メモリ/外部記憶装置の種類(分類)と特徴をスッキリ整理!用語の使い分けもこれでOK
今回は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの「メモリ」と呼ばれる記憶回路や、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の外部記憶装置について話したいと思います。
このような装置は、スマートフォンなどのモバイルデバイスや、PC・家電製品など身の回りの機器で多く使用され、名前をご存じの方も多いと思います。
この記事ではこれらの記憶装置に関する基本的な技術知識を解説します。
目次
1.メモリの分類と特徴
揮発性メモリ/不揮発性メモリ
メモリは、大別して揮発性メモリと不揮発性メモリに分けられます。
揮発性メモリは“RAM”と呼ばれ、電源の供給がなくなると記憶内容が失われてしまいます。
一方、不揮発性メモリは“ROM”と言われて、電源を供給しなくても記憶内容が保持されます。
この揮発性メモリには、SRAM(Static RAM)とDRAM(dynamic RAM)があります。
※BBSRAM(Battery Backup SRAM)というバッテリーを内蔵するSRAMや、nvSRAM(Non Volatile SRAM)というコンデンサと不揮発性メモリセルを内蔵するSRAMも一部ありますが、これらの形態はここでは除外します。
SRAM/DRAM
揮発性メモリのうち、「SRAM」はDRAMと比較して高速な書込み/読出しが可能なため、キャッシュメモリや演算で使用するレジスタなどとして使用されます。
またSRAMの応用としては、ユーザが必要な回路を定義できるPLD(Programmable Logic Device)のようなGA(Gate Array)として利用することも可能であり、さらにSRAMによるLUT(Look Up Table:参照テーブル)で論理セルの構造を実現するFPGA(Field Programmable GA)などもあります。
容量としては18Mbit程度まであります。
一方、「DRAM」は内部のコンデンサとトランジスタを利用した構造で、電荷が時間経過とともになくなるためデータの消失を防ぐために、定期的な再書き込み直し(リフレッシュ)が必要です。
安価に大容量の記憶媒体(数Gbit程度)を形成することが可能なため、コンピュータなどの主記憶装置やデジタル機器の大規模な作業用メモリとして使用されます。
以下に回路例を示しますが、SRAMはフリップフロップ回路をベースにしており、DRAMはコンデンサにチャージする原理です。
マスクROM/PROM
これに対して、不揮発性メモリには、マスクROMとPROM(Programmable ROM)があります。
「マスクROM」は半導体メーカにデータを渡して書込みを依頼したもので、書換えができません。
フォトマスクレベルでの書き込みのためマスクROMと呼ばれます。
組み込み機器で制御用として多く利用されます。
「PROM」には、書き込み可能なROMでワンタイムPROM、EPROM(Erasable PROM)や、EEPROM(Electric Erasable PROM)があります。
「ワンタイムPROM」は、その名の通り1度だけ書込み可能なROMでその後の書換えができません。
多品種少量生産の機器などで専用のROMを作成したい時などに使用されることが多いです。
「EPROM」と「EEPROM」は、データの書込みと消去が可能です。
EPROMの消去は紫外線を当てることで行い、EEPROMは電気的消去が可能であり通常より高い電圧をかけることによって消去を行います。
またEEPROMには、改良されることでブロック単位で消去が可能な「フラッシュメモリ」と呼ばれる大容量、高速化したものもあります。
[※関連記事:フラッシュメモリの構造と原理(仕組み)をわかりやすく解説 はこちら]
メモリの使い分け
このような、揮発性・不揮発性メモリはその特徴により使い分けますが、スペック上で特に大切なことはアクセスタイム(書込み/読出し時間)と消費電力です。
これは、メモリチップを大量に使用することが多く、モジュール化して実装する場合もあるためです。
書込み/読出しを行うCPUや周辺制御ICなどはこのスペックに沿って使用する必要があります。
【メモリの分類(メリット・デメリットと用途)】
2.外部記憶装置の種類と特徴
外部記憶装置(補助記憶装置等とも言われます)としては、主にHDDやSSDが使用されますが、その他にUSB(Universal Serial Bus)フラッシュドライブ(USBメモリ)、SDメモリカード等もあります。
HDD(ハードディスクドライブ)
「HDD」(ハードディスクドライブ)は、磁気ディスクと言われる磁性体を塗布した円盤を回転させて、磁気ヘッドの移動により書込み/読出しの動作を行います。
このため書込み/読出し時間が半導体で構成されたものより多く要します。
しかし容量が大きくすることが可能で、現在最大16TBの製品が出ています。
機械駆動のため衝撃には弱く駆動状況により寿命に影響が出やすい点も挙げられます。
SSD(Solid State Drive)とSSHD
「SSD」は、「半導体ドライブ」などとも言われます。
一般的にフラッシュメモリを使用したもので、キャッシュメモリとSSDコントローラで構成されます。
容量としては最大2TB程度でHDDより容量は少ないですが、アクセス速度は2~3倍ほど高速です。
半導体で構成されるため、衝撃に強く信頼性が向上します。
また、HDDとSSDの良い点を集めた「SSHD」(Solid State Hybrid Drive)というものも開発されています。
これは、ハードディスクにキャッシュとしてフラッシュメモリを用いたもので、大容量でありSSDよりも安価に実現できます。「ハイブリッドHDD」とも言われます。
この三者の比較を以下に示します。
【HDD/SSD/SSHDの比較】
その他の主な外部記憶装置
「USBフラッシュドライブ」は、USBで接続可能な半導体メモリを用いた外部記憶装置で「USBメモリ」と一般的に呼ばれています。USB規格で補助記憶装置仕様の規格に準拠しています。
構成はフラッシュメモリが使用されており、容量も2TBの製品が開発されています。
USBコネクタを使用していますが、デザインが様々な製品が売られています。
USBメモリと同様に可搬型のメモリとして「SDメモリカード」があります。
SDメモリカードは、SDカードアソシエーションという団体が設立されSD規格を定めており、デジタルカメラやスマートフォン、ICレコーダー、ドライブレコーダーなど用途が広がっています。
形状によりSDカード、miniSDカード、microSDカードの3種類があります。
容量、転送速度に注意して適切なものを選択する必要があります。
同じフラッシュメモリカードには、他に「コンパクトフラッシュカード」(CFカード)があります。
デジタル一眼レフカメラに使用されることもありましたが、SDカードほどの普及はしていません。
半導体メモリの低コスト化・大容量化は止まらない?
ということで、今回はメモリと外部記憶装置について説明をしました。
半導体で構成されるメモリとHDDのようにメカニカルな構成を有するもの、半導体メモリを複数使用することで構成する外部記憶装置など様々な製品があります。
メカニカルなもので構成されるものは、耐衝撃性、消費電力が多いなど欠点もありますが、容量あたりの価格が低コストな点は強みです。
しかし今後の傾向としては、半導体メモリで構成されるものが、大量な使用による低価格化が実現可能であり大容量化もさらに進んでいくと思われます。そのためにも、半導体メモリはさらなるアクセス速度の向上と消費電力の削減が求められるのではないでしょうか。
(日本アイアール株式会社 特許調査部 T・T)