の種類・規模ごとに排出基準等が定められています。基準には、下記の種類があります。

  • 一般排出基準: ばい煙発生施設ごとに国が定める基準
  • 特別排出基準: 大気汚染の深刻な地域における基準
  • 総量規制: 都道府県が条例によって定めるより厳しい基準
  • 上乗せ規制: 大気汚染防止が不十分な地域において、都道府県が定める厳しい基準

 

物質の種類別の排出基準

ばい煙

ばい煙の排出基準は、種類によってそれぞれ規定されています。

  • いおう酸化物: 一般排出基準(大防法3条、施行規則3条)、特別排出基準(大防法3条3項、施行規則7条1項、施行令6条1号)、総量規制(大防法5条の2、施行規則7条の3)によって規定されています。
  • ばいじん: 一般排出基準(大防法3条、施行規則4条)、特別排出基準(大防法3条3項、施行規則7条2項)、上乗せ規制(大防法4条)の規定があります。
  • 有害物質: 一般排出基準(大防法3条、施行規則5条)、特別排出基準(大防法3条3項)、上乗せ規制(大防法4条)に規定されています。
    窒素酸化物については、総量規制(大防法5条の2、施行規則7条の4)が規定されています。

 

揮発性有機化合物

揮発性有機化合物の排出基準は、(大防法17条の4、施行規則15条の2)で規定されています。

 

特定粉じん(石綿)

特定粉じんについては、発生施設に係る隣地との敷地境界における規制基準(敷地境界基準)が設けられています(大防法18条の5、施行規則16条の2)。

 

水銀等

水銀等の排出基準は(大防法18条の28、施行規則16条の11)で規定されています。

 

4.大気汚染防止法における事業者の義務

大気汚染防止法の対象となる事業者は、排出規制等に関する措置を講じる(大防法17条の2等)とともに、下記に挙げる義務があります。
 

(1)施設等についての届出

ばい煙を大気中に排出する者は、ばい煙発生施設を設置しようとするときは、定められた事項を都道府県知事に届け出なければならなりません(大防法6条)。
指名等の変更、承継、施設の構造等の変更等の場合も届出が必要になります。
揮発性有機化合物(大防法17条の5)、粉じん(大防法18条)、特定粉じん(大防法18条の6)、水銀等(大防法18条の23)も同様に届け出の義務があります。

排出基準に適合しない場合は、計画変更命令(大防法9条等)や改善命令(大防14条等)等の対象になります。

 

(2)排出の制限

ばい煙発生施設において発生するばい煙を大気中に排出する者(ばい煙排出者)は、そのばい煙発生施設の排出口において排出基準に適合しないばい煙を排出してはならない(大防法13条)とされています。
また、揮発性有機化合物、水銀等については、排出基準の遵守義務があり(大防法17条2、18条の28)、粉じんも基準を守らなくてはなりません(大防法18条3、18条の5)。

 

(3)排出水、地下浸透水の測定及び記録

ばい煙等の排出者は、環境省令で定めるところにより、ばい煙等の量又は濃度を測定し、その結果を記録し、これを保存しなければならない(大防法16条、17条の12、18条の12、18条の30)こととされています。

 

(4)事故時の措置・届出

ばい煙発生施設を設置している者等は、施設について故障、破損その他の事故が発生し、ばい煙等が大気中に多量に排出されたときは、直ちに、その事故について応急の措置を講じ、かつ、その事故を速やかに復旧するように努めなければならない(大防法17条)とされています。

 

(5)公害防止管理者の設置

「特定工場における公害防止組織の整備に関する法律」では、大防法でいうばい煙を発生・排出する施設のうちその施設から排出されるばい煙が大気の汚染の原因となるもので政令で定めるもの(ばい煙発生施設)が設置されている工場のうち、政令で定めるもの公害防止管理者を選任しなければならないとされています。

公害防止管理者は、ばい煙の量の測定の実施その他の主務省令で定める技術的事項を行い、その結果に基づいて公害を防止するための技術的措置を行うことが職務になります。

 

5.大気汚染防止法の罰則

大防法では、ばい煙等を排出する者に対し、排水基準に適合しないばい煙等の排出を禁止し、故意・過失を問わず違反者に対して刑罰が科せられます。

大防法に違反して罰金刑を受けると、廃棄物処理法の欠格要件に該当し、その会社が受けている廃棄物処理法に関する許可(廃棄物処分業、積替え保管業、処理施設設置)が取消になってしまいますので、注意が必要です。

 

6.大気汚染防止法の関連情報(資料など)

大防法に関する詳細を知りたい方は下記を参照してください。

 
《環境省の資料》

 

以上、大気汚染防止法について押さえておきたい重要ポイントを解説しました。
実務に携わる方は、環境省の上記資料にも必ず目を通してください。
 

(日本アイアール株式会社 S・T)

 

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