3分でわかる 構造色の基礎知識|発色原理、色素との違い、実用化例を解説

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構造色とは

「色」と聞くと、多くの方は染料や顔料などの色素による着色を思い浮かべるでしょう。
しかし近年、従来の色素とは発色の仕組みが異なる「構造色」が注目を集めています。
構造色は、モルフォチョウの青い羽やタマムシの金属光沢など、自然界にも見られる発色現象であり、塗装、繊維、印刷などへの応用も進められています。

本記事では、構造色の基礎知識から、色素との違い、実用化例、今後の課題までをわかりやすく解説します。

1.構造色とは?

構造色」とは、色素や顔料のように特定波長の光を吸収することで生じる色ではなく、物質表面や内部に形成された微細構造によって、光の反射、干渉、回折、散乱などが制御されることで生じる色のことです。

発色の源は、分子構造や化学組成ではなく、ナノメートルからマイクロメートルスケールの構造にあります。そのため、同じ材料であっても、構造の間隔や配列、屈折率差などを変えることで、見える色が変化します。

構造色の代表例としてよく知られているのが、モルフォチョウの羽です。中南米に生息するモルフォチョウは、鮮やかな青色に見える羽をもっています。しかし、羽の中に青色の色素が含まれているわけではありません。羽の表面に形成された規則的な微細構造によって、青色に相当する波長の光が強く反射されるため、青く見えます。

図1に、構造色の代表例を示します。

 

構造色の実例
【図1 構造色の実例】

 

太陽光は、波長の異なる光の集合体です。微細構造が存在すると、光の反射や干渉などにより、特定の波長の光が強められ、別の波長の光が弱められます。モルフォチョウの場合には、青色に相当する波長の光が強く反射されるため、私たちの目には鮮やかな青色として認識されます。
構造色が生まれる理由について厳密な理論を学びたい方は、専門書等を参照してください*1)

なお、自然界の構造色としては、このほかにタマムシ、真珠、クジャクなども知られています。

 

2.構造色と色素の特徴比較

では、構造色と色素による発色には、どのような違いがあるのでしょうか?
表1は両者の特徴を比較したものです。

色素では分子構造から生まれる特定波長の光の吸収が発色源であるのに対して、構造色はナノ構造、すなわちナノメートルスケールの形状や配列から生まれます。これが根本的な相違点です。

また、色素による発色では見る角度による色変化は比較的小さいのに対し、構造色では角度によって色調が変化する場合があります。構造色の「視点依存性」と呼ばれるこの特性は多くの用途で高級感を与える利点とされますが、好まれない用途もあります。

耐久性という点では、構造色は色素に比べて退色しにくい場合があります。色素は紫外線や熱、酸化などによって退色・変色することがありますが、構造色は、発色に関わる微細構造が維持される限り、色調を保ちやすいという特徴があります。

 

【表1 構造色と色素との特徴比較】

構造色 色素
1)発色の原理 微細構造による光の反射・干渉・回折・散乱 特定の波長の光を吸収し、残りを反射・透過
2)色の源 微細構造の形状・配列 分子構造(化学組成)
3)視点依存性 大きい場合が多い(見る角度で色調が変化することがある) 比較的小さい
4)耐久性 高い(微細構造が維持されれば退色しにくい) 材料に依存(紫外線、熱、酸化などにより退色・変色する場合がある)
5)明るさ・彩度 鮮やかで金属光沢(メタリック)を示す場合がある 材料により幅広い(鮮やかな色から落ち着いた色まで表現可能)
6)水に濡れた時 微細構造内の屈折率差が変化し、色調が変化しやすい 色素自体の発色は比較的維持されやすい

 

3.構造色の実用化例

構造色はすでに一部の製品で実用化されており、さらに応用範囲の拡大が進められています。
ここでは、これまでに実用化されたものから代表的な2例を紹介します。

  1. トヨタ自動車(株)の「ストラクチュアルブルー」塗装
    高級車レクサスの限定車種が対象です。モルフォチョウの羽から着想を得た独自の青色のボディ塗装です。真空蒸着などにより形成された多層膜構造を利用した発色と報告されています2)
  2. 帝人グループの「モルフォテックス」繊維
    屈折率の異なる2種類のポリマーを用い、染料や顔料を使わずに発色する繊維が開発されています。特殊な口金から紡糸した後、高度な精密加工を施すことにより、各層が0.1μm以下の多層薄膜を有する繊維が製造されます。膜厚の制御により、紫・青・緑・赤の各色を発色できると報告されています3)

 

4.大規模実用化に向けた構造色の課題

上記の実用化例において、1の場合には真空蒸着が、2では精密加工が必要です。いずれもナノメートルスケールの構造制御が必要となるため、製造コストが高くなりやすいと考えられます。厳密な定量化は困難ですが、価格は一般的な色素・顔料に比べて大幅に高くなる場合があり、用途によっては桁違いのコスト差が生じると考えられます。
表2は製造・価格面で構造色と色素を比較したものです。

 

【表2 製造・価格面での構造色と色素の比較】

構造色 色素
1)製造法 ナノレベルの微細加工が必要 化学合成(量産が容易)
2)価格 高価になりやすい 量産品では安価なものが多い

したがって、従来型の製法のままでは、構造色の用途は高級品や高付加価値品に限定されやすいと考えられます。より広範な分野に進出するためにはコスト低減が必要です。

 

5.構造色のコスト低減に向けた取り組みと今後の見通し

各種のコスト低減法が検討される中で、溶液塗布プロセスが有望視されています。基板上に材料を塗布し、乾燥過程などで粒子や高分子を自己組織化させることで、発色に必要な微細構造を形成する方法です。真空蒸着や精密加工に比べて、大面積化や低コスト化に適したプロセスとして期待されています。
図2に、塗布法による構造色形成のイメージを示します。

 

塗布法による構造色の形成:イメージ図
【図2 塗布法による構造色の形成:イメージ図】

 

その一例として、富士フイルムグループが展開する構造色インクジェットプリントを挙げることができます。吐出したインク内に微細な構造を形成し、その構造によって特定波長の光を反射させることで発色する技術と説明されています4)

これらの開発の進展により、構造色が私たちにとってより身近なものになることが期待されます。

 

(日本アイアール株式会社 特許調査部 N・A)

 


《引用文献、参考文献》


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